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Chapter13 「ナナミ大尉抹殺指令」 【MM378】

Chapter13 「ナナミ大尉抹殺指令」【MM378】


【前線本部】

緊急会議が開催された。南方方面第1軍の第6、第7、第8、第9師団の大尉以上が招集されたのだ。第6師団と第7師団は元第2政府の兵士達が多い戦闘経験が豊富な師団だ。第8師団と第9師団は第2政府以外の政府の兵士や民間人を集めた部隊で戦闘経験は劣る。ナナミ大尉は名目上は第8師団に所属しているが全師団の訓練を行っている。

「第6師団の第1連隊と第2連隊が全滅しました。5000個体以上の兵士が植物状態です。敵のガンビロンによる攻撃だと思われます」

ガンビロンはMM378における最大の脳派攻撃だ。広範囲の敵の脳を壊し、植物状態にする。ナナミ大尉が、第1政府にいる時に初めて使用したのだ。その事がきっかけになり、ナナミ大尉は地球に逃亡し、今回の第1政府と他の政府連合との戦争になったのだった。

「シールド装置は装備していなかったのか?」

ファントム中将が尋ねた。ファントム中将はアメリカ人の俳優のジョンウェインの姿になっていた。

「対ガンビロン用のシールド装置は配備予定でしたが、シールド装置を輸送中の輸送部隊が敵の待ち伏せ攻撃を受けて輸送中の物資を全て破壊されました。ちなみに我が軍にはガンビロンを使える個体はナナミ大尉だけです」

第6師団のソーリュウ少将が答えた。

「ナナミ大尉は第1政府にいる時にガンビロンを使ったな。第一号のはずだ、それが元で今回の戦争が起きたのだったな。ナナミ大尉、報復攻撃はできないのか?」

ファントム中将が聞いた。

「ガンビロン用の攻撃脳波は発射できますが、マークマックスという特別な脳波増幅装置がなければガンビロンは使えません。連合政府にはその増幅装置がありません」

ナナミ大尉が説明した。

「ここのところ第1政府は正面からの戦いを避け、後方支援部隊の輸送部隊や小さな前哨陣地を個々に攻めています。第7師団前哨陣地が5つ破壊されました。また、大尉の2個体、中尉の3個体、少尉の6個体が何者かにより、単独行動中に殺されていいます。殆どが撲殺です。その内1個体は休暇中でした」

情報士官のキリシマ大尉が報告した。

「我々も苦慮しています。せっかく構築した前哨陣地が次々と壊滅しています。士官の11個体も謎の死を遂げています。前哨陣地には精鋭の部隊を投入しているのですが・・・・・・」

第7師団師団長のアカーギ少将が悔しそうに発言する。第7師団は元の第2政府の最強の部隊を主体に構成されている。

「こちらの武器の方が性能は上だろ、なぜ前哨陣地がやすやすとやられたのだ」

ファントム中将は苛ついている。微かに感情が芽生えてるようだ。

「これは噂ですが、恐ろしく強い敵の特殊部隊によるものだと思われます」

情報士官のキリシマ大尉が口を挟んだ。

「恐ろしく強い特殊部隊?」

ナナミ大尉が疑問を口にする。

「はい、この部隊は『ブラックシャドウ』と呼ばれ、人数は小隊レベルですが、脳波戦と白兵戦を混合した攻撃を得意とし、白兵戦でのキルレシオは1対50以上とのことです」

「私はかつて第1政府で特殊作戦を幾つか実施しましたがそのような部隊について聞いたことはありません」

ナナミ大尉が発言する。

「ここで極秘情報をお伝えします。みなさん、口外しないようにお願いします。先日、敵の情報将校を捕らえました、尋問したところ、この部隊の情報が幾つか得られました」

「話したまえ!」

ファントム中将が許可した。

「この部隊の部隊長は『ライトニングウォホーク』少佐です。正式名を『ムスファ・ローレルスキー・ライトニングウォホークアリソン』と言います」

「ムスファなのか?」

ファントム中将が言った。

「第1政府のムスファなら私が知っているはずです。そんな個体は聞いたことありません。私は2年ほど地球にいてブランクがありますが、その間に軍に入って少佐まで進級したとは思えません」

