表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/61

Chapter14 「対決」 【MM378】

Chapter14 「対決」 【MM378】


 『ビビーーー!』 『ビビーーー!』 『ビビーーー!』 『ビビーーー!』

恒星アルファが昇る直前だった。前哨陣地に警報アラームが鳴り響き、緊急事態を知らせる赤色照明が塹壕の中で点滅していた。

ナナミ大尉は塹壕内の住居スペースの簡易ベッドから起き上がると急いで装備を身に着けた。他の兵士達も慌ただしく装備を身に着けている。ナナミ大尉は弾帯とオレンジブラウンのヘルメットと試作品の携帯攻撃用脳波増幅装置、対ガンビロン携帯シールド発生装置を身に着けるとショットガンを持って塹壕を飛び出した。ヘルメットは対ポング及び対ポングスト用のシールド発生装置が内臓された最新型だ。ナナミ大尉はヘルメットに蛍光色のピンク色のカバーを被せた。目立って囮になる為だった。ピンク色のヘルメットは連合政府軍の戦闘指揮官を表す色だ。弾帯にはホルスターに収められたスミス&ウェッソンM629ステンレス4インチが装着されていた。先日、久しぶりに再会した峰岸から貰ったのだ。

「敵襲~! 敵襲~!」

味方の兵士達が右往左往しながら叫んでいる。照明塔の照明が点灯され前哨陣地が昼間のように明るくなった。

「ジャミングを最大出力にしろ、ヘルメット着用! 急げ! 第1分隊脳波戦、第2、第3分隊は銃撃戦開始」

ミグ小隊長が叫んだ。

「ナナミ小隊は射撃後、格闘戦に備えるの! シールド発生装置をONにするの!」

ナナミ大尉も直轄の部隊に指示を出した。

ナナミ大尉は頭に衝撃を受けた。だがダメージは殆ど無い。ヘルメットのシールド発生装置が効いてるようだ。また、ナナミ大尉自身のポング耐性も高いのだ。前方50メートル先に敵兵の姿を捉えた。ナナミ大尉に『ポング』を発射した兵士だ。ナナミ大尉はポングを発射した。敵の兵士はその場に崩れ落ちた。敵兵のシールドを撃ち抜いたようだ。ナナミ大尉は前方に突進する。岩影から現れた敵の兵士3個体にショットガンを3発連射した。敵の兵士は3個体とも後ろに倒れた。


 前にいた味方の兵士5個体が崩れ落ちる。ポングストだ。すぐ隣にいた味方の兵士がポングを受けて崩れ落ちる。そこに銃弾が襲い、兵士の体に数発が命中し、青い体液が飛び散った。敵の攻撃は正確で無駄がない。後方の塹壕を見るといたる所で格闘戦になっている。敵の個体が味方の個体に豹のように飛び掛かっていく。敵の数は20~30個体。そしてひと際大きな個体が味方の兵士に組み付いている。ナナミ大尉はショットガンを撃った。スラッグ弾が背中にヒットしたが倒れない。防弾ジャケットを着ているようだ。振り向いた敵兵の四角いピンク色の目の中の青い目玉が動いてナナミ大尉を認めた。黄色のヘルメットを被っている。ライトニングウォホーク少佐だ。ナナミ大尉は短めのキュロットスカートの両横のジッパーを上にあげてスカートの横を開いた。走りやすくするためだ。ナナミ大尉は走り出した。ナナミ大尉は4足走行の時速120Kmで前哨陣地から前方の荒野に走った。ライトニングウホォーク少佐はピンク色のヘルメットと、地球人の女性の姿からナナミ大尉と判断して、追いかけてきた。走行戦が始まった。恒星アルファが地平線に現れ、荒野を照らし始める。夜明けの美しい光景の中、ナナミ大尉とライトニングウォーク少佐が走る。差が詰まっていく。ナナミ大尉は時速140Kmに増速したがライトニングウォーク少佐は追い付いてくる。

〈速い!〉

ナナミ大尉は焦った。右に大きく曲がった。転倒ギリギリだ。ナナミ大尉は振り返った。しかしライトニングウホォーク少佐はぴったり付いてくる。さらに左右に大きく蛇行したがぴったり付いて来ている。速度を時速160Kmの限界まで上げた。時速150Km以上出せる個体は殆どいない。10分も走っただろうか、すでに前哨陣地から20Km以上離れたはずだ。ナナミ大尉はライトニングウォホーク少佐を前哨陣地から離すことに成功した。

