学園で学ぶ②
寮自体は奇麗だな。間近で見た感想だ。
入り口から入ると受付のようなような窓が見える。
ちょうどマンションの管理人室みたいな感じか。
受付で声をかけると、高齢と思われるお爺さんがでてきて、話は聞いてるよ。と答えてくれる。
話し行くの早いな。
でも案内はしてくれなかった。この世界はあまりそういうことはしないのだろうか。
門限はなく、出入り口は必ずここを通ること。寮の関係者以外を連れ込むときは必ず受付を通すこと。
それがこの寮のルールだった。
わかりましたと頷くと、まっすぐでよろしいとプレートを渡される。
「そこに名前を書いて、扉の前に掛けておくんじゃよ。」
表札ってところか。
ありがとうございますと感謝を述べ、さっそく自分があてがわれた部屋「3階の奥」へと向かった。
当初奥でわかるのかと思ったが、プレートがない部屋は一か所だけだった。
確かに一番奥なのでまぁ間違いはないだろう。
ルミナは扉を開け、部屋に入る。
部屋はワンルームのマンションといった感じか。家具が机とベッドしかないため、結構広く感じる。
ベッドあってよかったわ。
家具なしをちょっとだけ心配していたが、さすがにそういうことはなかった。
とりあえず、ベッドに腰を掛る。
濃い一日だった。エムさんところでゆったりとお湯につかってた日々が懐かしく感じるほど。
当初の目的に近い形で生きる場所が与えられた。
生きる時間が与えられた。
ここからまた自分が自分らしく生きていくために頑張らねばならない。
・・・・不思議だな。元の世界では頑張りたいとは思わなかった。
だが、今そういう気持ちになっている。
元の世界は物質的に満たされていたが、心は満たされてなかったんだな。
ちょっとカッコよく考えてしまったルミナだった。
さてさて、明日からは学園生活が始まるわけだが、
今のうちに問題点及びやることリストを更新していく必要がある。
①気が付いたらゴブリンに食料にされそうになっていた。
解決積みではないけど、もう問題ないな。削除。
②性別、年齢、名前が意図したものと違っている。
これは女神に聞かないと結局わからない。考えても仕方ないため保留。早く男に戻りたい。
③再生スキルは発動したが、勇者スキルが発動しない。
学園で学ぶものに勇者関連があるかもしれない。伝記やどういう力なのか、発動条件など調べていく必要がある。あと、再生スキルの代償確認も。1年の期限がある以上それに向けて計画的にやろう。
④ゴーレムスキルのくずっぷり
最優先ではあるが、練習あるのみ。ゴーレム召喚に関する授業があれば受けるのもありだな。
必ず使いこなしてみせる。血の涙を流したとしても!
さてここからが新規だ。
⑤お金がない
ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああ
よく考えたら生きてくためのお金がねぇええ!
所持品だって、お財布と今着ているこの服と、水着のみ(?)
肝心のお金は、頑張ってお湯に入ってエムさんにもらったお小遣い。「銅貨26枚」
いうなれば現代で2600円くらい。生きていけんだろ・・・・
寝る場所は確保してあるし、おそらく学園に収めるお金は必要ないはず。
これらにお金が必要となったら、明日には追い出されてしまう。
よって、ルミナ!明日からバイト探します。授業とかより大事です。一応朝学園には行くけどね。
⑥誰に召喚された
女神は確かに召喚といった。つまり俺をこの世界に呼んだ奴がいる。その目的は?
なので自分の存在はばれないように、だけど召喚にまつわる情報を集める必要がある。
⑦お友達出来るかなあ
学園生活ですよ!ボッチはやだ!楽しく遊べるといいなあ。
⑧おなかすいたなああ・・・・
・・・・・
・・・
。。。zzz
いつの間にか、ルミナはベッドに横たわり、静かな寝息をたてるのであった。
朝、鐘の音と共に目が覚める。ことはなかった。
ギュウさんに御でこを叩かれ、ルミナは重い瞼を開く。
「時間ですよ。ルミナちゃん。どうやら何もせずに寝ていたようですね。」
ギュウの声にはっと意識が覚醒した。
「思ったより疲れていたみたいで。」
事実その通りなんだろう。ギュウに聞くと寮に案内してから半日程度は立っているとのこと。
爆睡であった。お布団って気持ちいい。
「じゃあ学園に行きましょうか。」
そういうとギュウは指をくるくるっと回し詠唱を始める。
「清浄」
ギュウが言葉を紡ぐと、ルミナの服が洗濯されたみたいにさっぱりとする。
「洗顔」
突然水で顔を洗うような感覚がする。 一気に目が覚めた。
「髪の毛は・・・お櫛を通しましょうか。」
そういうとギュウは櫛を取り出し、金色の髪を整えていく。
なんか気持ちいい。
「身だしなみは自分のためだけじゃなく相手に対しても失礼がないようにするための「儀礼」です。こういったやるべきこと、相手を思うことを学んで下さいね。」
優しく髪を梳きながらギュウはルミナに最初の授業を施すのだった。
では出発しましょう。
と、ギュウに再び手を握られ、ルミナは学び舎へと向かう。
あ、部屋を出るときに一応鍵をしました。先生がそもそも無警戒で入ってきたのも実はやばいことだろ気が付いた。鍵する癖をつけよう。
あと、プレートは帰ってきてからつけることにする。
そのほか、忘れ物は・・・・そもそも持ち物がないか。
