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44 融合実験

 大晦日ですね。皆様よいお年をお迎えください。

【大陸歴1415年7月5日 深夜】


〈十四郎視点〉


 みんなが暮らす拠点中央にある大きな家。その地下空間で俺とパトラが密かに進めていること。


 それは、俺が新たに身につけた力。魔獣同士を融合させるアイコンの実験だ。


 実験を始めるにあたって、俺はナビさんに明かりを灯してもらった。


 地下空間の壁全体が、薄っすらとした明かりを放ち、完全な暗闇だった空間をある程度、見渡すことができるようになった。


 近くで顔を見ながら会話するには不自由しないが、文字を読むのは難しいと感じるくらいの明るさだ。






 実のところ俺もパトラも、完全な暗闇でもまったく問題がない。


 俺は自分の領地の中の様子を視覚以外の方法で知ることができるし、パトラは暗闇を見通す視力を持っているからだ。


 でも、これからの実験で現れる魔獣が、必ずしも俺達と同じとは限らないからな。


 それにしても、光源がないのに薄っすらと空間全体が明るくなるのは、なんとも不思議な感じがする。


 現実的では到底ありえないことだ。けど、それもゲームあるあるなのかもしれない。






 俺達が今いる場所は、地下空間の一番下だ。ここから地上まではおよそ10m程度。ちょうど、緑の立方体2つ分の高さだ。


 壁のうっすらした光だけでは、その距離を見通すことは出来ないので、地下空間の天井部分は暗闇に閉ざされている。


 さっきパトラが通ってきた地下空間への入口の落し蓋も、そこに続く石の階段も、目視で確認することはできない。


 陽の光の入らない地下空間の底は、昼間でも凍えるほどの冷たさだ。


 これならすぐにでも、食糧の貯蔵庫として使えそうに思える。


 もっとも、今の俺たちの拠点には、貯蔵するほどの食糧はないんだけどな。






 この地下空間を魔獣融合実験の場所として選んだのは、もちろん用心のためだ。


 魔獣融合アイコンでは、融合後の魔獣の姿がシルエットで表示される他、詳細な説明が文字で表示されているっぽい。


 ただし、俺はそれを読むことが出来ない。つまり、融合後にどんな魔獣が現れるのか、まったく分からないということだ。


 もしも、地上で実験して、無差別に住民を襲うようだと困る。以前呼び出したスケルトンみたいにな。


 でも、これだけの高さがあれば、まずは安心。簡単に抜け出して暴れたりはできないだろう。






「主様、眷属たちからの報告では、特に地上で異状は見られないとのことです。」


「ありがとうパトラ。ユーリィたちの方も、ぐっすり眠ってるみたいだ。そろそろ始めよう。」


 周囲の安全を確認したあと、俺は視界内にウインドウを呼び出し、魔獣融合アイコンを操作した。


 ちなみに魔獣融合という呼び名は、俺が命名した。我ながら単純だと思うけど、やっぱ分かりやすいのが一番だもんな。






 俺が視線を向けると、小さなアイコンが視界内で展開し、半透明の緑色のウインドウが広がった。


 ウインドウの中央には大きな円が2つ左右に並んでいる。


 円は内側同士で僅かに重なっている。ちょうど8の字を横にしたような形だ。見ようによっては∞の形にも見える。


 大きなアイコンの下には、小さなアイコンがたくさん並んでいる。アイコンに描かれているのは、俺が呼び出すことができる魔獣たちの姿だ。






 俺はこれまでにこのアイコンを使って、スナハンドからスナマンを作ったことがある。


 あのときは何も分からず、偶然作ってしまった。だけど、今回は違う。


 できる範囲で色々試して、この力を使いこなせるようにするのが、この実験の目的だ。


 実は昨日の段階で、すでにスナマン2体の融合実験を終えている。その結果、生まれたのは1体のツチマンだった。


 スナハンド同士の組み合わせでスナマンが、スナマン同士の組み合わせでツチマンが生まれた。


 つまり、同種同士の魔獣を組み合わせると、単純に同系統の上位種が生まれるのではないか?