〈今なの! あいつは私一人でなんとかするの〉


《【発:特任:ナナミ:大尉】【宛て:第一中隊:ジュディー:大尉】 【同報 不可】

前哨陣地に敵襲、『ブラックシャドウ』と思われる、全力出撃、敵を殲滅せよ》

『ナナミ大尉は前哨陣地の後方に待機させた第1中隊に指示を出した。全速力で突撃すれば5分かからないはずだ』

第一中隊は時速120Kmで前哨陣地に殺到した。


 スピードは互角。ナナミ大尉は持久力で勝負することにした。時速160キロなら後20分は走れる。大きな岩と幅40mの大地の割れ目を飛び越えたが、それでもライトニングウォーク少佐はぴったりと付いてくる。ナナミ大尉は頭部に激しい衝撃を感じて転倒した。荒野を50メートル以上転がった。戦闘服はボロボロになり、背中に背負ったショットガンはあらぬ方向に転がった。

ライトニングウォホーク少佐のポングが防御シールド を突き破ったのだ。強烈なポングだった。


 ナナミ大尉は立ち上がろうとして地面に膝を着けた四つん這いの姿勢になっていた。ナナミ大尉はポングを発射した。ライトニングウォホーク少佐はよろけて転びそうになった。

「痛いな。しかしたいしたもんだ、俺のシールドを撃ち抜いた。お前がナナミ大尉か、一度話したかった」

ライトニングウォホーク少佐が前に立っていた。距離は近かった。ナナミ大尉はライトニングウォホーク少佐を見上げた。体つきは平均的なMM星人より遥かに大きかった。地球であれば平均的な一般人と大型プロレスラー位の違いである。横長の長方形の目も大きかった。ナナミ大尉との体格差は明らかだった。

「あなたがライトニングウォホーク少佐なの?」

「そうだ。お前のその恰好は何だ? なんでそんな恰好をしている?」

「地球人の女性の姿なの、気に入ってるの。大切な人がくれた姿なの」

「お前はムスファらしいな」

「そうなの、貴方もムスファなの」

「お前の噂は聞いてる。レジスタンスと連合政府軍の英雄らしいな。なかなかやるな、ギャンゴを12頭も倒しているのか。連合政府軍の兵士はギャンゴを見ると逃げ出すらしいが、俺もギャンゴは苦手だ。あれは戦う相手じゃない、バケモノだ。だがお前は戦っている」

ナナミ大尉の胸には大きなギャンゴキルマークが1個つと小さなギャンゴキルマークが2つ着いている。大きなギャンゴマークは10頭倒したことを表し、小さなギャンゴマークは1頭である。小さいギャンゴキルマークは1円玉位の大きさの丸いマークで黒いギャンゴの影に赤のバッテンが描かれたいる。背景色はライトグリーンだ。大きなギャンゴキルマークは500円玉位の大きさで、絵柄は変わらず、背景色はスカイブルーである。

「だからなんなの、最近は兵士達もギャンゴを倒してるの」

ナナミ大尉は立ち上がった。

「それも聞いている。お前が訓練してるらしいな。お前はなんのために戦っている?」

「この星の未来と大切な人のためなの! あなたはどうなの?」

「勝つためだ。俺は常に勝ち続ける」

「そんなのただの殺戮マシンなの」

「その通りだ。それで十分だ。それが俺の役割だ。お前は地球という惑星にいたらしいな。感情があるんだろ、良くわからんが無駄なものを持ったな」

「かわいそうな人なの。感情を持てば分かるの。殺す事が空しい事だって」

「殺す前に、お前にギャンゴとの戦い方を教わりたかった、残念だ」

ライトニングウォホーク少佐の右ハイキックをナナミ大尉が左腕でブロックした。左腕に痛みが走った。真下から繰り出された見えにくいハイキックだった。すぐに左ストレートが来たがナナミ大尉はスウェーバックで躱した。右フック、左アッパー、右ミドルキック、全て捌いたいた。ローキックは膝でブロックした。

