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破滅した人類は希少資源です  作者: 結城 からく


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第60話 殺人鬼は闇夜に紛れる

 およそ四時間後。

 僕は施設の外周部の端にいた。

 伸びきった草むらの中に潜んで荷物を整理している。

 首輪からウェアの音声が発せられる。


「そろそろ侵入してください」


「はい。施設内部を目指します」


 急かされずとも向かうつもりだった。

 施設の周囲の探索は終わり、ゴブリン達の巡回ルートも確認できたからだ。

 完璧ではないものの、ひとまず侵入には困らない。

 あまり時間をかけるとウェアに殺されそうだった。


 僕は中腰で歩きながら施設に近付いていく。

 周囲には無数の大きなコンテナが乱雑に置かれていた。

 荷物置きや即席の部屋として使われているらしい。

 内部から寝息の聞こえるコンテナも少なくなかった。


(ゴブリンだらけだな)


 僕はコンテナの陰から陰へと進む。

 各所に設置された監視カメラが機能していないのが幸いだった。

 それらが起動する時は、すなわち人工知能が操作するタイミングである。

 高度な文明によって築かれた施設も、ゴブリン達からすればただの建物に過ぎないのだった。


 施設に近付く途中、見張りのゴブリンを見つけた。

 焚火のそばに座って居眠りしている。

 たまに目覚めては、慌てたように周囲を睨んでいた。

 手には石斧と古いリボルバーの拳銃を持っている。

 装備からしてあまり位は高くないのだろう。


(油断しているな。あれなら殺せそうだ)


 そう判断した僕は、ゴブリンが目を閉じた瞬間に襲いかかった。

 背後から掴みかかって引き倒すと、首にナイフを突き刺して殺害する。

 一瞬だけ抵抗されたが、あまり物音は立たなかった。

 周りには見つかっていないようだ。


 僕はゴブリンの死体から拳銃を奪って腰のベルトに挟む。


(肉体構造は人間と大差ない。急所を狙えば楽に殺せる)


 その後も次々とゴブリンを仕留めていく。

 眠そうな個体も、警戒している個体も特に苦戦することはなかった。

 この半年間のトレーニングで、僕の筋力は大幅に上がっている。

 吸血鬼を凌駕するゴブリンだろうと、不意さえ突けば負けることはない。


 施設の裏口に近付いた僕はそこで足を止める。

 扉の前には、両手に炎を持つゴブリンが立っていた。

 魔術を得意とする個体らしい。


 そのゴブリンは、険しい顔をしてこちらに近付いてくる。

 僕の姿はコンテナの陰なので見えないはずだが、殺気を放って距離を詰めてきた。


(察知されたのか?)


 魔術を使える個体なので、何らかの索敵手段を持っているのかもしれない。

 不用意に近付きすぎたのが原因だろう。


 すぐさま先制攻撃を仕掛けたいが、銃は音が大きい。

 増援が来ると厄介なのでここでは使えない。


 ゴブリンはすぐそこまで来ていた。

 僅かな思考の末、僕はナイフを手に決意する。


(あれをやるか)


 次の瞬間、僕はコンテナの陰から飛び出した。

 叫ぼうとするゴブリンに向かってナイフを投擲する。

 ナイフは躱されたが、叫びを妨害できた。

 その間に駆け寄る僕に対し、ゴブリンは炎に包まれた手をぶつけてこようとする。


 僕は足腰に力を入れてそれより速く動いた。

 腰を落として踏み込み、拳を握り締める。

 捻りを加えながら全身の力を伝達させて、拳をゴブリンの腹に打ち込んだ。


 重い衝撃音が鳴り響き、肋骨を粉砕した。

 内臓を掻き混ぜる音も伝わる。

 拳は皮膚を裂いて肉を抉り、生温かい感触を経て背中まで突き抜けた。


 貫通した腕を引き抜くと、ゴブリンは吐血する。

 両手の炎を消して、そのまま膝から崩れ落ちてしまった。

 完全に息絶えている。


 僕は近くにあった水たまりで腕を洗った。

 少しでも臭いを取るためだ。

 あまり効果はないかもしれないが、嗅覚で居場所を特定されたくない。


 血肉で汚れた腕は、だらりと脱力していた。

 水で洗う間、神経を刺すような痛みが走るが、それも徐々に消えていく。


(上手く成功したな)


 今の一撃は、僕が半年間で身に付けた技だ。

 瞬間的に筋肉のリミッターを外して、強烈な攻撃を放つのだ。

 人体構造を無視する上、負荷が大きすぎるあまり、反動で骨や筋肉を破損するが再生するので問題ない。


 意識の混乱の他に得た必殺技だ。

 決して過信できないものの、心強い武器であった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第60話到達、おめでとうございます! ダニエル、着実に強くなってますね。 [気になる点] それでもなお、ウェアの意思から自由になるのは時間を要しそう。 強引にスカウトされた経緯を考える…
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