ナナミ大尉が発言した。

「それが、ライトニングウォホーク少佐は長い間第1政府の暗殺部隊にいたようなのです。政府に歯向かう組織や軍内の不満分子を暗殺していたようで、表に名前が出ない存在だったようです。ここに来て、第1政府が劣勢になったので正式な軍務についたようです」

「暗殺部隊?」

「はい、政府直轄の極秘の部隊だったようです。それと、これも重要情報ですが、ライトニングウォホーク少佐の部隊は『ナナミ大尉の抹殺指令』を受けているようです。殺された第7師団の11個体はその予行演習かと思われます。ライトニングウォホーク少佐による暗殺です。格闘術による攻撃で、遺体は『撲殺』で顔面がボロボロだったようです。首が千切れて胴体と顔が分離した遺体もあったそうです」

「ええっ!」

「なに?」

「本当か」

「撲殺?」

会議の出席者から声が上がった。

「捕らえた情報将校に合わせて下さい、私が尋問します、お願いします」

ナナミ大尉が懇願した。

「残念ですが、捕らえた情報将校は死亡しました。我々は事の重要さに鑑み、平和条約に違反して拷問を行いました。自白剤を限界まで投与し、あらゆる苦痛を与えました。そのおかげで今回の情報が得られたのです。ですから極秘情報なのです」

「ナナミ大尉の抹殺とはどういうことだ?」

ファントム中将が強い口調で質問する。

「ナナミ大尉が地球の武器を持ち込み、訓練教官をしている事を敵は掴んでいます。また、ナナミ大尉がレジスタンスと連合政府の兵士達の英雄となっていること、対ギャンゴ戦のエキスパートであることも。ナナミ大尉の抹殺は、我が軍の士気を下げるのが目的です」

「その少佐は強いのですか?」

ナナミ大尉は相手の強さが気になった。

「はい、失礼ですがナナミ大尉と互角かそれ以上と分析します。『ポング』は弱い『ポングスト』並の威力、シールド発生装置を装着しなくても通常のポングは防げるようです。格闘戦は暗殺も含め3000個体以上を葬っているようです」

ポングは攻撃用脳波による攻撃で、敵1個体の脳を破壊して倒す銃のような存在だ。ポングストは攻撃用脳波による砲撃のようなもので1撃で敵の個体を5~20個体の脳を破壊して倒すことができるが攻撃用脳波増幅装置が必要である。装置は据え置き式で持ち運べる大きさではない。威力が大きいほど大きな装置が必要だ。これらの攻撃はシールド発生装置を身に着けることである程度防げることができる。シールド発生装置はバリアのような存在で携帯することが可能だ。

「格闘戦で3000個体か、凄いなあ。たしかナナミ大尉は1400個体でしたね、それでも凄いが」

「増幅装置なしでポングストを使えるのか?」

「脳にポング耐性があるのか?」

会議の参加者が驚きの声を上げる。

「ナナミ大尉、気を付けてくれ、ナナミ大尉に護衛をつけろ、一個小隊だ」

ファントム中将も焦っている。

「はっ、護衛に一個小隊をつけ、一個中隊をナナミ大尉の配下につけます」

第8師団師団長のホーネット少将が返答した。


 ナナミ大尉とその部下はババイノキ州の南部、ツルコーデオマ地区の第8師団の前哨陣地にいた。この近辺の前哨陣地が軒並み敵の特殊部隊、通称『ブラックシャドウ』の攻撃で潰されている。ナナミ大尉は『ブラックシャドウ』をおびき寄せる作戦をとった。軍団長のフントム中将は反対したが一個中隊をつけることでようやく了解を得たのである。しかしナナミ大尉は一個中隊を後方5キロの地点に置き、2機の高速小型ホバーでナナミ大尉直轄の特殊任務部隊として24個体の兵士を連れて前哨陣地に進出した。12個体はムスカ以上の優秀な個体だ。高速小型ホバーは反重力装置を使い、地上500mまで上昇でき、最高速度は時速596Kmである。今回は時速80Kmで地上5メートルの高さを移動した。約1個分隊兵員16名、荷物は兵員とは別に800Kgまで搭載可能である。