<見えるの。これならカウンターを狙えるの>

ナナミ大尉は素早くフックを連続して繰り出した。身長差があるため、振り上げるようなフックだ。左フックがライトニングウォホーク少佐の頬に炸裂し、右フックはアゴにクリーンヒットして脳を激しく揺らした。ライトニングウォホーク少佐はストンと体が落ち、地面に右膝をついた。軽い脳震盪だ。

「さすがムスファだな。今のフック、見えなかったぞ」

ライトニングウォホーク少佐は伸びあがるようにして右肩でナナミ大尉の顔面にタックルした。ナナミ大尉は顔面に衝撃を受け、後ろに倒れながらライトニングウォホーク少佐の両腕を掴んだ。ライトニングウォホーク少佐が半回転して背中から地面に落ちた。巴投げだ。

「うっ、やるな。こんなに手応えのある相手は久しぶりだ」

ナナミ大尉は踵を振り上げ、ライトニングウォホーク少佐の顔面に振り下ろした。

「グッ」

ライトニングウォホーク少佐は苦悶の表情を浮かべたすぐに跳ね起きた。ナナミ大尉は焦った。普段ならトドメになったはずだ。

<強い! どうする?>

ナナミ大尉がライトニングウォホーク少佐の腰にタックルをしたがライトニングウォホーク少佐がそれを受け止め、ナナミ大尉を逆さに高く持ち上げると地面に叩きつけるようにして頭から落とした。強烈なパワーボムだ。地面は平らで硬い岩だった。ナナミ大尉は後頭部に激しい衝撃と痛みを感じ、意識が飛びそうになった。ライトニングウォホーク少佐が素早く馬乗りになるとナナミ大尉の首を両手で絞めた。凄まじい力だった。ナナミ大尉は意識が朦朧とする。

<失敗したの。組み合うんじゃなかったの、打撃系だったの>

「終わりだな!」

ライトニングウォホーク少佐が左手でナナミ大尉の首を絞めながらハンマーのような右の拳でナナミ大尉の顔面を殴打した。その数8発。多くの個体を『撲殺』してきた得意のパターンだ。ナナミ大尉は鼻と口から青い体液を吹き出した。ライトニングウォホーク少佐は再びナナミ大尉の首を両手で絞めた。ナナミ大尉の腫れあがった顔に苦悶の表情が浮かんだ。無残に腫れて傷だらけの顔には美貌のカケラもなかった。

<だめなの・・・・・・体が動かないの。息が・・・・・・暗いの>

ナナミ大尉は失神の寸前だ。

『バンッ! バンッ!』

ライトニングウォホーク少佐の力が緩んだ。

ナナミ大尉はスミス&ウェッソンM629ステンレス4インチを右腕でホルスターから抜くとライトニングウォホーク少佐の脇腹を撃ったのだ。弾丸は44マグナム弾だ。

「くっ、貴様」

ライトニングウォホーク少佐は脇腹を押さえて転がった。ナナミ大尉は大きく息を吸った。視界が明るくなったが体に感覚が無く、動けなかった。ライトニングウォホーク少佐はしばらくじっとしていた。3分程たった。ライトニングウォホーク少佐はナナミ大尉のM629を奪いナナミ大尉を跨ぐように立ち上がった。M629の銃口をナナミ大尉の頭に向けた。

「お前強かったな、でもこれで本当に終わりだな」

ライトニングウォホーク少佐は44マグナム弾を2発受けても無事だった。44マグナム弾の鉛の弾頭は脇腹で潰れていた。内臓は衝撃を受けたが致命傷には至らなかった。瞬間的に皮膚と筋肉が防御モードになったのだ。ライトニングウォホーク少佐は引き金に指をかけた。

「最後に言うことはないか」

<タケル、ごめんね。帰れないの。会いたかったの  でももうダメなの。  バグルンなの>

ナナミ大尉は唇を微かに動かしたが声が出せなかった。

バグルンは脳波エネルギーによる自爆だ。一般の兵士ならダイナマイト2~3本分の威力である。ムスファのナナミ大尉のバグルンは威力が強く、ダイナマイト300本分の物理的破壊力があるが使用すれば自らの命も失う。

