南の森①
自然の中、森の中、木々に囲まれてはいるが舗装されている街道。
いや、舗装というのは流石に言い過ぎか。
森の中の道にしては十分歩きやすい。
ピクニック気分で歩みを進めるルミナ一行。
目指すは南の境界に位置する街「リデア」
足は軽い。少なくてもルミナは。
「なんで森の中を歩く羽目になるのよ。」
大きな街道沿いの街を経由しつつ、乗合馬車などを使って旅する予定だった。
その目論見が通じなかったのは、来た時にも問題となっていた馬変死事件。
馬の絶対数が足りず、運航業者はほぼ息をしていなかった。
それだけならまだ街道を進むことも考えられたのだが。
「おねーちゃーん。今晩どうよ!いや今からでもいいんだぜ。ほれほれ。」
「こいつお腹タプタプしてるぞおもれぇええ。あ、逃げんなこらアア。」
ナンパしまくりのりんこに、子供にどつきまわされ追いかけられ続けるペンガロン。
問題児がパーティに二人存在した為、とてもゆっくりできない。
そうやって目立てばトラブルも起きる。
しかもりんこは加減しない。色恋沙汰のトラブルで何人の男を半殺しにしたことか。
ペンガロンもまけてない。街に入るやいなや、なぜか子供が引き寄せられ弄られているうちに大集団を形成する。
精神年齢があうのだろうか。瞬間的に意気投合する。
そのまま子供たちを巻き込んで集団で悪戯を実施する。
そのやり口は、びっくりさせたり、カップルを揶揄ったりとくだらないことだが、大人数でやるため苦情が殺到する。
もちろん説教はする。あまり目立つなと。トラブルを起こすなと。
「俺は俺の生きたいようにする。俺を止めたければ、力ずくでこい。」
りんこに力ずくで来いとか言われても、とても逆らえない。
「わかった。次の街ではやらない。自分からは。」
そういったペンガロンだが次の街でも必ず同じような事件となる。
こいつはもう確信犯だろう。
街にいるだけで、苦情が殺到する。必然的に大きな街は避けるようになっていった。
その有様がこれである。
まぁルミナにとっては旅行気分なので気にするようなことではないのだが。
「ったく・・・足に変な筋肉が付いたらどうするのよ。こんなに歩くなんて想定外だわ。」
「いや。俺結構「飛翔」使わされましたよね。ねぐさん、あんまり歩いてないじゃないですか。」
リオは女神つばさから飛翔スキルを与えられていた。
飛ぶと体力を消耗するのだが、ねぐの我儘には足掻らえず、何度か運ばされている。
その際下から見えてしまうぱんつについてはもう誰も突っ込まないようにしていた。
めんどくさいし・・・・なんか慣れてしまったのだ。
おかしいな。本来パンチラなんてラッキースケベな場面を見たら、神に感謝すらしていたというのに。
「今日は紫なんだ。」
そんな感想しか出てこなくなっていた。枯れたかな・・・・俺。
「エロさとはシチュエーションが大事なのだ。指摘してやれば恥ずかしがってそれなりに意味はあるのだろうが、マンネリはさは否めない。もっと萌え要素が欲しいね。」
ペンガロンのほうが酷いことを言っていた。ちーん。
まぁそんなこんなではあったが、その甲斐あって一行が進む速度は、徒歩とは思わないほど早いものでもあった。
「明日には着きますよね。「リデル」か。どんな街なんですか。」
ルミナに街の知識はない。境界付近の街であるということだけは聞いている。
「まずは境界というものがどういうものか、ってところだけど、ルミナが知ってるわけないし・・・リオ、教えてあげなさいよ。」
さらっと人に振る。安定のねぐクオリティである。
「境界線ていうのは魔界とこちらを隔てている結界の事を指してるんだぜ。この結界のおかげで魔族はこちらの世界にやってこれない。とされている。っていうか俺魔族とか見たことないし、御伽噺の類だとおもってたし。」
「結界そのものは昔からあったわ。見えない壁と言えばいいのかしらね。壁に気が付かない獣が突っ込んで死んでいる事がよくあったため、死体で近づけなくなることもあったって話よ。世界の果てとかいいだしてる学者もいるけどね。」
