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ネオス・パンゲア怪異ファイル 〜平凡な能力者、怪異と悪意をド根性と友情パワーでぶっ飛ばす〜  作者: 芦田メガネ
第1章 アジア編

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謹慎、或いは

翌日、起きてから身支度を整え、冬美のいる医務室へと向かった。自動ドアを潜り中に入ると冬美は体を起こして真衣と談笑していた。

「おはよう、2人とも」

「あ、先輩!おはようございます!」

「おはようございます!」

「冬美、体調はどうだ?」

「おかげさまですこぶる元気ッス!すぐにでも任務に行けますよ!」

「そうかそうか。でも、無理はするなよ」

「わかってますよ!」

「とにかく、元気になって良かったよ。安心した」


俺が至らぬばかりに冬美に無理をさせてしまったからな。元気そうな姿を見て本当に安心した。もう、あんなことが起こらないようにしなければ。そう思っていたら廻原も部屋に入ってきた。

「お、コースケも来てたか。おはよう」

「おっす」

「「おはようございます!」」


廻原はちゃっかり丸椅子に腰をかける。

「元気そうでよかったよ。もう帰れそう?」

「はい!もうバッチリです!」

「よかったよかった。安心したよ」




俺たちは朝食を済ませた後、帰るための準備をはじめる。ヘリコプターの用意ができる前に俺たちはガイドをしてくれたラクパさんに挨拶しに行った。

「ラクパさん、おはようございます」

「おや、みなさん、おはようございます。帰られるのですか?」

「えぇ、冬美も回復したので。本当にお世話になりました」

「こちらこそ、イエティを倒していただき、本当に助かりました。ありがとうございました」

「またなにかありましたら、いつでもご連絡ください」

「そうさせていただきます。ぜひ、プライベートでもお越しください。案内しますよ」

「あはは、ありがとうございます。ぜひ。ではまた」

「はい。お気をつけて」


正直、もう山はゴリゴリだが、口には出さないでおこう。ラクパさんとガッチリと握手を交わし、俺たちはエベレストから去った。ヘリコプターから見えるエベレストの景色は相変わらず雄大で神秘的だった。




ヘリコプターで移動してる最中、廻原は冬美に問いかけた。

「そういえば、フユミちゃんがマイちゃんに昔イジメから助けて貰ったって昨日言ってたけど、なにがあったの?」

「あぁ、それはですね───」



冬美は幼い頃の辛い記憶を話してくれた。毒手という超能力を誤解され酷い虐めを受けたこと、それを真衣が必死に守ってくれたこと、本当の自分を受け入れてくれたこと・・・。この2人には友人関係以上の特別な絆があるように思えた。


「だから、アタシは強くなりたかったンスよ。昔は恥ずかしくてマイちゃんに面と向かって言えなかったけど、今は言える。アタシはマイちゃんみたいになりたかった。本当の意味で強い人に」

「ちょっと、冬美ちゃん・・・そんなことストレートに言われたら恥ずかしいよ」

「いいじゃん、マイちゃん!アタシは本当にマイちゃんに憧れてるんだよ。ずっとそうだった。もっと頑張るからね」

「もう・・・」


そんな2人の微笑ましいやり取りを眺めていると、隣に居る廻原が小声で話しかけてきた。

「なぁ、コースケ」

「ん?」

「尊いな・・・」

「あぁ、尊いねぇ・・・」

「百合の花が咲き乱れておりますなぁ」

「だな。俺たちが間に入るのは野暮ってもんだ・・・」

「だね」


廻原のせいで変な気を起こしてしまっていたが、今度は廻原のおかげでそれを払拭できた。そして、改めて思った。この2人がいつまでも幸せでいさせるためにも、俺たちがしっかり守り、育てなければならない、と。