<タケル  さようならなの   楽しかったの   バグルンするの  違うの!! ガンビロン!!!!>

ライトニングウォホーク少佐は引き金を引いた。

凄まじい衝撃がナナミ大尉の脳を揺らして脳内の映像が真っ白になった。


 七海とタケルは湘南の七里ヶ浜の海を眺めながら歩いて江の島の岩場に着いた。海は青く、風が気持ち良かった。七海はタケルの隣に腰を下ろすとタケルの肩に寄り掛かった。

「七海、やっぱり海はいいなあ」

「タケル、海は素敵なの、久しぶりなの。前にもこの場所に来たの。楽しかったの」

「うん、ずいぶん前だな」

「あの時、タケルはずっと私の顔を見てたの」

「気がついてたのか? 海面に反射した太陽の光が七海の横顔をゆらゆらと照らして、七海の横顔が凄く綺麗だったんだ」

「嬉しかったの。ずっと見てて欲しかったから気付かないふりをしてたの。ウルーンがジンジンしたの」

「あの頃は幸せだったな」

「タケル、私は今も幸せなの! ずっとこういていたいの」

七海はタケルの肩に頬を擦り付けた。

「七海、俺はそろそろ行くよ」

「タケル、どこに行くの? 私も一緒に行くの」

「タケル・・・・・・タケル?」

タケルはいなくなっていた。岩場には波の音だけが響いていた。

「タケル、私も一緒に行くの。ここにはいられないの。ここにいたらダメなの。帰れなくなるの。タケル・・・・・・」


「心拍と自立呼吸はありますが、意識がありません。そろそろ目が覚めなければ一生植物状態になるかもしれません、今日でもう5日目です。おそらくガンビロンの影響でしょう」

シグ軍医長が言った。

ナナミ大尉は治療室のベットに寝かされ、右腕と首に太い点滴用のチューブが刺さっていた。治療室にはシグ軍医長と南方方面軍第1軍軍団長のファントム中将と第8師団師団長ホーネット少将がいた。

「敵が使ったのか?」

ファントム中将が尋ねた。

「いえ。ナナミ大尉がガンビロン用の脳波を発射したのです」

シグ軍医長が答えた。

「脳波増幅装置が無くても使えるのか?」

「マークマックスではありませんが、ナナミ大尉は試作品の携帯攻撃用脳波増幅装置を装備していました。ポングストの攻撃用脳波を発生させる試作品の携帯装置です。ガンビロン程ではないにしてもポングストより強力な攻撃用脳波が発生したのかも知れません」

第8師団師団長のホーネット少将が答えた。

「我が軍でガンビロン用脳波を発射できる唯一の個体だ、追い込まれて発射したのかもしれんなあ。よほど恐ろしい目にあったのだろう」

ファントム中将が憐れむように言った。

「ガンビロンを発射したと思われる時間に、前哨陣地に設置された攻撃用脳波測定記録装置の針が振り切れたようです。前哨陣地で戦っていた殆どの兵士が脳に衝撃を受けたようです。現場からは30Kmも離れています。ナナミ大尉が普通の兵士なら即死しているでしょう」

シグ軍医長が説明した。

「さすがムスファだな。私はロールネームをあまり信用していなかった。だが今回ナナミ大尉と出会ってムスファの凄さを目の当たりにしたよ。しかし植物状態になってしまうのはあまりにも残酷すぎる。軍医長、どうにかならんのか! なんとかしてくれ!」

ファントム中将が焦っている。

「今は意識の向こう側に行ってしまっています。戻って来るには本人の意思でしかどうにもできません」


「タケル・・・・・・私も一緒に行くの、ここにいたらダメなの・・・・・・・」


ナナミ大尉の唇が微かに動いた。

「喋りました! もしかしたら戻って来たのかもしれません!」

シグ軍医長が言った。

「ナナミ大尉、ナナミ大尉! 大丈夫か?」

ファントム中将がナナミ大尉に声を掛ける。将官クラスが尉官クラスを見舞うなど前例がない事であった。まして軍団長が大尉を見舞うなど異例であった。ナナミ大尉は南方方面軍のエースであり、希望なのだ。

