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This is the Zodiac speaking


あの災厄から一週間が経った。病院に運ばれて1日後にお母さんが会いに来てくれた。

もちろんすごく心配されたし、すごく怒られた。

そのすぐ後に白瀬さんがお見舞いに来てくれて、お母さんは今までテレビでしか見た事無かったからすごく驚いてたなぁ。その時もまたいい感じに事情を説明してくれたみたい。


すると病室のドアが叩かれた。


「どうぞ」


話し声が聞こえるしリンクルと朝火かな?

でも2人の声にしてはちょっと低いような気がするし、絶対聞いた事ある声なんだけど……。


そして勢いよくドアが開かれた。


「見舞いに来たぜ稀梨華!」


「お、お父さん!?と、白瀬さん!」


「あはは……ごめんね、お休みのところ」


入ってきたのは稀梨華の父である初瀬川樹とパラティシリィの白瀬颯だった。


白瀬は持ってきた花を棚に置いてある花瓶に生けてくれた。前に持ってきてくれた花はもう枯れてしまってリンクルが片付けたばかりだった。


「……白瀬さん、せっかく来てくれた所悪いんだけど、私お父さんと話したいことがあるから2人きりにしてくれませんか?」


「ん?別にいいけど……ってどうしたの?」


なんだか稀梨華ちゃんから黒いオーラがするのは見間違いかな?樹さんも、なんか狼狽えてるし。ま、余計な詮索はしないけど。


「じゃあ僕は外で待ってるよ。樹さん、グッド・ラック!」


白瀬は樹に肩を回してグッドサインを出すと病室から出ていった。病室には稀梨華と樹しかいない。


「樹“さん”?あのイケメンで強くて皆の憧れのパラティシリィの白瀬さんがお父さんの事樹さんって呼ぶの!?」


「しかも!仲良さげに肩まで回されちゃってさ!」


そこまで一息で言い切ると少し落ち着いた。


「悪かったよ稀梨華、俺も秘密にしたくてしてた訳じゃあないんだ」


「私過去に行ったよ、そこでお父さんに会ったもん。凛奈って覚えてる?」


凛奈は稀梨華が過去に行った時に作った偽名だ。それを聞くと樹の目が細まった。


「あぁ、もちろん覚えてるさ。やっぱり今日だっか」


樹はベッドのすぐ側にある椅子に腰をかけて稀梨華と目線を合わせた。しかし稀梨華は俯いてしまった。


「……私はさ本当の娘じゃないんでしょ」


「私はお父さんとお母さんの本当の娘のクローンなんでしょ」


怖いなぁ。次会ったら聞こうって言おうって思ってたけど、本当の稀梨華が帰ってきたら私用済みじゃん。


「何か言ってよお父さん」


稀梨華が言うと黙っていた樹が口を開いた。


「いやぁ、まさかそんな所まで知ってたのか」


「でもな、お前は偽物なんかじゃない」


……偽物じゃない?


「でも、私はクローンの100番目だって、本物と同じ光のエルピーダを持ってるけど1番弱いから別のクローンと離されてたって、稀梨奈が……」


「稀梨奈?」


あ、そうか。お父さんは稀梨奈の事知らないのか。


「実はね……」


稀梨華はこれまでのことを洗いざらい話した。襲撃の話も、実験施設の話も、アストライヤの事も全部。そしてこの話は信頼できる人だけに伝えて、とも言って。


「……アイテール?ははっ、こりゃあ……凄い事になってるみたいだなぁ」


「笑い事じゃないもん!」


「悪い悪い、あまりにも現実離れしててな、でも……これが現実なわけか」


「うん、私と朝火は変命者で、色んな人に狙われるって」


「あぁ。変命者殺し、だったか。今回の件にも絡んでるかもしれないな」


「でも大丈夫だ。俺が守る、お前は俺の娘だからな」


手を稀梨華の頭に置いて、あの太陽みたいな笑顔を浮かべる。


「だから私はお父さんの本当の娘じゃ……」


「いや、お前は俺の娘だ」


「……え?でも稀梨奈が」


稀梨奈が私たちはクローンだって。


「俺はあの施設に突入するのに無計画で行ったわけじゃない」


「ほんとに?オリバーさん驚いてたけど」


「ははっ、まぁ、あれはちょっと急だったが情報収集はバッチリだったぜ」


「情報収集?」


「あぁ。あそこは違法な実験施設だ。そこでエルピーダを使った人体実験が行われてるって聞いてな」


「それで事前にスパイを派遣して施設にいる人物のエルピーダの属性、人数、武器の個数を調べたんだ」


「光のエルピーダを使うやつが本物なんだろ?」


「うん、私たちのクローンは光のエルピーダを使うって聞いたよ」


「そうだ。それであの施設の中で光のエルピーダを持ってるのはお前だけだった」


……光のエルピーダを使えるのは私だけ、……って事は。


「わ、私は本物なの!?」


「あぁ。お前は正真正銘の俺の娘だ」


樹が稀梨華を抱きしめる。


「心配しなくていい」


「……ありがとう、お父さん」


声が震えたのは内緒、にしたかったけどお父さんの抱きしめる力が強くなったからバレてるんだろうなって思った。


「俺は今フロンティア連邦のイロアスの方で大佐をやってるんだ」


「……大佐!?しかもフロンティア連邦!?