 それが、これまでの結果から得た俺の仮説だ。 


 というわけで、今日融合するのはツチマン2体。俺の仮説が本当に正しいのかどうかを確かめてみたい。


 予想通りならツチマンの上位種、多分、でっかいツチマンか、石マンが現れるんじゃないかな?






「この魔獣の合成には、3000DPが必要です。よろしいですか?」


 ナビさんの言葉のうち、魔獣、3000というところだけは何とか聞き取れた。


 ナビさんの言葉もパトラが通訳してくれるといいのだが、残念なことに、彼女にはナビさんの声が聞こえないらしい。


 こればかりは、自分で言葉を覚えるしかなさそうだ。


 俺が「YES」と答えると同時に、『胸』から何かがごっそりと抜き取られるような感覚が襲ってきた。視界内のステータスを確認すると、mpが3000減っていた。


 次の瞬間、目の前の石の床に2つの魔法陣が浮かび上がった。そこから盛り上がるように現れたのは2体のツチマン。


 続いて、その2つの魔法陣をすっぽりと包むほどの、更に大きな魔法陣が浮かび上がった。


 小さい魔法陣に乗ったツチマンたちの姿がゆらりと消えると同時に、大きな魔法陣はゆっくり回転しはじめ、やがて白く強い光を放った。


 視界すべてを覆うほどの光。


 その向こうから、大きな黒い影がゆっくりと湧き上がってくる。それはまもなく、はっきりとした巨大な人型となった。






 魔法陣が光とともに消え去ったあと、その場に立っていたのは、身長3mほどの土巨人だった。


 小山のようにずんぐりした身体に、短い足と長い2本の腕が付いている。土を押し固めたような丸い体の表面はとても滑らかだ。


 首はなく、半球を横に押しつぶしたような頭部が直接肩に乗っかっている。


 顔はのっぺりとしているが、目の部分にだけは小さなくぼみがあった。


 身体に不釣り合いなほどつぶらな目は、暗いところでないとわからないほどの光を、うっすらと放っている。


 全体的にある意味、愛嬌があるとも言える造形だ。けれど、縦にも横にも大きいため、近くで見るとかなり迫力がある。


 これはいわゆるゴーレムってやつだろう。あまりゲームに詳しくない俺でも分かるくらい、有名なモンスターだ。


 土でできているから、土ゴーレムってことだな。






 試してみると、土ゴーレムはツチマンと同じように、俺の言う通りに動いてくれた。


 しかも、一度指示をしておけば、それに従ってくれるくらいの知能もあるようだ。


 全体としてツチマンよりも、いろいろな面で上回っているように思える。


 土ゴーレムは、ツチマンの上位種と考えて問題ないだろう。これで俺の仮説はほぼ確かになったように思う。


 ただ、脚が短いからか、ツチマンに比べて移動速度はさほど速くない。人間と比べると緩慢な感じだ。


 ただ、長い腕を振るう速度はかなり速かった。


 試しに壁を殴らせてみたら、ドンという鈍い音を立てて、空気が振動するくらいの威力がある。その体格にふさわしく、パワーは相当なものだ。


 その代わり、殴った腕は粉々に砕け散ってしまった。


 防御力はあまり高くないようだ。これは土でできた身体である以上、仕方がないだろう。


 ちなみに、砕けた腕はしばらくすると飛び散った土が自然と集まって元に戻った。自己修復機能があるのはありがたい。


 硬くて大きい身体の相手との戦闘には、おそらく太刀打ちできないだろう。人間相手でも、素早さが足りず苦戦しそうだ。


 けど、もし命中すれば、人間くらいならパンチ一発で吹き飛ばせそうだ。


 それに力もありそうだし、戦い以外のところでも色々役に立ってくれそうな気がする。


 どんな作業ができるのか、後で試してみよう。






 元がツチマンだからか、彼らは地面の中に隠れることもできるようだ。


 ただ、身体が大きすぎて、隠れたところが大きな盛り土みたいになってしまっていた。


