第96話 殺人鬼は外交官を続ける
僕は屍の山に立っていた。
足元に積み重ねられているのは、すべてがゴブリンである。
様々な種族を交えた繁殖で生まれた強化種だ。
ここはゴブリンの国の首都である。
現在、ノルティアスが侵略中で、僕はこの区画を任されたのだった。
ゴブリン達はなかなかの強敵だったが、僕を死に至らしめるほどではなかった。
(この国とは因縁がある。これっきりにしたいものだ)
ゴブリンと初めて遭遇したのが二年前。
吸血鬼と共同任務に当たっている時に強襲されて、死にかけながらも撃退に成功した。
ところが巡回していたテクノニカの捕獲ロボットに拉致されて、その後は人工知能の指令でゴブリンの占拠する施設の奪還に向かった。
個人的な印象として、何かと争うことの多い種族である。
ただし、もうゴブリンに臆することはない。
当時は格上だったが、今や力関係は逆転していた。
僕だけでも大勢のゴブリンを殺せるようになっている。
(それなりに成長しているようだ)
屍の山に腰かけていると、少し遠くからロンが現れた。
彼は全身の九割以上が竜に変貌していた。
そして血みどろである。
数多のゴブリンを爪で引き裂いてきたのだろう。
竜人形態を解いた彼は気さくに挨拶をする。
「よう、こっちはどうだ?」
「ちょうど制圧が完了したところです」
「さすがだな。相変わらず仕事が早い」
「満身創痍ですけどね」
僕は千切れた片腕と割れた首筋を晒してみせる。
首を前に振ると、額の弾痕から脳漿がこぼれた。
マッシュルーム上に潰れた弾も転がり出る。
(不死身の肉体にも慣れてしまったな)
基礎能力が人間レベルである僕は、白兵戦になると不利になる。
このように傷だらけになってしまうのだ。
しかし、テクノニカの一件を経て、種族的な殺人鬼に変容しているので問題ない。
人間でありながら、超常的な生命力を獲得していた。
どれだけ負傷しようと死ななくなったのだ。
加えてリミッターの解除もこの二年でさらに洗練している。
肉体への負荷を抑えながら使えるようになり、そこを気にしなければ威力はさらに増大する。
不死身と怪力が僕の武器となった。
これで持久戦に持ち込むと、生物最強と謳われる竜さえ倒せてしまう。
実際に経験したので間違いない。
ノルティアス内には幾人もの殺人鬼がいるが、これだけの不死性を持つ者は皆無らしい。
不死身の外交官。
それが僕の通称となりつつあった。