なんで日本じゃないの!」


お父さんがイロアスだって言うのは分かったけどなんでフロンティア連邦なわけ。営業で飛び回ってるって言うのは嘘で本当はフロンティア連邦にいたってこと?


「フロンティア連邦には例の施設に詳しい奴がいて、何より予算も多い。今はその隊員と捜査中なんだ」


「ただ極秘任務だからな、お前が過去に行くまでは秘密にしておこうって薫とも話してたんだ」


「お母さんも共犯だったのか……」


「悪かったって、でも……エルピーダ枯渇症か、大丈夫なのか?」


「うん、軽症だし。でもしばらくは激しい運動とエルピーダを使うのは控えろって言われてさ」


エルピーダ枯渇症は思ったよりも厄介だった。

エルピーダを保有する人しかならない病だから知名度も低くて見てくれるお医者さんも薬もない。


「あぁ。それがいい。さて、俺はそろそろ帰らなきゃならないが」


「あ、待って。お父さんって白瀬さんと知り合いなの?」


やっぱりここが気になる。お父さんもイロアスならワンチャン白瀬さんってお父さんの後輩だったりしない?父親の後輩がパラティシリィとか激熱すぎる。


「あぁ、颯は後輩で弟みたいな奴だな。あいつの剣術の指導は俺がやったんだぜ?」


「え!?あの白瀬さんに!?」


知り合いどころか後輩で剣術指導!?


「それに弟みたいってどういう事?」


そう聞くと樹は言い淀んだが続けた。


「歴代も今もパラティシリィに選ばれる奴は何故か孤児が多いんだ」


「孤児?両親がいないってこと?」


「あぁ。白瀬もその1人だ」


「そうだったんだ……」


いつも颯爽としてて、隙が無い人だなって思ってたけど、やっぱり人間口外したくない秘密の一つや二つはあるよね


「おっと、そろそろ帰りの飛行機の時間だ。それじゃあ俺は行くが何かあったらすぐ連絡しろよ」


「うん!お父さんも気をつけてね!」


手を振り払って樹を見送った。

病室を出ると壁に白瀬がジュースを片手にもたれかかっていた。


「話は終わったみたいですね。なんだか大変そうでしたけど」


白瀬はいつもの颯爽とした雰囲気、人当たりのいい笑顔を浮かべている。


「あぁ、まぁな。それよりお前が前に言ってい

た仮説、案外本当かもしれない」


太陽の様な笑顔が消えて真剣な表情になる。

樹は稀梨華から聞いた話を白瀬に共有した。つまり白瀬は樹の信頼に値する人物だということ。


「……なるほど。変命者ですか、()()()が言っていた通りなわけですね」


「あぁ。俺はあいつの近くには今はいてやれない。あいつの事は……お前に任せる」


樹の手が白瀬の肩にのせられる。


「もちろんです。守ってみせますよ」


「ははっ、流石だ」


それから数日後、稀梨華は退院したが、エルピーダ枯渇症を診れる医師はイロアスにしかいない為、経過観察のためにイロアスが手配してくれたホテルに泊まって1週間程過ごすことになった。そういう事ならと朝火が住む風俗店兼情報屋にリンクルと共に訪れた。


