第百四十一話 眠れる星のまなざし
「……あの、大丈夫ですか? 起きてます?」
トキオがそっと声をかけた相手は――ギンガ荘の古株、カノープス。
座椅子にゆったりと腰かけ、まるで“宇宙そのもの”のような静けさで眠っている……ように見えた。
「……寝てる?」
「いや、起きてるっぽい……ような……」
ヒカリ荘の面々がざわつく中、カノープスはゆっくりと目を開いた。
「ふぉ……よく来たのぅ、太陽のこどもたちよ」
「“ふぉ”って言った!? レア語尾すぎるだろ!」とトキオが反射ツッコミ。
「カノープスさん、星のことを教えてください!」とミラが声を弾ませると、
カノープスは微笑み、静かに語りはじめた。
「わしら恒星は、燃えている。己の命を削り、ただ輝く。
だがな……いずれ、その光も尽きる。超新星となるか、白色矮星となるか……それは、その星の“生き方”次第じゃ」
「なるほど、“寿命”の話か……」とサンが少し真面目な顔をする。
「星は、燃え尽きるために生まれてきた。
だが、“誰かを照らした”なら、その生は永遠となる。……わしは、そう信じておる」
「……か、かっこいい!」とルナが息をのんだ。
「で、でた名言マスター……!」
結局カノープスは、話の途中で再びウトウトしはじめた。
「寝た!!」
「賢者は眠る。そしてまた、語る。その繰り返しじゃよ……」
寝言のような声が、静かに宇宙に溶けていった。
静けさの中に、確かな知恵が宿る――そんなひとときだった。




