13 ユニコーン号の力
「勇者オーラロケットパンチ!!」
俺は自らの拳に闘気を載せて次々に撃ち出していく。
しかし、闘牛士戦闘員たちはマントをはためかせながら華麗に飛んでいく闘気の攻撃をかわしていく。
さらに全員が流れるように俺に近づきながらサーベルでの剣戟を打ち込んでくる。
たかが戦闘員と侮っていたが、一人一人が最初に戦ったコボルド男以上の身のこなしをしており、さらに連携が抜群にうまい!
ある程度ダメージを与えても、なんと後方にいる『闘牛士ヒーラー』がどんどん怪我を治していっているよ!!
これは今のままではじり貧だ!!
『今です!今こそ準備していたユニコーン号を召喚するときです!!』
そうだ!ナビの助言に従って、ユニコーン号の召喚の準備をしていたのだった。
白鳥さん号もなんだかんだ言って性能そのものはかなり良かったのだから、ユニコーン号も期待できそうだ!!
「カモン!!ユニコーン号!!」
俺が叫ぶと、エンジンの爆音とともに空間が割れて、ユニコーン号(ユニコーンの形状を模したオートバイだよ?!!)が、俺の眼前に走ってきた。
「搭乗!!」
俺はバイクをまたぐと、そのまま闘牛士戦闘員の群れに向かって突っこんでいく。
猛スピードでユニコーン号を走らせながら、闘牛士たちを跳ね飛ばしていく。
あまりの事態に愕然としている闘牛士ヒーラーをめがけて俺はユニコーン号で突っこんでいく。
「ユニコーンヘッド・ブレイク!!」
俺の叫び声と共にバイクの前面に着いたユニコーンの頭の角が大きく伸び、ユニコーンの頭は角を大きく一振りする。
長く伸びた角は正確に闘牛士ヒーラーに命中すると、そのままヒーラーを彼方へ吹っ飛ばしていった。
やられても治療する者のいなくなった闘牛士戦闘員たちで動くものは間もなくいなくなった。
「くっくっくっく、やるな!!さすが伝説の仮面の勇者!
だが、それでこそやりがいがあるというものだ!!」
闘牛男が猛スピードで頭をかざして突っこんでくる!
「猛牛覇極道!!」
凄まじい戦闘オーラに俺は命の危険を覚え、ユニコーン号ごと、素早く身をかわす。
ぎりぎり躱した俺が振り返ると、街の門が粉々に砕け、闘牛男はこちらを向いて再び戦闘態勢を取っていた。
すばやく鑑定で闘牛男の能力を見ると…。
ゴブリン伯爵やスケルトン男よりずっと頑強だね。
世紀末仮面勇者になってすら勝てるかどうかわからないようだ。
『そんな時こそ、二段変身です!!ユニコーン号と合体して、ユニコーン仮面勇者に変身してください!』
ナビさんの助言だ。なんだと?!そんな便利なものがあるのか?!!!
俺はユニコーン号を走らせながら叫ぶ。
「変身!!ユニコーン仮面勇者!!」
俺とユニコーン号を閃光がつつむ。そして、ガシャーン!ガッシャーン!!と謎の効果音が入り、まるでパワードスーツのように俺の体を白を基調としたメタリックなパーツが覆っていく。
「ユニコーン仮面勇者見参!!」
頭にユニコーンの角を生やしたパワードスーツを着込んだように見える仮面勇者に俺は変身を終えた。
「見える!貴様の強烈な戦闘オーラが見えるぞ!!」
闘牛男が嬉しそうに吠える。こいつはどうやら戦闘狂のようだ。
再び『猛牛覇極道』で突っこんできた闘牛男のタックルを受け止めると、俺と闘牛男はしばし殴りあう。
「ユニコーン仮面勇者マッハパンチ!!」
だが、殴りあいは俺の方が一日の長があったようだ。
闘牛男のパンチを躱しつつ、強烈な左ストレートをみぞおちに叩き込んで吹っ飛ばす。
「ぐぬう…。ふふふ、やるな、ユニコーン仮面勇者よ!