水着だけおいてくのも何なので、携帯しておくことにした。
日の光が明るい。舗装された石畳に照り返される日光。
乾いた空気に、程よい風があたる。良い気候だ。
学園は思ったよりは広そうだ。
そう感じたのは看板数の多さだ。
学園内部は彼方こちらに看板が表示してあり、行き先を明示してくれる。
観光地を彷彿とさせる光景である。
ルミナは目ざとく図書館の位置を把握しておく。知識を得るには本が一番だ。
学園ならあるはずと思ったルミナの考えは正しかった。
大体の場所を頭に入れていると、
「ルミナちゃんが通う組は中央校舎になるよ。」
と、教えてくれた。
目的はそこらしい。
「まず最初に朝礼で私が一言二言話をしてから、みんな自分の勉強に向かうことになってるんだよ。」
ほんとに放任主義だ。学園だけど学ばない生徒はどんどんついていけなくなる奴だな。
「ギュウ先生。その・・朝礼とかいうやつのあとですが、学園から出ても問題ないでしょうか?」
どうしてだい?と聞かれたので素直に答えることにした。
「お金がないんです。生活するための。働かないとご飯もろくに食べれなくなります。」
すでに食べれてないんですけどね。おなかがキュウとなる。働く場所を探すために学園から出ないといけないのだ。
「学園を出ることは問題ないんだけど。それなら、いいところがあるよ。学園内でね。」
と、ギュウは朝礼が終わった後に案内してあげると約束してくれた。
手回しがいいな。助かるけど掌の上で踊らされてる気分がする。
出来る先生なのか、予め読まれていたのか。
・・・・・まぁ、悩んでも答え出ない。
労せず案件が一つ片付いたことにほっとするルミナであった。
中央校舎まできてみたものの、ここまでくる間に、生徒らしい人とはほとんど会わなかった。
ほんとに学園なのか?と疑問がよぎったがすぐ解消された。
玄関より入ってすぐの大きな扉をくぐると、それこそ大学の教室、あるいはコンサート会場のような大広間となっており、客席・・・いや学席には多くの子供たちが座っていた。その数ざっと300人くらい・・か?
つまり、学生はみんなすでに登校していたのである。
「空いてる席へ行きなさい。」
ギュウからそういわれたルミナは、空いている学席を探すため視線を向ける。
・・・・・・なんかみんなこっちを見てる気がするんですけど。
少なくてもルミナの視界範囲の学生はルミナのほうを凝視している。
ひいぃいいい。とりあえず、一番隅っこの席がたまたま空いていたので、そこで小さくなりつつ席に着く。
「あの子、ギュウ先生と一緒に来たわよ。どういうこなのかしら。」
「この時期に入ってくるなんてなんなのかしら。」
などと、いろんな話が聞こえてくる。
注目を浴びているのは間違いなさそうだ。あれ、何かやらかしたん?
「あー今日も元気な姿を見せてくれたことを嬉しく思う。」
ギュウ先生が壇上に立ち、話を始めると周りの学生は雑談をやめギュウの話を聴講する。
ギュウの話の内容は一般的な挨拶、学園の行事の説明であった。
「と、いうわで準備しておくように。それと最後になるが」
ギュウはそういいながらルミナのほうへ視線をやる。
「私と一緒に入ってきたルミナ君は、今日からこの組の仲間になる。紳士淑女諸君に改めていう必要はないと思うが、くれぐれも粗相がないようにお願いすることとする。」
ルミナ君挨拶を、と促される。ぇえええまじっすうううかあああ。
再び視線が刺さる。ぐににいに。これは逃げられないな。
観念したようにゆっくりと立ち上がり、中央のほうへと体を向ける。
「ご・・ご説明賜りました。ルミナです。何分常識について不勉強なところがあり、皆様にご迷惑をかけすることもあるとございますが、そういったことを含め学園で学びたいと考えております。よろしくお願いいたします。」
丁寧語尊敬語とか文法とか緊張のあまりいろいろなってなかったが、それでも今後の生活を考え常識がないことをアピールすることに成功する。したと思う。
これで色々失敗しても、「あ、常識不勉強なんで」と土下座技で乗り切れるだろう。
ただ、ルミナの説明を聞いて一部の生徒が騒めき立つ。
内容はよく聞こえないが・・・・・・・何か失敗した?・・・わからぬぅうう。
「では、朝礼はここまでとする。各自行動してもよいですよ。あ、ルミナ君はこちらに来るように。」
あ、バイトのことかとルミナは思い、席を立つ。
「おいっ。ギュウ先生に直接指導してもらえるのか?お前」
横にいたお男子生徒が怒鳴ってきた。
その声に周囲から同調する学生が席から立ち上がる。
な・・なに・・この展開。
「ち・・違いますよ。働く場所の紹介だと思います。指導とかは聞いてないですよ。」
周囲の圧迫に思わず本当のことを言ってしまう。言っても問題ないんだけど。
「は・・はたらく・・?」
周囲がまたざわっとする。あれ、なんかまたミスった?
「ルミナ君には働く場所を紹介する約束をしているだけですよ。これから向かわねばなりません。皆さんも自分の課題に向かってください。」
そうやって人込みをかき分け、ルミナのところまで来たギュウはルミナの手をつかみルミナを連れ出す。
連れ出された後の光景・・・ざわつく学生たちを横目に、
何かやらかしたんじゃなかろうか。
常識がないことがこんなにも不安になるのだな、とつくづく思い知ったルミナであった。




