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生活

 最終話です。


「土起こしも終わりますし、次は何を植えましょうか?」

 皇子サマの目が生き生きとして楽しそうだ。何よりである。

 自分の手に依る物が形になるのが愉しい。そう言ってたな。

 日も落ち。四人で卓を囲んで食事。

 煮込みを一口。もう少し濃い味にしたい所だが。そろそろ塩の調達を考えねば。


 正直、「そんな事は自分のする事では無い。」なんて言い出したらどうしようかと心配したけど、想い過ごしに為って良かった。

 ホント、出来た皇子様だ。自分では「元」だなんて言っているが。

 今では善き同居人である。


 ここは、帝国領内。向こうに行くと連合のクーネルトコロとハラクロイの国境に出られる。

 所謂、最前線。

 の、帝国側後方と云う場所だ。前線からはそこそこ離れているけどね。


 打ち捨てられた農家。あれは四度目だったかの作戦の途中で見つけて、目を着けていたんだ。この日の為に。まぁ、その時は四人で暮らす事に為るとは考えて居無かったけどね。いずれ増築は必要かな?


 しかし、あれから連合は兎も角として、帝国は未だ姿を見た事が無いんだが。大丈夫か帝国?

 此方に都合が良いから、別に心配する必要は無いんだけど。

 ここは帝国領内だから、そう簡単に連合がここまで来るなんて事は先ず無いだろう。有り得無い事は無いだろうけど、その時は作戦案を立てたのは、絶対にアイツでは無いな。

 断言してやる。


 イカン、イカン。『言葉が化けて姿を得る』のは困る。有能な参謀にでも交代されるとコッチが迷惑する。ん、これもか、迂闊な事が言え無いな。


 隠していた荷物を回収しに戻った時、あれからベイダ戦がどうなったか、聴き込みしたけれども、誰も知ら無かったんだよな。ウヤムヤにされたか、戦い自体無い事にされたか。

 うーむ。ベイダ関連が一切触れられてい無いと為ると、連合は俺達がどう為ったと考えているか?

 当然、俺達の行方は捜しているよなぁ。捜せる範囲はそんなに無いだろうし、まして、よもや駆け落ち脱走して、こんな所で生活しているなんて、想いもしてい無いだろう。

 計画はリィリィにしか話して無いし、バレては無いだろう、バレて無いよな?

 まぁ、バレた所で此処まで捜しには来れ無いよなぁ。幾ら何でも。

 戦神姫同士の一騎打ちを目論んで、生死共々行方すら判らない。そりゃ都合が悪い。公表出来る訳無いか、となると、確証が得られるまでダンマリかぁ。


 ?

