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7 2回目の夜

時間が欲しいと思ってる時が、実は一番楽しいときなのかもしれません。

【大陸歴1415年5月3日】


 雲一つない夜空に、青く大きな月がゆっくりと登っていく。その後ろに従うようについていくのは、緑色の小さな月。


 俺がこのゲームを始めて二度目の夜がやってきた。前夜、あの恐ろしい六本足の大トカゲが出現したことで、俺はすっかり、夜がトラウマになってしまっていた。


 夜になると出現する敵が強くなるっていうのは、この手のゲームではあるあるだ。


 でも、あれはいくらなんでもやり過ぎだと思う。バグでないなら、完全にゲームバランスが狂ってる。


 多分、あいつはこの辺りのボスモンスターなのだろう。そう、信じたい。


 でも、この先の集落に、あんなのがウジャウジャいたらどうしよう。


 もし、あのレベルの奴と普通に遭遇エンカウントするようなら、今いるアリ太郎軍団なんかじゃ、とても太刀打ちできそうにない。戦力を増強して、アリ太郎たちをどんどん進化させていかないとな。


 俺は西の集落に向けて、次々に立方体を並べていった。そしてある程度、並べたところで、新たにアイコンに加わったドデカアリ太郎を呼び出してみることにした。


『砂漠大アリ・リーダーの召喚には、200DPが必要です。よろしいですか?』


 俺がナビさんに返事をすると、魔法陣が俺の足元に広がり、そこからドデカアリ太郎が現れた。


 大きさは1m以上。黒光りする体と触覚の脇に生えた鋭い角が、物凄く強そうだ。


 ドデカアリ太郎は、しばらく俺の側に留まっていたが、そのうち、触覚を振り立てるような動きをしながら、その辺りをウロウロと歩き始めた。


 すると、驚いたことに、砂の中に隠れていたデカアリ太郎たちが次々と現れ、ドデカアリ太郎の周りに集まり始めた。その数、4匹。


 4匹のデカアリ太郎は、まるで先生に連れられた子どもみたいに、行儀よくドデカアリ太郎に付き従っている。それを見たドデカアリ太郎は、4匹を連れたまま、また俺のところに戻ってきた。


 もしかしたら、何か指示を待っているのか?


 試しに俺はドデカアリ太郎に向かって、「俺を守れ!」と念じてみた。すると、アリ太郎たちは、俺を取り囲むように隊列を整え、周囲を警戒するような動きを始めた。すげええ!


 そこで俺はピンときた。最初、アリ太郎たちが俺の言う事を聞かなかったのは、俺のレベルが低かったからじゃない。


 多分、アリ太郎の知能が低すぎて、俺の指示が理解できなかったのだ。彼らに言うことを聞かせるためには、ドデカアリ太郎のような隊長が必要だったんだ。


 隊長に率いられているアリ太郎たちは、こころなしか、動きがこれまでより良くなっているような気がする。


 今いる隊長アリは、さっき進化した分を合わせて5匹。俺は、その数に合わせて、隊員となるデカアリ太郎をアイコンで呼び出した。


 これで合計25匹。5つのアリ太郎部隊ができたことになる。これ、もうすでにかなりの戦力なんじゃないか?


 そう悦に浸っていたら、また俺の脳内に警報が鳴り響いた。


『迷宮領域内に敵性魔獣が侵入しました。』


 敵が侵入した場所の気配を探ると、俺が今いる西側の端っこと、砂のかまくらのちょうど中間地点くらいに複数の反応があることが分かった。


 でも、ちょっと見た感じ、何かがいるようには見えない。


 大アリたちが夜に襲ってくることはない。明らかに別の相手だ。身を守る砂のかまくらのない状態で、正体不明の敵と戦うことになる。昨夜の襲撃の記憶が蘇り、全身に怖気が走った。


 敵の気配はこちらに向かって、真っ直ぐに接近してくる。俺はアリ太郎部隊を敵に正対するように配置した。


 敵の姿はまったく見えない。ただ、砂が流れるような音が聞こえてくるばかりだ。


 敵は砂の中を移動しているのか?