 動きが鈍いから、地面に隠れて不意打ちに使えないかと思ったけれど、かなり不自然な隠れ方になってしまう。


 まあ、戦闘面における彼らの運用については、おいおい考えるとしよう。






 俺の残りのhpは4000あまり。昨日からの実験で、魔獣融合には、かなりのmpを消費することが分かっている。


 今後のことを考えれば、今夜はあと一回が限界だろう。


 俺は融合アイコンを見つつ、どれを試そうかとじっくり考えてみた。


 土ゴーレム同士も融合できるようだが、mp不足で実行できなかった。


 他の魔獣も同様。強い魔獣になればなるほど、膨大なコストが必要になる。


 ちなみに、あのオオトカゲ同士の融合なんか、必要mpが20万を越えていた。いったいどんな化け物が出てくるんだか、想像もつかない。






 やはり、もっとmpを貯めてから試すほうがいいのかな。


 そう考えて、弱い魔獣のアイコンをいじっていると、ふとある組み合わせが目に止まった。


 それは、スナハンドと赤い犬の合成。どうやら、同種だけでなく、完全に異なる魔獣同士も融合できるらしい。


 必要なコストは3600。mp回復手段の乏しい現状を考えれば、正直かなり厳しい。


 でも、上手く行けば戦力を大きく増強することができるかもしれない。


 何より、どんな魔獣が出てくるのか、ものすごく気になる。これはやるしかないだろう。






 早速、融合しようとアイコンを操作し、ナビさんの確認メッセージに「YES」と念じる。


 すると、再びナビさんから確認のメッセージが入り、目の前に2つのウインドウが浮かび上がった。


「異属性合成です。合成後の属性を選択してください。」


 2つのウインドウにはぞれぞれ、シルエットになった魔獣の姿がある。


 ウインドウには、魔獣の名前や詳細な説明が書かれているようだ。しかし、悔しいことに、まったく読むことができない。


 ただ、読める数値だけを比べてみると、双方にはかなり隔たりがあった。


 どちらを選ぶかによって、結果が大きく変わりそうだ。






 左側のウインドウに見えているのは、空中にふわふわ浮かんでいる2つの拳。


 対して右側のは、狼みたいな獣の姿だ。


 俺は迷わず左側のウインドウを選択した。


 狼的なやつはもう召喚できるし、どうせなら見たことない魔獣のほうが戦略の幅が広がると思ったからだ。


 俺の選択と同時に、また輝く魔法陣が出現した。


 強い光が消えたあと、現れた魔獣の姿に、俺は思わず声を上げてしまった。




土造魔導巨人クレイゴーレム

種族:魔法生物

属性:土属性

召喚コスト:300DP

維持コスト:50DP/日

保有スキル:〈状態異常無効〉〈土中移動〉〈hp自動回復(小)〉〈水攻撃被ダメージ増加〉

土製のゴーレム。体長は3m程。巨体にふさわしい怪力と耐久力を持っている。また、体内の核を破壊されない限り、ゆっくりとではあるが、身体を修復する機能がある。対抗手段がない場合、かなりの強敵となりうる。核は本体内の水分量や土の栄養状態などを、常に適切に保つ機能を持っている。そのため、日当たりの良い場所にいると、身体のあちこちから草花などが生じてしまう(日当たりの悪い場所だと、苔類やきのこが生えてくる)。全身を覆うほど植物が繁茂した結果、植物系魔獣だと誤認されることもままある。弱点は頭部に埋め込まれている核であり、これを破壊されると、一気に身体が崩壊してしまう。また、過剰に水分を浴びせられると、核が水分量を調整しきれなくなり、身体が崩壊してしまう。なお、完全に崩壊した状態であっても、核さえ無事であれば、数時間でゆっくりと再生し、元の姿に戻ることが可能である。

お読みいただき、ありがとうございました。

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