ダンジョン⑧
扉をくぐったところは、白で埋め尽くされた大広間であった。
周りが白であるゆえに、その物体は大きく目立っていた。
高さはビル5階くらいか。
正面からの印象だと筋肉質
みたままの「巨人」だ。
違和感として背中に羽が生えている。
「ボスか・・・」
誰が見てもそう思うことだろう。
幸い、部屋に入っただけでは動きはなかった。
「近づくと動き出すパターンかなあ」
前の部屋では視界に入ると襲ってくるようになっていたが、どう見ても今は視界に入っている。
目線が動いていないので、認識しているかどうかはわからない。
反応する条件は、距離なのか音なのか。
そして耐久力はどうなのか。
先ほどと同じ設定なら、楽なんだけど。
見ているだけだとこれ以上情報が集まることはない。
やってみないとわからない。
だからやってみる。
ルミナの思考は非常にシンプルであった。
リオに目で合図して、距離を保って背後に回り召喚を行使する。
今回は火力で勝負の「ZZ」だ。
視界で判断してるなら、無条件で先制攻撃できるだろう。
「いでよZZ!」
魔石に魔力を込めスキルを使用した瞬間、それは動いた。
避ける間もなく、巨大な羽がルミナの胴体を貫いた。
「ルミナアアああああ」
リオの叫びが空間にこだました。
ぼろ雑巾のように飛ばされるルミナ。
攻撃はそこで止まらない。
多数の羽がミサイルのようにルミナの後を追い、貫いていく。
「スキルに反応した?」
リオはそう推察したが、だからといって何が出来るわけでもない。
時間にして3秒程度だったが100枚以上の羽の攻撃がルミナがいた場所に刺さっていた。
巨人は動いていない。羽が動いただけだった。
それだけで戦況が決まってしまった。
もともとリオに手段などなかった。
ルミナに頼りっきりでここまで来て、現状何も手を打てない。
ここまで命がかかっていたとはいえ、「ルミナと一緒なら何とかなるのではないか」と、楽観視していた部分があった。
覚悟していたともいえない。
全てルミナの指示で、ルミナが言う通り行動して、何一つ自分の意見を出してこなかったように思う。
冒険者になる。
なろうとした結果がこれで、初めて仲良くなった友人を見殺しにしてしまった。
甘かった。命がかかるということを舐めていたと今更ながら感じてしまった。
そして打開策も思いつかない。ならば・・・・
「せめて一太刀でも」
リオは覚悟を決めた。ルミナの仇だ。たとえ負けようとも逃げることはできない。
剣を構え、一挙に巨人との距離を詰めるべく、走り出した。
跳躍すれば顔面を叩ききることが出来る。むろん跳躍には危険が伴うが、あの顔面を攻撃しない選択肢はリオにはなかった。
「スキル、「乾坤一擲」」
使用していない期間だけ力をチャージし、全ての力を一撃に込めるリオのスキルだ。
回避行動を考えず最速で駆け抜け、跳躍する。無謀だがそんなことはお構いなしだ。
「シャープネスエディション流剣技、戦塵槌」
リオの軽い筋力を生かした剣技ではなく、体重を預け、威力のみを追求した捨て身技だ。
瞬間、巨人の目が動いたが恐怖と怒りが体を逆に突き動かした。
ズシャアアアアアアアアアア
激しい音とともに、巨人の顔面が切断される。
通じた!
喜んだのもつかの間、巨人の手が動き、拳となってリオに襲い掛かる。
空中であり、技を放ったリオに回避する余裕はなかった。
むろん捨て身で技を放ったのだ。回避を考えるよりは少しでもダメージを与えることをリオは選んだ。
向かってくる拳に向かい、もう一度剣を振るうため無理やり体をひねって体制を整える。
スキル無し、空中という条件では恐らくダメージを与えることなどできないであろう。
それでも、最後まであがきたかった。足掻かずにはいられなかった。
無情な攻撃が迫る。
無謀な攻撃で返す。
その刹那、時が止まる。
白い空間が一瞬にして灰色の空間に塗り替えられる。
リオは動けない。そして巨人もまた動きを止めていた。
「夢咲ちゃんのお願いだから、急いできたけど・・・・間に合ったかな。」
灰色の空間に光り輝く人型の物体が現れる。
その神々しさ、神秘さは間違いなく人ではないものを示していた。
「女神様?」
リオは疑問形ながらやっとの思いで言葉を紡ぐ。
疑問形な理由は
「はぁい。このダンジョンの管理人こと「つばさ」だよ」
自己紹介した女神はなぜかすのこに乗っているのが理解できなかったからだった。
GW中は落ち着くと思うのでもう少し書くことが出来るかもしれません。時間が空いてすみませんでした。