 俺がそう思った次の瞬間、砂の中から薄い板のようなものが、ぬっと現れた。


 続いて砂を掻き分けるようにして、現れた尖った鼻先を見て、俺は驚きの声を抑えることができなかった。


「サメっ!?」


 波のように砂を蹴立てて飛び出してきたのは、黄褐色の体色をした体長2m程のサメの群れだった。


 サメたちは鋭い牙の並ぶ口を大きく開けて、隊列の先頭にいたアリ太郎たちを飲み込むと、あっという間に砂の中に姿を消してしまった。


 サメが砂を泳ぐ音に混じって、犠牲になったアリ太郎たちが噛み砕かれている音が聞こえる。俺はできるだけ地面から離れた場所に移動して、戦場全体を見渡した。


 サメたちは、俺がいる場所を中心に、反時計回りに回り始めた。砂の中に感じる気配は6体。


 さっきは気が付かなかったが、高い位置からよく見れば、サメが泳いでいる場所は、砂が波のようにうねっているので一目瞭然だった。


 デカアリ太郎を一口で飲み込むような怪物たちに取り囲まれ、絶体絶命のピンチ。だが、俺は自分でも不思議なくらいに冷静だった。


 こいつらは恐ろしい相手だ。けれど、昨夜の大トカゲに比べればなんてことない。そう思うと、恐れの気持ちが消え、ふつふつと怒りが湧いてくる。


 よくも、俺のかわいいアリ太郎を、スナック菓子みたいにボリボリかじってくれたな。パワーアップしたアリ太郎軍団で、目に物見せてやる。


 初撃は奇襲をまんまと成功させてしまったが、正体と動きが分かればこっちのもんだ。俺はアリ太郎たちに円陣を組ませ、奴らが砂面に姿を現すのをじっと待った。


 砂を掻き分ける音が次第に大きくなり、ちょこんと飛び出した背びれが、月の光ではっきりと見えた。一回目の襲撃とまったく同じ動き。


 くそっ、舐めやがって、このサメ公! こっちを完全に追い詰めて、狩る気まんまんじゃねーか。


 俺はサメの動きを見ながら、隊長アリたちに向けて、指示を出した。隊長たちの触覚がピクピクと動き、それに応えるかのように隊員アリたちが隊列を整える。


 砂からサメの鼻先が飛び出す。だが、まだだ。円陣の一番外側に配置した隊員アリに向かって、サメが大きく口を開いた。今だ!


 俺の合図で、アリ太郎軍団が一斉に口から液体を吹き出した。ジュウという肉の焼ける音と、嫌な匂いが周囲に立ち込める。


 口の中にたっぷりと液体を注ぎ込まれたサメたちは、陸に打ち上げられた魚みたいに、砂の上でのたうち回った。


 てっきり、砂の中に潜って逃げ出すと思っていたのに、サメたちは地面の上で跳ね回っている。意表を突かれたが、これは逆にチャンス!


「一斉にかかれ!」


 俺の号令で、アリ太郎軍団がサメに群がっていく。鋭い牙で全身を切り裂かれたサメたちは、断末魔の悲鳴を上げ、あっという間に動かなくなった。


『魔獣の吸収が完了。2400DP及び以下の素材、スキルを獲得しました。』


『砂漠ザメの革×6』

『砂漠ザメの牙×12』

『砂漠ザメのヒレ×6』

『土の魔石(小)×6』

『スキル〈砂中移動〉』

『スキル〈土魔法軽減〉』

『スキル〈斬撃被ダメージ軽減〉』


 サメたちの死骸が光の粒になって消えると同時に、ナビさんの声が響いた。戦闘の結果を知らせてくれているようだ。


 俺は早速、魔物を呼び出すアイコンを開いてみた。思った通り、サメの絵が描かれたアイコンが、新たに増えている。やったぜ!