 気付けば三人が此方を見ている。

 ちょっと気恥ずかしい。

「どうした?」気にしてないよ、な感じで。

「考え込んで居た様なので」皇子様が説明する。

「また、悪巧みでも想い着いたかと想ったの。」リィリィが酷い。

『また』って何だよ。『悪巧み』だなんて、そんなの考えた覚えは在りません。断言。皇子様は苦笑いしてる。

 皇子にも関係し無い訳じゃ無し。相手に為って貰おうか。

「ちょっとばかり、帝国と連合の事を考えてまして。」

 皇子様は真顔になる。

「そこまで重い話じゃ無いですから。身構え無くても大丈夫ですよ。」

 気を楽に。力抜いて。

「連合も帝国も、今頃ジリジリして居るでしょうね。情報集めに躍起かな。何しろ、戦神姫が二人揃って行方不明ですからね。」

「私達の行方も判ら無い。」付け加える皇子様。

「そう、肝心な俺達の居場所が揃って判ら無い。」思わず吹き出しそうに為る。妙に可笑しい。

「帝国も連合もお互い、何がどうなっているのか判ら無い。頼りになるのが相手の足許。と云うのが皮肉な事だ。」皇子様が肩を竦める。

 どっちも自分達では見つけられ無いから、相手が見つけるのを待つ。他人頼みだ。

「連合について言えば、『連合内の何処にも居無い』と云う以上の情報は得られそうに無い。後は、連合の情報組織の働き次第ですね。」

 まぁ俺達からすれば事実上の放ったらかしだけどな。

 そうだ

「ミィイシア。皇子様を捜している他の連中とか、捜索隊とかって居たか?」

「判ら無い。」ミィイシアは目を伏せて答える。「あの時は、追い掛けることに頭が一杯だったから。」

「有り難う。ミィイシア。」皇子様が頭を撫でる。どっちが歳上なんだか。

「リィリィは見たか?」話を振る。

 視線が天井の方へ。あの時を思い出して居るのか。

「多分、居たんじゃない?それらしい声、聴いた様な。」

「そうですね。捜索をしている可能性は高いですね。」皇子様が先回りで答える。振るまでも無かったな。

「曲がり形にも皇族という身でしたから。」

 過去形ですか。未だ撫でてる。ミィイシアの目が細くなってます。

 突付くな、解ったって。

 俺もリィリィの頭に手を載せる事になった。二組して共に頭を撫でている。どう云う状態だ。


 帝国がいつ此処を嗅ぎ付けるか。だよな。

「捜すのを諦めて、さっさと切り上げてくれれば、暫くすれば『名誉の戦死』か、その内『戦場の怪談話』か『噂話』の類だな。」

「知ってる、知ってる。『彷徨う首無し兵士』でしょ?」

「定番だな。それは置いといて。」話が迷走しそうだからね。

 それとも、既に嗅ぎ付けられて居るのか?

 だったら、何も仕掛けて来無いのは不気味だが。

 まぁ結論としては

「両方共に混乱しているなら、それで良し。

 このまま様子見で、放っときましょう。

 此方から手を出す必要は無い。

 手を出されたら、何に手を出したか解らせるって事で。」

 皇子様の頭が縦に動く。

 未だ撫でているんですか。ミィイシアがデレデレだ。

 リィリィもか。


 それにしても皇子様はちゃんと俺の話に耳を貸してくれる。無条件では無いだろうが、随分、信用を得られたものだ。信じてくれるのは嬉しいんだが、心配に為る時もある。信用に背くつもりは無いが、偶にね。大丈夫?て時が在る。だから、

「皇子様は、どうして俺を、こう言っちゃ何ですけど、そこまで俺を信じる要素って在ります?」

「あの川縁で、憶えていますか?

 あの時、私は殺されるものだとばかり想っていました。戦争ですから。

 殺され無いまでも、人質として利用するだろうと。

 連合が勝つ為にはそうするだろうと。

 でもダン殿はそうじゃ無かった。人質みたいであったけれど。」皇子様は小さく笑った。

「話と言えば、降伏を勧める訳じゃ無い。脅す事も無かった。

 ただダン殿とリィリィさんの事。私とミィイシアの仲の事。

 私とミィイシアの二人の功績を認めてくれたのは初めてだったなぁ。」沁々と語る皇子様。

 何やってんだかな俺。もう少し、何か、こう、あぁ、何だかなぁ。

「自分達だけで無く、我々も一緒に幸せにしようと考えてくれた。

 それだけじゃ、いけませんか?」未成年だって?詐欺じゃないか?

「そうだ、信じるついでに。」これ以上、何なんですか。

「ダン殿。私達二人の婚姻の証明人になって貰えますか?」

「それは勿論。喜んで。」

 ここからは儀礼口調で。

「謹んで承らせて頂きます。」畏まって応える。それなら、

「俺達の証明人も皇子様達に頼もうか。」気安い歳上からの頼み事。

「良いですね。それ。お互いに証明人になると云うのも。」皇子様も笑って返してくれる。

 なんて呑気な事を言っていたが。


 未成年て、証明人になれるの?


 何の話の流れで出て来たのか忘れた。そんな事はどうでも良い。すっかり見落としていた。

 そうだった。未成年では証明人に為れ無かったんだった。署名しても法的効果を発揮し無いんだった。しまった!

 他に頼むことは出来無いし、俺達は大慌て。知恵を絞っても出て来るのは呻き声と云う惨状。抜け穴、隙、迂回を探したが、なんだかんだで出した解決策は俺とリィリィの結婚の先延ばしだった。

 此処まで来て、予定まであと少しの結婚をもう少し先延ばしにしてくれ、と言った時は流石にリィリィも拗ねたが、楽しみにしてたもんな。理由を説明。納得してくれた。

 皇子様達も申し訳なさそうにしてたしな。


 そして。


 ミィイシア

 及び

 マレナウヴス

 両人が婚姻関係に有ることを認める。

 ダン=シェアシェリング

 リィリィ=シェアシェリング

 がこれを証す。


 こんな内容を記した紙片が一葉。


 ダン=シェアシェリング

 及び

 リィリィ

 両人が婚姻関係に有ることを認める。

 ミィイシア

 マレナウヴス

 がこれを証す。


 そんな内容を記した紙片が一葉。


 其々が額に入れられ、居間の壁に並べて掛けてある。


 終わり。

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