第98話 殺人鬼は功績を振り返る
テクノニカとの連携は僕の功績とされているが、未だに納得がいっていない。
僕はただ拉致されていただけだ。
むしろ、円滑に終わりそうだった場面で異議を唱えた。
危うくロンやエマや伯爵の努力を台無しにするところだった。
その辺りをノルティアスに帰還してから報告したが、やはり僕の功績となっていた。
あれから地位は少し上がったものの、書類上の肩書きのみである。
外交官としての仕事に変化があるかと問われれば、別に何もないと言う他なかった。
ゴブリンの死体の仕分けをしていると、開かれた扉からモーター音がした。
ラジコンのような小型車に乗ってやってきたのは、白と赤を基調としたロボットだ。
それは僕とロンの前で停止し、小型車から降りて敬礼をする。
『こちらサポートAIのニムです。負傷者の治療に参りました』
「すみませんが必要ありません」
『負傷者の治療が私の任務です。お任せください』
サポートAIのニムは僕の返答を流すと、無理やり座らせる。
そして、内蔵された治療道具による処置を始めた。
確かに僕は満身創痍だが、不死身な上に再生能力も持っている。
どんな傷でも放っておけば治るのだ。
それでもニムはしきりに治療をしようとする。
逆らっても意味がないと知っているので、僕は大人しくすることにした。
無傷のロンは茶化すように笑う。
「すっかり人気者だな」
「僕はよく負傷しますからね」
縫合されていく腕を見て、小さく肩をすくめる。
サポートAIニムは、一年ほど前に生み出された新たな人工知能だ。
以前まではテクノニカに残る規約により、人工知能の増設は禁止事項だった。
しかしノルティアスの傘下に入るにあたり、その制限が解除された。
以降、今後の運営に必要な人工知能が製作されるようになった。
そうして生み出された第一号がニムである。
原則的にノルティアス専属のAIで、様々な機械で外交官の任務を補助するのが目的だ。
今はウェアとの二人三脚で動くことが多いが、いずれは単独でも十分な働きをしてくれるだろう。
現在はそのための学習期間と言える。
(あの時の決断がニムの誕生に繋がったのか……)
欠損部位を繋ぎ合わせるニムを見て、僕はふと思う。
当時はそんなつもりなどなかった。
あの瞬間の感情を言葉にするのは未だに難しい。
ただ、決して悪い展開ではなかったと思う。
数分後、ニムの手によって僕の傷は塞がれた。
一部の処置は粗かったが、別に困るものでもない。
待機場所に帰還するニムに僕は礼を言った。