「ここはどこ?」

「安心するんだ、病院だ。ナナミ大尉、よかった、本当によかった。軍医長、どうしたらいいんだ?」

ファントム中将は興奮していた。

「閣下、もう大丈夫です。ナナミ大尉。しばらくはゆっくり休んで下さい」

シグ軍医長が優しい声で言った。

「さっきタケルがいたの」

「タケル?」

ファントム中将が首を傾げた。

「まだ脳が疲れてるのでしょう。ナナミ大尉、何も心配はいりません。休んで下さい」

ナナミ大尉は左の手首を見た。そこにはHamitonカーキフィールド:ブロンズがあった。腕時計だ。

「よかったの。タケルに会えたの。きっとまた会えるの」

ナナミ大尉は左腕を顔に引き寄せると腕時計のガラス面に軽くキスをした。

ナナミ大尉は安心して微笑みながら眠りに落ちたがその顔はあり得ないくらい腫れていた。左耳は44マグナム弾の直撃で吹っ飛んでいた。ナナミ大尉は一カ月入院して体力を回復させた。顔は再度変身して左耳が復活した。


【レジスタンスキャンプ】

「前哨陣地から30Km離れた地点で倒れているナナミ大尉を発見し、高速ホバーで病院まで運びました。現場には第1政府のライトニングウォホーク少佐も倒れたいましたがすでに死亡していました。検死の結果、死因は脳の損傷によるものでした」

ジャック少尉が報告した。大会議室にはレジスタンスキャンプの士官の殆どが集っていた。兵士達も会議室のドアの外に集り、会議室の中を覗いていた。皆ナナミ大尉が心配なのだ。会議は公式の会議ではなくナナミ大尉の回復の挨拶だった。

「ありがとう。おかげで助かったよ。ライトニングウォホーク少佐は強かった。格闘戦ではやられっぱなしだった。組み合ったのが失敗だった。打撃系で戦うべきだった。相手の腰にタックルにいったところから一気に形勢が逆転して何も出来なかった。ガンビロン用の脳波の発射を習得しておいて良かったよ。携帯脳波増幅装置がうまく同調したようだ。『ガンビロンもどき』だな。もしマークマックスを使用していたら前哨陣地の味方にも多くの被害が出ただろう」

「ナナミ大尉が無事で良かったです。嬉しいです。嬉しいという感情が分かりました」

ジーク少尉は微笑んでいる。

「『ブラックシャドウ』はどうなったんだ?」

「ナナミ大尉の通信を受けて第1中隊は総勢250個体で前哨陣地に急行しました。敵は強かったのですが、数的に有利だったので30分で殲滅できました。敵の戦死は22個体。捕虜は6個体です。我が方は中隊の戦死12個体、前哨陣地の戦死は38個体で、殆どは中隊が到着する前の戦闘によるものです。数的には敗北ですが、『ブラックシャドウ』を殲滅するという目的は果たせました。ナナミ大尉の作戦が功を奏したのです。恐ろしく強いやつらでしたが、ライトニングウォホーク少佐も部隊も消滅しました。前線の不安が消えました」

レックス少尉が報告した。

「敵は銃剣や銃床を使いこなした見たことも無い格闘術でした。アサルトライフルは我が方の『AS-01』をコピーした物と思われます」

ジーク少尉が発言した。

「敵もアサルトライフルを使いだしたか。こちらの優位性が失われるな。物理攻撃兵器の性能が同じになれば、ますます脳波戦が重要になってくる。脳波攻撃訓練と格闘訓練を強化する。銃床や銃剣による攻撃も取り入れよう。地球のアメリカ海兵隊の白兵戦術が参考になるはずだ」

「ナナミ大尉、勝利食が準備してあります。共用食堂に移動してください」

「吉乃屋の牛丼のレトルトとペユングが食べたい。『アサハおいすい水:天然水』も飲みたいな。皆は何が食べたいんだ?」

ナナミ大尉は大きな声で言った。

「私はカレーライスです。旨さが口の中に広がったあと、口の中が熱くなってピリピリします、辛いという味を初めて知りました。あの感覚がクセになります。食べ出すとスプーンが止まらなくなります」

「私もカレーライスです。ルーに白米を絡めると凄く美味しいです」

「私は大尉と同じく牛丼です。汁のかかった白米の味と肉の食感が最高です。この世にあんなに美味しい物が存在するなんて」

「私はハンバーグです、肉の食感と味が最高です」

「私はプリンです、あんなに甘いものが存在することが信じられせんでした」

「甘い物ならチョコレートだろ! もうたまらん、我慢できん! チョコレートは私が全部いただくぞ!」

ジーク少尉がひと際大きな声で叫んだ。

兵士達は食堂に移動する前からすでに盛り上がっていた。



「感想、レビュー、ブクマ、評価、待ってるの!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