03 僕達の初喧嘩
そんな感じで始まった僕らの生活。
最初は、本当に上手くいっていたんだ。
彼女は朝起きれないことに怯えずに安心して眠れるし、僕は彼女の美味しいご飯を毎日食べられる。
それに何より、2人で過ごしているのが楽しくて仕方なかった。
暇があればDVDを借りてきて鑑賞会をしたり、一緒にゲームをしたり、ちょっとだけ僕が料理を手伝って一緒にご飯を作ったりもした。
毎日が新鮮で楽しかったし、穏やかで充実した時間を過ごしていた。
だけど、やっぱりうまくいかない時は来た。
ある日、僕が寝坊してしまって、彼女を起こすのがギリギリになってしまった。
もちろん僕も必死に謝ったし、朝の準備も可能な限り手伝った。
でも、彼女の怒りは収まらなかった。
「朝起きれないんじゃ一緒に暮らす意味がない!」
彼女は僕にそう言ったんだ。
今なら、彼女も久々の寝坊にパニックになってしまって、咄嗟に言ってしまっただけだと分かるけれど、
その時は僕も余裕がなかったんだ。
彼女に謝りながら、心の中でつい
「彼女にとって僕と暮らす理由は朝起こしてもらうためだけだったんだ」
「彼女にとって僕は目覚まし時計と変わらないんだ」
そう思ってしまったんだ。
その日一日中、頭の中からその事が離れなかった。
多分彼女もそうだったんだと思う。
帰ってきた彼女は気まずそうに、バイトに間に合ったことと朝の謝罪を伝えてくれた。
これが僕達の初めての喧嘩だった。
僕達は喧嘩をしたことがなかったけれど、それはつまり仲直りをしたことがないっていうことでもある。
初めての喧嘩は、僕達の中に小さいとは言えない大きさのしこりを残して去っていった。
次の日の朝、僕はこれまで以上に大量のアラームをセットし、無事に起きることができた。
今までと同じように朝ごはんの準備をし、彼女の部屋に向かい、彼女を起こした。
彼女は、いつも通りにっこりと笑っておはようと言う。
まるで昨日のことが嘘のようだ。
驚いたけれど、彼女と気まずくならなくて済むことが嬉しくて、僕もおはようと笑った。
いつも通り彼女に身支度を勧めて、先に席についた。
彼女が洗面所に向かっていく。
良かった。うまく仲直り出来た。気まずかったのは昨日だけだった。
本当にそう思ったんだ。
疑う気持なんて一つもなくて、その時の僕は浮かれてたんだ。
────だから、僕は大きな失敗をした。




