私の全て
今回は華の視点からをメインとして書いてあります。言葉がおかしかったら指摘してください。
二〇九五年三月一日に私、第三世代のアンドロイドは製造されました。
目を覚ました部屋では多くの科学者がいて、身体に以上がないかを隅々まで確認し、全ての肯定をクリアした個体は右肩に製造番号を打ち込まれます。
次の日は研究所をでて、一日歩き続けました。理由はデータを正しく保存できるかを確認するためです。
それもクリアすると、今度は契約する家族と面会をします。その時初めて、蓮二さんのお父様とお母様にお会いしました。
お父様は私をとても綺麗だと褒めてくれました。お母様は優しそうな子だと言ってくれました。
アンドロイドである私はお二人の心拍や体温データを読み取り、気分が舞い上がっているのを確認し、このような時“ありがとうございます”ということをデータで知っていたので言いました。
二人はお母様のお腹をさすりながら、
「この子に決定だな。きっとなついてくれるだろう」
「ええ、この子もきっと貴女を気にいるわ」
と、言っていました。
その時の二人の顔を見たとき、私はこのような時はどうすべきか分かりませんでした。データになかったのです。
それから私はこの時の二人の思考や感情を調べることに努めました。しかし、どのデータを調べても分かりませんでした。
三月三一日、契約者のお子様が生まれるとのことで私は出産に立ち会いました。お母様はとても苦しそうにされ、心拍もかなり上がっていました。お父様は仕事を切り上げて来られたらしく、心拍と体温共に高く、落ち着いてからも産まれるまで病室の前を動き回っていました。
午後三時二一分四六秒、無事に男の子が産まれました。お母様もお父様も泣きながら息子さんの小さな手を握っていました。
「よく頑張ったな。華蓮!」
「この子が頑張ったんですよ。可愛いですね。雄二郎さんにそっくりです」
「この子の名前、決めてるんですか?」
「ああ、華蓮の“蓮”と俺の“二”を組み合わせて蓮二だ。ありきたりかな?」
「蓮二。ええ、いいと思いますよ」
息子さんの名前は“橘 蓮二”になりました。
少しすると、お父様が息子さんを抱いて私のところへ来ました。息子さんは抱えられてからずっと泣いていました。
「ほら、今日から君もこの子を守る家族なんだ。抱いてみるか?」
「いえ、私はまだ子どもを手に抱えたことがないので抱いた時のデータを加えてから」
「そんなのは経験しながら覚えればいいんだ。俺だって今初めて抱いたんだぞ。ほら」
私はお父様に無理やり息子さんを渡され、お父様の抱えていたやり方を見よう見まねでやることになりました。
お父様が抱いていた時は泣いていたのですが、私が抱えた瞬間に泣き止んだのです。
「ほら、君の方が息子も良いようだよ。そういえば、君の名前をまだ聞いてなかったね」
私に名前なんてなかったので、製造番号を言いました。お父様はそれならしょうがないと言いましたが、お母様は違いました。
「貴女も女の子なんだから可愛い名前があった方がいいわ。そうだ“華”なんてどうかしら。私の名前からとったんだけど」
「契約者様から名前をいただくわけには」
「契約ではないわ。私たちは家族。家族なんだから、名前で呼び合わなきゃ。貴女の名前は“華”よ」
初めて会った日からお母様はお父様以上に私を可愛がってくれました。
「貴女も今日、名前がついたんだから今日が貴女の誕生日ね。蓮二と同じ誕生日よ。そうだ、華。貴女、私たちのことを様付けで呼ぶけどこの子は呼び捨てでいいわよ。貴女はお姉ちゃんみたいな存在なんだから」
お姉ちゃん、姉のようなとは意味が分からなかったですし、何より呼び捨ては出来ないと言うと、「じゃあ、さん付け、若しくは君付けでいいわ」
そして私は蓮二さんと呼ばせていただくようになりました。
それから私は蓮二さんのお世話係として毎日、付き添いました。お母様も蓮二さんが五歳になる頃まで毎日一緒にいました。ですが、その頃からお爺様とお婆様の介護が忙しくなり、私1人で蓮二さんの生活のお手伝いをしました。
蓮二さんは毎日私の手を引っ張って未来さんと遊ぶため公園に行きました。私は蓮二が遊んでいる間の過ごし方が分からず、公園の隅で蓮二さんを見ていることしか出来ませんでした。
「ねぇ、華ちゃん。一緒に遊ばない?」
お母様から見守ることを命令されていたので共に遊ぶことは出来ませんでした。