よくわからんけど不思議ゾーンということか。
「ちなみに結界は壊せない。いろんなことを試したけど無理だった。だから少し興味あるのよね。魔界に。」
御伽噺クラスの世界が現実に存在する。そう思うとわくわくするのはルミナも同じだ。
「見えてきたぞ。」
りんこの声に一同同じ方向へ視線を向ける。
大きな門と外壁に囲まれた街「リデル」が姿を現すのだった。
「大きいなあ。」
初見の感想としては王都ラノティールよりはだいぶ小さい。
ただ森の中の街がここまで大きいとは思わなかった。
比較対象にあげれるほどの規模である。
人口も推して知るべし。
「ん・・・・なんか壁からけむりがあがってねぇか。」
りんこの指摘に目を凝らす。
遠すぎてよくわからない。どんな視力してるんだ。
「ちょっとみてみようか。」
ペンガロンの言葉にりんこが「まかせた。」と答える。
「魔法ですか?」
視力をよくする魔法、あるいは視界を飛ばすとか・・・いやスキルの線も。
そう思ったルミナだったが、ペンガロンの答えは違っていた。
「遠くを見るためには目のレンズ、水晶体を薄くすることでピントを調整するんだよ。」
「水晶体・・?なんだそりゃ。」
リオはよくわかっていない。ねぐさんとりんこさんは表情から読み取れない。
ルミナはなんとなく理解できる。
水晶体が目のレンズの役割をしていることだけは知っている。
それ以上は知らないが。
「僕の強みはこういった操作にある。肉体を形成しているんだから作りを少し弄れば遠くを見ることも可能なんだよ。」
そういってペンギンの着ぐるみを着ながらぱちんとウィンクをする。
・・・・・・これほどウィンクの似合わない動物がいるなんてと驚愕すら覚えるルミナであった。
「・・・・・魔物か。戦いになってるっぽいね。」
戦い。ここまでの道のりでそんな危ない場面はなかった。
境界線近くではよくあることなのだろうか。
「まぁいい。そういうことなら参戦したほうが後々のことを考えるとやりやすい。形勢は?」
「分が悪そうだね。」
りんこの問いにペンガロンが答える。
「それは重畳。サクッと向かうとしようぜ。」
早速駆けだそうとするりんこに「ちょっと待って。」とストップをかけるペンガロン。
「ここはりんことねぐさんに任せて、僕たちは看護のほうに向かおう。そちらもだいぶやばそうだ。」
「なんでだよ!俺も戦いのほうへ行きたい。」
リオの言葉にペンガロンは首をゆっくり横に振る。
「君が行くなら勇者スキルを使わざるを得ない。勇者スキルは使わなければそれに越したことは無い。ましてや君の力ではないんだ。負担は全てルミナちゃんのところに行く。それでもいいのかい。」
「ぐ・・・・。」
負担・・・そういうことは感じないけど、この元勇者はスキルに関しては慎重に使うんだと口を酸っぱくいってくる。
よほどのことがあったんだろう。それは人間ではなくなった状態を見てもうかがえる。
「子供を奇異の目に晒したくない。って言えばいいのに。まぁあなたがそう言うのなら、私たち二人で間に合うってことでいいのよね。」
「俺一人で十分だろう。むしろ俺が颯爽と危機を解決すればそのあとがスムーズにいくしな。」
りんこの言葉には一見今後の情報収集に役に立つように見えるが、女を落とすことなんだろうと最近では理解できるようになった。
「先行くわね。あんたはあとから・・って・・きゃあああ。」
飛行呪文で先に行こうとするねぐの脚をりんこが捕まえる。
「さぁとべ!いそげええええ。」
「ふざけんじゃないわよ!ちょっと離しなさいよ。」
強引に呪文を唱えながら飛び立つ二人。
途中で振り落とされませんように。
少しりんこが心配で祈ったルミナだが、流石にねぐがそんなことは・・・・・。
と祈った矢先に落下するりんこが見えた。
まぁりんこさんだから大丈夫だろうけど。
「さぁ僕たちも急ごう。」
まるで何事もなかったように気を取り直した残りの一行は、急ぎ「リデア」の街に向かうのだった。