 すぐにでもサメを呼び出したいところだけど、まずはアリ太郎軍団の補充が先だ。俺は、減ってしまった分の隊員アリたちを呼び出し、部隊の数を整えた。


「そういえば、さっきからずっと、小さいアリ太郎たちの姿が見えないな。」


 俺はふと、一番最初に呼び出したアリ太郎たちが姿を消していることに気がついた。気配を探ると、どうやら、砂のかまくらの辺りにいるようだ。


 あいつらは小さいし、戦わせてもすぐにやられてしまうから、戦いの間、敵に遭わせないようにしてたんだよね。


「また、穴ができてる!」


 かまくらの床部分のほとんどが、ごっそりとなくなり、大きな穴になっていた。


 穴の中は暗くて見えないが、なだらかなスロープ状のトンネルになっているようだ。以前見た穴よりも、ずっと本格的な作りになっている。


 アリ太郎たちは、この下にいるようだ。トカゲに生き埋めにされたトラウマがあるから少し怖いけど、中に入ってみるか。


『迷宮領域外に移動することはできません。』


 穴に降りようとしたけれど、見えない壁に阻まれてしまった。そういえば、立方体を置いてない場所には、移動できないんだっけ。


 移動するためには、立方体を置く必要がある。でも、この立方体って、下に繋げることもできるのかな?


 俺はアイコンを使って、立方体を呼び出し、最初に置いたかまくらの下に立方体をつなげてみた。すると、ちゃんと設置することができ、下に移動できるようになった。


 すげえ。これって、地下も自分の領地にできるってことなのか。


 俺は立方体をいくつか出して、地下に並べ、トンネルの中を探検してみた。直径2mくらいのトンネルが、いくつも枝分かれしながら地中深くまで続いている。


 トンネルの壁は、塗り壁のようにカチカチになっていて、見た目よりもずっと丈夫そうだ。


 トンネルの先は、ちょっと広めの部屋みたいになっている場所もある。そして、トンネルの行き止まりでは、アリ太郎たちが、せっせと砂を掻き出していた。彼らは口から液を吐き出して砂と混ぜ合わせ、前足を上手に使って、それをトンネルの壁に塗り拡げていた。


 放っておいたら、かなり本格的な巣ができそうだ。戦闘に参加しなくなったことで、アリ本来の本能が目覚めたのだろうか。


「んー、よく考えたらこれ、かなり役に立つのでは?」


 これまで、敵から身を守る手段は、上に逃げるしかなかった。けれど、これからは、このアリの巣を隠れ家として使うことができそうだ。


 アリ太郎たちのお陰で、思わぬ隠れ家を手に入れることができた。もし、目的地である西の集落が危険な場所だったら、ここに避難しつつ、戦略を練り直せるだろう。


 大満足した俺は、再び移動できる最西端まで移動した。そして、サメを呼び出すために、新たな立方体を西へ西へとつなげていったのだった。






種族:迷宮核ダンジョンコア

名前:澤部十四郎

迷宮レベル:3


総DP:7317

獲得DP/日:520

消費DP/日:3


砂漠ザメデザートシャーク

種族:陸棲魚族

属性:土属性

召喚コスト:400DP

保有スキル:〈砂中移動〉〈土魔法軽減(大)〉〈斬撃被ダメージ軽減(小)〉〈打撃被ダメージ増加(特大)〉

砂海を棲家とする魚型魔獣。体長は1〜3m程。オスを中心とする家族単位の群れで生活する。極めて強い土の魔力を持っており、それを使って周囲の砂を水のような性質に変えることで、砂中での移動を可能にしている。しかし、保有魔力の大半を砂中移動に費やしてしまっているため、その他の能力はそれほど高くない。水中のサメと同じく、骨格が軟弱なため、硬い皮膚で身を守っている。そのため、斬撃などには強い半面、打撃を加えられると、大きなダメージを負ってしまう。特に鼻先と目が弱点である。ダメージが一定量を越えると、体を覆う魔力が拡散してしまい、砂に潜ることができなくなる。

お読みいただいて、ありがとうございました。

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