 「ナナミ大尉でありますか? 大隊本部より支援を頂けるとは伺っておりましたが、まさかナナミ大尉に来ていただけると思っておりませんでした、心強いです。兵士達の士気があがります、兵士達に訓示をお願いします」

前哨基地の小隊長のミグ小尉は直立して敬礼する。

「楽にしていいの。敵の『ブラックシャドウ』は知ってるの?」

ナナミ大尉は前線に出ると地球にいた頃の口調になる。

「はっ、知っております。この地区の前哨陣地が3つ潰されました。第7師団の前哨陣地も奴らに潰されました。生き残った兵士の話だと恐ろしく強い部隊とのことです」

「話を聞きたいの。その兵士を呼んで欲しいの」


 若い兵士が塹壕内のミーティングスペースに入って来た。兵士は顔を包帯で巻かれていた。

「『ブラックシャドウ』との戦闘について教えて欲しいの」

「はっ、敵は突然現れました、12個体程度の分隊が二つです。敵はポングとポングストで攻撃をしてきました。我々は携帯シールド発生装置を装備していましたが、効果が薄く、強いダメージを受けました。この攻撃で半数以上の兵士が行動不能になりました。その後はアサルトライフルを撃ってきました。最後は白兵戦です。アサルトライフルを上手く使った攻撃でした。銃の先に剣のような刃物を着け、刺してきました。また、銃床で打撃をしてきました。私のいた小隊は40個体中38個体が戦死しました。私も顔面に被弾して意識を失いました」

「敵もアサルトライフルを使ってるの?」

「おそらくわが軍の物をコピーしたと思われます」

「敵の隊長は見たの?」

「はい、先頭に立っていた個体が隊長と思われます。とても大きな個体でした。黄色のヘルメットを被っていました」

黄色いヘルメットは第1政府の戦闘指揮官の証だ。

「ご苦労だったの。白米と味噌汁、それに甘いお菓子を持ってきたから食べるといいの」

「ありがとうございます。味噌汁は久しぶりです。お菓子は食べたことがありません。楽しみです。それと何か記念になる物を頂けないでしょうか? ナナミ大尉に会えた事は一生の思い出です」

ナナミ大尉は連合政府軍のヒーローだった。ナナミ大尉は手帳とペンを取り出した。

「あなたの名前は?」

「はい、ポール二等兵であります。ロールネームはムサコです」

ナナミ大尉は一筆書いて手帳の用紙を千切ると首巻いていたダークブラウンのスカーフと一緒にポール二等兵に渡した。

『ポール二等兵へ 武運を祈る あなたは絶対に負けない ムスファ・イーキニヒル・ナナミジョージフランクアマノ』

「これはナナミ大尉のフルネームでありますか? 光栄です。中隊や大隊の皆に見せます! このスカーフも一生の宝にします!」


 前哨陣地の兵士達48個体が4列に整列している。ナナミ大尉の訓示を聞くためだ。拡声器がONになる。

「みんな、ご苦労なの。今、我々は反撃に出ているの。第1政府は我々を恐れているの。我々第8師団は強いの! 勝利は目前なの。第1政府を倒して平和なMM378を作るの。みんなはその主役なの。敵の特殊部隊が前哨陣地をピンポイントで襲っている事は知っていると思うの。いろんな噂が飛び交っているの。でも恐れないで欲しいの。私が来たの。私の名前は『ムスファ・イーキニヒル・ナナミジョージフランクアマノ』。絶対に負けないの。脳波戦、銃撃戦、格闘戦、どれにおいても負けないの。貴方達も負けないの。自分の力を信じるの。もう一回言うの、我々第8師団は強いの! 以上。質問はある?」

「はっ、質問です。敵の隊長は恐ろしく強いと聞いています。どのように戦ったらよろしいのでしょうか?」

一人の兵士が質問した。

「その隊長は『ライトニングウォホーク少佐』なの。たしかに強いの。でもそいつは必ず私を狙ってくるの。そして私が倒すの。だから安心して戦って欲しいの」

「はっ、安心しました。ナナミ大尉もご無事で」

「大丈夫なの。私のつまらない話はここまでなの。この後みんなで勝利食を食べるの、準備してあるの」

「うおーーーー!」

兵士達から歓声があがった。


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