04 僕の混乱
しばらくして彼女が洗面所から戻ってきた。
「ご飯できてるよ」
僕は声をかけながら顔をあげた。
彼女と仲直り出来たことが嬉しくて、多分その時の僕の顔は緩みきっていたと思う。
しかし、僕の目に映ったのはさっきの彼女の笑顔とはまるで違う顔だった。
彼女は困惑したような気まずそうな引きつった笑みを浮かべて、僕に起こしたことと朝食を用意したことへの礼を述べた。
今なら分かる。
僕はきっとその時、笑顔で話を続けるべきだったんだ。
彼女が感じた気まずさを押し退ける勢いで、いつも通りにすれば良かったんだ。
本当に今ならそれがよく分かる。
ただ、その時の僕は浮かれた状況から一気に突き落とされた気分で、ひどく動揺していた。
だから、最大のミスを犯してしまった。
その時、僕は彼女と同じ表情を浮かべてしまったんだ。
引きつった下手くそな笑顔を浮かべて、彼女に僕が困惑していると、はっきり伝えてしまった。
緩みきった表情からそんな表情に変わったら彼女がどう感じるかも考えることができなかった。
それから、いつも通り彼女が席について、気まずい食事を終えて、バイトに出かけていった。
彼女が家を出ていって、僕はやっと息ができた気がした。
僕の頭の中は、あの時からずっと気まずさと困惑で埋め尽くされていた。
彼女は僕を許してくれたんじゃなかったのか。
僕たちは仲直り出来たんじゃなかったのか。
どうして彼女の態度はいきなり変わってしまったのか。
起こしてから洗面所を出てくるまでに僕はなにかしてしまったのか。
彼女をまた怒らせてしまったのか。
────考えれば考えるほど頭が混乱しそうだった。
一体僕はどうしたらいいのか。
これから僕たちはどうなっていくのか。
いくら考えても答えは出ないままだった。