異世界2日目①
がたん・・がたんごろごろ
馬車に揺られルミナはちょっとご機嫌斜めであった。
幌のかかった馬車は、外が見えなくて少々寂しい。
いや、見えないのは仕方ないのだ。それはこちらが要求したことだから。
少なくても外から見られるよりはいい!
お湯にちゃぷちゃぷと浸かりながら馬車に乗る姿がとても情けなくて涙が出る。
移動中もこんな仕打ちになるとは誰が考えただろうか。
少なくてもルミナが読んだラノベの中に、そんな主人公やわき役たちがいたことはなかった。
「しかもお風呂じゃなくて、俺の出汁をとってるってことだろ・・・。」
動かなくていいし、町まで連れて行ってくれるんだから我儘は言えない。
だがこの扱いは・・・なんとも・・・。
将来元の世界に戻った時に自叙伝を書くことがあったとしても、この部分は削除だな。
ちょっぴり何かを失ってしまったルミナであった。
そんなルミナを気にするでもなくカラは今日も元気に馬車の横を並列に歩いていた。
ちなみに、この馬車を引いているのはロドルスという外見はカバそっくりな草食の魔物だ。
歩行速度はカバらしくなく、結構早い。ただ、足が短い分回転数で補っているせいか、結構砂埃が目立つ。
「ほらそんなにむくれないで。ルミナちゃんの要求通り、外からばれないようには守ってるでしょ。」
にっこり笑顔なのは色々お世話になっているエムさん。どこか面白がっている節が垣間見える。
「だけどさぁエムさん。移動中までやらなくてもいいと思うんだけど。」
「時間は有限なんだ。できることはできるうちにやっておくべきことだとは思わないかい?」
エムサンはさも当然だと言わんばかりに自分の魔力空間から次の釜を取り出す。
次はこっちだよーっと言う目線だ。
はいはい、わかりましたよっと。
ルミナはお湯から上がり、水着を着たまま次のお湯へと移動する。
ちなみにこの水着もエムさんが持っていた。・・・・解せぬ。
お湯も湯当たりしない温めの状態で、まぁ言ってみれば半身浴してるみたいなものだ(と言い聞かせる)
「ところでこのお湯どうするの?一応使い先は聞いときたいんだけど・・・いろいろ覚悟を決める意味でも。」
キャラの残り湯なんてどこかのソシャゲで販売してたけど、あんなのコードがなかったら誰も買わないぞ、普通は・・・いや普通の人は。
うんとね・・・エムはちょっと考えながら、次のように答える
「料理、魔物を虜にする薬品・・くらいかな。今思いつくのは。」
やり方次第できっと化けると思うんだよね。とエムは言う。
ふーんそんなものなのか。残り湯コレクターとかじゃなくてよかったけど。
一応はホッとする。が、料理に使うということは人様の口に入ることだということを、あまり考えないようにするルミナであった。
「あとそのスキル。すごいね。異空間に物品しまえるやつ。」
エムさんのほうがよっぽど主人公らしいスキルを持っている。うらやましぃ。
「このスキルをもって生まれてきたことは、今では幸運だったとおもえるけどね。最初は色々大変だったんだよ。」
強力なスキルというのはそれだけで、いろんな問題が付いてきてしまうんだ。
と、苦笑いしながらエムさんは答えた。
これは他人ごとではないな。いろいろ気を付けないと。
「カラとかいるし、モンスター使いっておっしゃってたので、てっきりモンスターをテイム・・従わせるスキルを持ってるんだと思ってました。」
「従わせなくても、ちゃんとお話ししてちゃんと協力関係を結べば、親しくできるものさ。もちろん全てじゃないけどね。」
スキルを使う必要はないとのこと。無論そういう無理やり従わせるスキルも存在するらしい。
スキルこわっ!
人を無理やり従わせるとかのもきっとあるんだろーかとか想像すると、この世界・・・やばいな。
でもねっと、エムは、
「力っていうのは使い方次第であって、決してそれ自体を卑下するものじゃない。スキルが良い悪いじゃない。使い方が良いか悪いかだけなんだよ。だから自分が納得できるように行動を心がけることが重要なんだよ。」
笑顔でそう言った。
釜のお代わりを準備して。
解せぬ。