「お前ら、1ヶ月謹慎な」

「はァ!?」


ニイガタ支部に到着した途端、いきなり早川上官からそう告げられた。

「ちょっ、待ってくださいよ上官!いきなりなんなんですか!?」

「そ、そーですよ!俺たちなにか規則違反しましたか!?」



早川上官は大きくため息をついてから答えた。

「別に規則違反はしていない。だがな、たるんでるいんだ、お前らは」

「たるんでいる?」

「あぁ。お前ら、イエティがいたあの洞窟、なぜ神域だと気付かなかった?」

「そ、それは・・・」

「神域の秘匿性がイエティの信仰吸収状態により損なわれていた、その可能性に目を向けなかった。現地民でも知らない、地図にもない土地をイエティとともに発生した土地だと決めつけた。違うか?」



完全に図星だ。ぐうの音も出ない。

「これらの初歩的な視点に気付けないなんて言語道断だ。新人2人は仕方ないにしろ、お前らこの仕事を3年もやってるだろ?なぜ気付かない?」

「ぐう・・・」

「それに、なんだあのザマは。武縄、お前は周りをよく確認もせずに真衣を助けに向かって、イエティに奇襲されて討伐が終わるまで気絶。廻原はまだマシだが、2回のダウン。」

「「ぐう・・・」」


ここまでズバズバ痛いところを突かれると逆にぐうの音が出てくる。しかし、悪いのは全て自分だ。

「こんな失態を犯すなんてな・・・これがたるんでいるんじゃなければなんなんだ?」

「・・・返す言葉もございません」

「はァ・・・というわけで、お前ら2人は1ヶ月謹慎だ。しっかり頭を冷やして出直して来いッ!」

「し、しかし、その間後輩2人はどうするんです?」

「安心しろ。私が自ら現場に出てみっちり指導してやる。わかったなら、さっさと帰れッ!」

「・・・分かりました。申し訳ございませんでした」

「しっかり反省して出直して来ます」



俺たちは荷物をまとめて職場を後にした。

「上官の言う通りだな。完全にたるんでた、俺たち」

「全くだ。だけど、この1ヶ月という長い謹慎。もしかして・・・」

「おそらく、というか絶対、修行してさらなる力を身につけろってことなんだろ?」








先輩方が謹慎を喰らって事務所を出た後、アタシは早川上官に問いかけた。

「上官、いいんですか?1ヶ月も謹慎させて」

「ん?あぁ、謹慎ってのは名目上の話。本当の目的は別にある」

「別の目的?」

「そうだ。要は修行して来いってことだ。今よりももっと強くさせる。アイツらなら自分たちでできるはずだからな」

「それならそうと言わなくて良かったんですか?」


すると、上官はいたずらっぽく笑って答えた。

「大丈夫だ。アイツらはとびきりの負けず嫌いだ。言われっぱなしで戻ってくるようなタマじゃない。出ていく時のアイツらの目を見なかったか?ものすごくギラついた目をしていた。心配しなくても、私の意図をちゃんと読み取ってくれたはずだ」


上官はなんだかんだ先輩方を信頼しているようだ。もちろん、それはアタシらも変わらない。


「とにかく、2人ともお疲れ様だったな。本当によく頑張ってくれた。今日は書類仕事だけしたら帰っていいぞ。任務、もとい修行は明日からだ。みっちり鍛えるから覚悟しとけよ!」

「は、はいッ!」

「了解しました!」












帰り道、1人になったタイミングで俺はある人物に電話をかけた。

「もしもし?」

「もしもし、俺だ」

「あぁ、公介くん、どうしたんだい?」

「早速で悪いが、実は作って欲しいものがある」

「はぁ・・・君、車のローンも残ってるのに、またなにか僕に作らせようとしてるのかい?」

「それは、その、すまない。だけど、急を要するんだ。お前にしか頼めない。な、頼むよ」

「・・・・仕方ない、わかったよ。引き受ける。で?どんなのを作って欲しいんだい?」

「それはだな・・・」

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