「厄介な竜人」
第8章・第1部
夜、ベッドに横になりながら、俺はまだあの男のことを考えていた(もちろん、恋愛的な意味ではない)。考えたいことはいくつかある。
一つ目。あいつはどうしてドラゴン語を知っているんだ? 仮に半竜人だったとしても、もっと見た目が違うんじゃないのか? 鱗とか、尻尾とか、そういうのはどこにあるんだ? それとも、半竜人って人間とほとんど変わらないのか? だとしたら、俺の半竜人に対する認識って、ちょっと差別的だったりするのかもしれない。
二つ目。あの妙な硬貨は何なんだ? 普通の硬貨よりずっと大きいし、ドラゴンの絵まで描かれている。少なくとも、この辺りでは見たこともないし、使われてもいない。
昨日、あの厳つい男と会ったあと、試しにあの硬貨で食べ物を買おうとしたんだが……結果は散々だった。店主にはこめかみの辺りで指をくるくる回され、どこかへ失せろと言われてしまった。ちょっと恥ずかしかったな……。
仕方がないから、質屋に持っていくか、それとも農家のところへ行くか。そこの農家の主人は、昔はかなり有名な偽造硬貨職人だったらしいが、今ではすっかり足を洗ったようだ。自分の農場まで持っているし、家族思いのいい父親らしい。娘なんて、まるで子猫みたいに可愛いんだよな! もう、ぎゅーっと抱きしめたくなる!
……まあ、それはさておき。
この世界の人間は、前世の世界の人間と比べて見た目がかなり違う。少なくとも、みんな七点以上はあると思う。俺だって、この世界ではそこそこ見た目がいい。いや、むしろ可愛いくらいかもしれない。
今のところ顔立ちはアンナに似ているけど、成長するにつれてロイに似てきている気がする。
それに、この世界にはいろんな種族がいるんだよな。まあ、俺はほとんど見たことがないけど。何せ、普段は村に引きこもっているようなものだし。
でも、きっと胸の大きなエルフのお姉さんもたくさんいるんだろうな。へへへ……。
……うわっ、俺は何を考えているんだ。
とにかく、今の俺にとって重要なのは一つ目の疑問だ。さっきも言ったように、俺は他種族をほとんど見たことがない。そんな中で、もしかしたら半竜人かもしれない男に出会ったんだ。
特に半竜人という種族には興味がある。何せ、彼らについてはほとんど何も知らないからな。それに、ドラゴンそのものもなかなか興味深い生き物だ。
俺は両手を組み、目を閉じた。
「どうか、あいつが半竜人でありますように!」
「お前、頭おかしいのか?」
俺はびくっと体を震わせた。
いつの間にか、ロイがずっと前からドアのところに立っていたらしい。
子供の部屋に入るときは、ちゃんとノックしましょう。俺からのアドバイスだ。
「ノックの仕方も知らないのかよ」
「ノックはしたぞ。返事がなかったから、寝てるのかと思ったんだ」
あ……それなら俺が悪いな。
「まあ、ちょうどいいや。明日、一人で街に行ってもいい?」
「街? 何しに行くんだ?」
「いや、ちょっと散歩でもしようかと思って……」
ロイは俺を疑うような目でじっと見つめてきたが、すぐにいつもの表情に戻った。どうやら興味を失ったらしい。
「俺は別に構わないぞ。ただし、母さんの許可はもらえよ」
そう言ってロイはドアを閉めた。
部屋から遠ざかっていく足音を聞きながら、俺は再びベッドに横になり、そのまま眠りについた。
第8章・第2部
翌朝、俺は早起きすると、すぐにアンナのところへ駆け込んだ。一人で街に行かせてほしいと、必死に頼み込む。
情に訴えかけたのが効いたのか、アンナは思ったよりあっさり折れてくれた。
急いで着替えると、俺は朝食も食べずに街へと駆け出した。
途中、ロイの視線が妙に鋭いことに気づいたが、気にしないことにした。
そして今、俺は街の門の前に立っている。
巨大な石造りの城壁は、雲に届きそうなほど高かった。門には、こんな言葉が刻まれている。
『死が栄光を生む場所!』
ここがアストリオンの街か!