蓮二さんはいつも断る私に聞いて、ダメだと分かるととてもうなだれていつしか聞いてくることはなくなりました。
何故、私を誘ってきたのか理解することが出来なかった私はデータベースを調べました。しかし、やはり理解することは出来ませんでした。
小学校に入学されてから蓮二さんは私に話しかけることが少なくなりました。
小学校の友人と遊ぶことも増え、私と話す時間は朝の挨拶と帰って来た時の挨拶、そして最低限必要な命令のみになりました。
「蓮二と仲良くしてる?」
お母様が帰って来られるとたまに、そのような話になりました。会話は昔よりも減っているが特に問題は起きていないと答えました。
「華、貴女はあの子と喋りたくないの?」
私はその質問にすぐに答えることが出来ませんでした。感情なんてないはずなのに、それを聞かれた時なんて返答すれば正しいのか分からなかったのです。
「いつか、あの子と仲良く笑って話せたらいいのにね」
そして、去年の大型アップデートの知らせが来ました。
「必要ないだろ。あと、一年で契約は終わりなんだから」と、蓮二さんは言いました。
もちろん、私も内容の知らせが来た時に全て読み込んでいたので必要性はないと理解できました。
「華、記憶が無くなるって理解してる?」
「はい。記憶データの消去は契約者のプライバシーを守るためです。」
「違うわ。貴方は蓮二のこと忘れてもいいの? それに感情データがあればもっといろいろ、あの子のことを知ることができるかもしれないわよ」
「と、言われましてもアップデートはしないとお父様と蓮二さんは決定されました。それにアップデート関係無く記憶データは契約が切れた直後には消えるので」
「あの二人はいいの。貴女の気持ちを聞いてるの」
その時の私には、感情データはないので私の気持ちと言われてもよく分かりませんでした。
「今の貴女に感情がないなんて思わないわ。だって、分からないことがあったら、データベース調べてるんでしょ。だったら、今の気持ちがなんなのか分からないだけよ」
分からないだけ。そう言われて私は今の自分の気持ちを知りたくなってしまいました。おかしいですよね。感情や好奇心なんてあるはずないのに。
「どうするの。アップデートする?」
「私はお母様に言われたようにお父様が、お母様が、そして蓮二さんがつくる家族というコミュニティに私が一緒にいていいのかデータにはないのでわかりません。なので私は知りたいと思います」
そして私はお母様に力をお借りし、お父様と蓮二さんにばれないようにアップデートしました。
アップデートしてから、蓮二さんとの会話でバレないようにするのは大変でした。アップデートしてから顔がハッキリ感情に寄った顔になってしまうのでお母様とポーカーフェースでいる練習も何度かしました。
お母様が喜ぶことが分かって、お父様との会話が楽しいのが分かって、私は嬉しかったです。
でも、蓮二さんといつもの挨拶だけなのがずっと悲しかった。
「あの子にバレてないみたいだけど、あと一ヶ月もしたら契約が切れるわ。そろそろ、いいんじゃないかしら」
「いいとは?」
「あの子に自分から聞きたいこと、自分が知りたいこと、あの子に言っておきたいこと、沢山あるでしょ」
「でも、勝手にアップデートしたこと一年近く隠して、怒られてしまいます。これ以上、嫌われたら私……」
「大丈夫。きっと蓮二も貴女を知りたいって思っているはずよ。今更かもしれないけど、今だから喋れることってあると思うの。私も最後にはちゃんと言って謝るわ。もちろん、お父さんにもね」
「そして私は蓮二さんに話しかけることにしました」
「・・・・・・」
きっと、華は一年近く、僕の事をいや、出会ってからずっと考えていたんだ。
なんだ、よっぽど僕より人間らしいじゃないか。大切だと想った僕のことを一生懸命考えて、僕に嫌われるかもと思っても勇気をだして言葉をかけたんだ。
だったら、僕がするべきことはもう決まってる。
「あの…… 蓮二さん?」
「僕もずっと聞きたかった。華が僕をどう思っていたのか。僕と華は只のヒトとロボットってだけの関係なのかってことを。でも、違ったんだ。僕が勝手に勘違いして諦めていたから」
「そんなことはありません!」
「いや、僕が悪いんだ。だからあと二週間。少ないけど、沢山話そう。出来るだけ、一緒に過ごそう。今までムダにした時間を取り返すために」
華は笑っているのか、泣いているのか分からない顔で、それでも嬉しそうに、「はい。蓮二さん」と返事した。