カランカランとベルが鳴ると、朝火の姉である茜が出てきた。


「おっ、お久〜」


「あ、朝火のお姉さんの!」


前に見た派手なドレス姿ではなくラフな服装だった。流石にエクロスに襲われ怪我をした為仕事は休んでいるんだろう。


「怪我はもう大丈夫ですか?」


「心配無用だよ!平気平気。朝火ー!友達来たよ!」


茜が叫ぶと2階からバタバタと階段を降りてくる音がした。


「お、久しぶりだな2人とも!」


「朝火!久しぶり〜」


「お久しぶりです」


朝火に案内され、2階の部屋に入る。朝火の自室のようだ。窓が開けられていて涼しい風が入ってくる。それから3人で近況報告をした。


「へぇ〜、まさか稀梨華のお父さんがそんなにすごい人だったとは」


「びっくりですね」


「ほんとにね!しかも白瀬さんと先輩後輩関係とかさ〜」


「白瀬と言えば2人ともイロアスには入るって決めたんですか?」


リンクルが聞くと2人の声がハモった。


「「もちろん!」」


「なるほど、だと思ってました」


すると稀梨華と朝火は笑った。


「もちろんリンクルも入るだろ?」


「そうだよ!リンクルは私達の仲間なんだしさ!」


「……そうですね。2人は僕の大切な人達ですから」


リンクルの口角が少し上がった。風が吹いていて髪のせいであまり見えないが2人にはわかった。


「あっ!今笑った!」


「だよな!貴重な瞬間!」


朝火はスマホを構えて稀梨華はニマニマと笑う。


「なんですか2人とも」


「あ、真顔になるなよな〜。スマイルスマイル」


「そうだよリンクル〜」


稀梨華はリンクルをからかって、朝火は授業参観に来た親の様にリンクルの一挙一動を取りたがる。


まったく、しょうがない人達ですね。でもこんな賑やかな日々がずっと続けばいいとも思ってしまう。


その時部屋のドアがノックされて朝火の祖父であり情報屋店主、四十川十蔵がやってきた。


「おっ、揃ってるな。実はお前たちに相談したいことがあってだな」


「どうしたんだ爺ちゃん?」


「僕らに相談という事はイロアス関連でしょうか?」


「あぁ。鋭いなその通りだ」


「実はな、さっきお客が来てこれを置いて行ったんだ。」


置いて言ったものを机に置く。どうやら招待状のようで丁度3枚ある。その招待状は……


「「プロメテウスの灯火!?」」


また2人の声がハモった。


「プロメテウスの灯火と言えば明日開催予定のエルピーダを使った技術品開発等の知識交流パーティーでしたっけ」


「あぁ。招待制でな、政治家や資産家、パラティシリィやイロアスの上位隊員しか呼ばれないものだが」


「でも、それがなんで爺ちゃんの所にくるんだよ?」


「しかもそれって、ゾディアックって人から犯行予告が届いたやつだよね?」


「そうですね。ですがパーティー自体はやるみたいですね。ネットニュースに記者会見が載ってます」


「あぁ。お客さんと言うのはまだ10も満たない少女で、どうやら一緒に来てくれる人を探しているらしい」


「必死な形相で、焦っているのか何度も時計を見ていたよ」


「でもよ、そんな小さい子がプロメテウスの灯火に招待されるのか?」


「そうですね。10歳も満たない少女に招待状を送るでしょうか?それにこの情報屋を知っている……」


謎の少女に疑問が深まるばかりだ。


「でも、その子困ってるんだよね……」


「まぁ、そうなんだろうな」


「少女がそこまで必死になる理由がプロメテウスの灯火にあるんでしょうか?」


「もしかしてゾルディックと関係あったりするんじゃないか?」


「たしかに……怪しいといえば怪しいですね」


「ねぇお爺さん、この招待状があればプロメテウスの灯火に行けるんだよね?」


「あぁ、そうだが……まさか行く気かね」


「俺も行くぜ!やっぱりその少女がそこまで必死になる理由が知りたいし、助けになりたい」


「2人が行くなら当然僕も行きますよ」


3人の決意を聞いて十蔵は唸る。


「……まぁパラティシリィも居るだろうし、万が一の事態になっても大丈夫だとは思うが……」


「思うが?」


朝火が聞き返す。


「そこが問題だ。3人はパラティシリィに顔が知られてるだろ?お前さん達は資産家でも政治家でも正式なイロアスの隊員でもない」


「なるほど、たしかに怪しまれるか……」


「どうにかならないかな……」


「そこでだ、良い作戦があるんだが……」


十蔵が悪戯を思いついたような笑みを浮かべる。3人の頭にハテナマークが浮かんだ。


「良い作戦?」


「あぁ。作戦というのは……」


その作戦会議は夜まで続いた。そして迎えた翌日。情報屋の一角……



「なぁ、ほんとに大丈夫かよこれ」


「ふふっ……大丈夫大丈夫!似合ってるよ!」


「笑うなよ!」


「ごめんって!」


ケラケラ笑う稀梨華を横目に鏡を見て不安そうにする朝火、それもそのはず朝火の来ている服はドレスだった。ちなみにこのドレスは茜から借りたもの。赤い髪は目立つので、髪もウィッグを被ってロングヘアになっている。


十蔵の考えた作戦は変装だった。それも性別ごと変えるもの。


「2人とも準備はできましたか?」


リンクルがドアを開けて入ってきた。リンクルは金髪を活かすべく外国のお坊ちゃま設定で服装を変えた。そして朝火を見る。


「……似合ってますね」


「なんだよその間!」


「稀梨華ちゃんは割と様になってますね」


「でしょ?結構なイケメンじゃない?リンクルも似合ってるよ!」


性別逆転、稀梨華は服装をスーツに変えて、長い髪を一つに結んだ。髪色が黒なため目立たないだろうと思ってウィッグは付けなかった。


「長髪も目立ちそうだけどな……」


「大丈夫大丈夫!」


「それじゃあそろそろ時間なので、行きましょうかプロメテウスの灯火に」


「うん!」/「了解!」











































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