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母さんと僕が半獣ということもあり、近所の人からは熊を焚き付けて村を襲わせたんじゃないかと父さんが責められた。
なにしろみんな、白豹と大人の雄ライオンを見てしまったのだ。
彼らが魔獣だということからも、父さんが矢面に立って意地の悪い言葉を投げつけられる。
母さんは相変わらずで、それがもしかしたら普通に強がっているだけなんじゃないかと思うようになった。
そう、母さんだって本当は泣きたいに違いない。
オオカミの半獣である僕たちは、以前から村で目のかたきにされてきた。
いつ魔獣になって村を襲うかわからない、とまで言われたこともある。
その冷たい言葉の一つ一つを母さんはダイレクトに受け止めた。
人間は弱い生き物だから、自分と違うものを執拗に恐れるものなのだと、よく幼い僕に話して聞かせてくれた。
だからこそ、今回の熊事件がとんでもない尾ひれをつけて僕たち家族を村から追い出そうという話にまでなっている。
「いえね、奥さんと息子さんはともなく、白豹だのライオンだのを家の中で飼うっていうよもねぇ」
近所の話好きなおばさんの気配を感じながら、僕はモヨコとコタロウをぎゅっと抱きしめていた。
「でも、あの子たちももううちの家族なんです」
「じゃあ言うねど。あなたがライオンや白豹に襲われらどうするつもりなの?」
もうめちゃくちゃだ。
僕は二匹を抱えたまま、暗い気持ちに飲み込まれてゆく。
「あの子たちはちゃんとしつけてあります。魔獣の攻撃が終わったら、ちゃんと元の姿に戻ったのを奥さんも見ていたのでしょう?」
「そうだけど。ねぇ? なんなら森に住んだ方がよかない?」
よくないな。
だけど、モヨコとコタロウの姿はみんなに知られてしまった。
魔獣の熊の死体は焼却処分になったものの、村人たちは僕らを追い出そうと必死になっている。
いっそ、二匹を連れて森で暮らそうか、そこまで考えているうちに、人々の注意が別のものへと移り変わる気配を感じた。
馬車?
こんな村に馬車だなんて。しかも、うちの前で止まった。
「お取り込み中のところ申し訳ありませんが、この家にゼロス様はいらっしゃいますでしょうか?」
やや上ずった発生と声には聞き覚えがある。キャロルの執事のセバスチャンだ。
「ええ、ゼロスはうちの子ですけど、なにか?」
母さんの声がきつくなる。
「昨夜魔獣を倒してくれたことから、お城で働かないかとキャロル様から呼び出しがかかっているのですよ」
なんだって?
この僕が?
どうして?
だって、熊を倒したのはモヨコとコタロウだもの。
信じられない思いを抱きながら、ドア越しに聞き耳を立てた。
つづく