では、こちらも最終モードで対応しよう!!
猛牛モード起動!!」
闘牛男が叫ぶと、頭の角が長く太くなり、体格がさらに大きく膨れ上がった。
「スーパー猛牛タックル!!」
全身に戦闘オーラをほとばしらせて闘牛男が突っ込んでくる。
『卓也さん!ユニコーンソードで受けてください!!』
「了解!ユニコーンソード!!」
ナビの指示を受けて、俺が叫ぶと、頭についていた角が刀に形を変えて俺の手の中に納まった。
俺は闘牛男の鋭い角による猛攻をユニコーンソードで何度も受け流す。
『今です!!必殺技を使うのです!!』
「わかった!ユニコーンソード!スーパー勇者斬り!!」
俺が叫ぶと同時に、ユニコーンソードがまばゆい光を発し、俺の体を閃光が包み込む。
闘牛男のスーパー猛牛タックルをギリギリ躱しながら俺はすれ違いざまに剣を一閃する。
お互いに通り過ぎた後、闘牛男の上半身と下半身がずれて、二つになった闘牛男は地面に崩れ落ち、爆発・四散する。
それを見届けて、俺は全身の力が抜けて思わず膝をつく。
合体してギリギリ倒せたような感じだ。
どんどん敵が強くなっているような気がする。
「驚きましたね!まさか、間もなく幹部に昇進するという怪人の中でも猛者の中の猛者、闘牛男を倒すような奴がいるとは。」
「全くだ!だからこそ、今のうちに消してしまわねばなるまいね。」
いつに間にか、俺に敵意を持った存在が来ていたようだ。
俺に気配を感じさせずに近寄ってきたとは、相当な強敵らしい。
マッチョな馬の頭の戦士と、鹿の頭の戦士らしい。
「俺は魔王軍戦士の『馬男』だ!」
「そして、俺は『鹿男』だ!」
うん、並んだらいけない典型的な例だよね…。
闘牛男以上に元がなにかわかんなくなっているし…。
「伝説の仮面の勇者を倒すために、さらに合体だ!!」
馬男と鹿男が腕をクロスさせると閃光に包まれた。
「合体!!『馬鹿男』!!」
馬の顔に鹿の角を生やした、一回り大きなマッチョな怪人がそこに立っていた。
闘牛男にも負けない強烈な戦闘オーラを出し、非常に強敵なのがわかる。
さらに、俺は闘牛男との死闘で、エネルギー切れが近いと警告ランプが出ている。
ただ…強敵やエネルギー切れがどうこう以前に…回れ右して帰りたいのですが…。
「では、行くぞ!仮面の勇者!!はう?!!!」
ええええ?!!いきなり、馬鹿男の腹に矢じりが突き刺さっているんだけど!!
何者かの攻撃が…あああああ?!!!
馬鹿男の後方に俺と同じような仮面を被った男が金色の弓を構えて空中に浮かんでいる!
金色を基調にした全体にシャープなデザインで、背中には白い羽を生やしている。
金色の仮面の勇者は再び弓をつがえると、今度は馬鹿男の頭に命中させた。
馬鹿男はそのまま倒れると爆発してしまった。
「おい!あんたも仮面の…」
俺が問いかけようとすると金色の勇者は姿を消した。
どうやら転移魔法を使ったらしい。
「卓也、大丈夫?」
変身を解いた俺に駄女神様が近づいてくる。
「ああ、大丈夫だ。危うくエネルギー切れになりかけたけど…。」
「ええ?!そういう時は言ってくれれば『女神リカバリー』を掛けてあげたのに。すぐにフルチャージして元気バリバリになるよ♪」
何てことだ!!それ先に言ってよね!!
「しかし、もう一人の仮面の勇者が動いていたんだね。」
「それ本当?!!うわあ、気付いていれば『女神鑑定』できたのに…。
でも、きっとまた会えるよ♪」
残念ながらシルビアが仮面の勇者に気付いておらず、その正体はこの時にはわからず仕舞だった。
だが、シルビアの言う通りに俺たちは近いうちに第二の勇者と再会することがなったのである。