……名前は微妙だな。
だが、この街にはもう一つの呼び名がある。
『冒険者の街』。あるいは『始まりの街』。
かつて、この国で最も偉大な冒険者の一人がここに住んでいたらしい。
その名も、『氷霧』。
彼はいつも白い仮面をつけており、素顔を知る者は誰もいなかった。名前から考えるに、氷魔法を非常に得意としていたのだろう。
その名声は凄まじく、彼を称えるために像まで建てられたという。
ただし、彼の遺体は今も見つかっていない。
正直、俺もこの人生では冒険者として生きてみたいと思っている。だから、冒険者たちと話して、冒険者という生き方についていろいろ知るのも悪くない。
彼らの経験談や、冒険の途中で起きた出来事なんかも聞けたら面白そうだ。
街全体もかなり興味深かった。
これまでは誰かと一緒に行動することが多く、行く場所も退屈なところばかりだったから、こうして自由に街を見て回れる機会はほとんどなかったのだ。
結局、街を見て回るだけで二時間ほど経ってしまった。
……いや、待て。
俺、何をしに街へ来たんだっけ?
そうだ、あの男だ!
俺は目的を思い出すと、慌てて冒険者ギルドへと走った。
勢いよく扉を開け、ギルド内を素早く見回す。
だが、あの男の姿はどこにもなかった。
まさか、もう帰ったのか?
受付の職員に尋ねてみると、そもそも男はまだ一度もギルドに来ていないらしい。
……なんだよ。ちょっと心配して損した。
まあ、いい。せっかくだし、もう少し待ってみるか。
幸い、ここには冒険者がたくさんいる。暇つぶしには困らなさそうだ。
それから数時間、俺は冒険者たちに話しかけ、彼らの経験談を聞いて回った。
面白い話もあれば、ためになる話もある。中には、思わず背筋が寒くなるような話まであった。
そして、中には……。
「俺は片腕を折られ、もう片方の手には両手剣を握っていた! そして叫んだんだ! 『かかってこい、クソガキども!』ってな! そいつらを一人、また一人と一振りで真っ二つにしてやって、それから……」
「すみません。どうして娘さんのお遊戯会の話から、そんな展開になったんですか……?」
「ん? いや、まだお遊戯会の話だぞ」
「……」
……世の中、本当に何が起こるかわからないな。
そんなこんなで、俺は何時間もここで妙な話を聞き続けていた。
それなのに、あの男はまだ来ない。
昨日は、もしかしたらあいつはペドフィリアなんじゃないかと、少し不安になったりもしたが……。
仮に本当にそうだったとしても、なんというか……無能なペドフィリアだな。
……無能なペドフィリア。なんだそれ。ちょっと面白いな。
それとも、単に忘れているだけなのか? あるいは、最初から来るつもりなんてなかったのか?
俺はここでずっと待っているというのに……。
まあ、あと二時間くらい待って、それでも来なかったら帰ろう。
……とはいえ、冒険者たちとはもう一通り話したし、面白い話もだいたい聞いてしまった。
さて、どうやって時間を潰そうか。
ふと、俺の視線が依頼掲示板の隣にある掲示板へと向いた。
貼られているのは、ほとんどが『当店へお越しください! 地域最安値!』といった広告ばかりだった。
だが、その中に一枚だけ、妙に気になる張り紙があった。
どうやら、半年ほど前に貼られたものらしい。
『エルディア王国西部付近の村で火災が発生。住宅や家具、住民の財産が焼失し、多数の死傷者が出た。原因は旧式ランプに使用されていた可燃性物質とみられる。国は被災者への補償金の支給を開始するとともに、旧式ランプの使用を禁止し、魔力のみで作動する魔法式ランプへ置き換えることを検討している』
その隣には、一週間ほど前に貼られた旧式ランプの使用禁止に関する張り紙もあった。
……この世界でも、法律って一瞬で変わるわけじゃないんだな。
それにしても、ひどい話だ。
……なんだろう。これ、どこかで見たことがあるような……。
あっ、そうだ!
ロイがこの張り紙を読んでいたんだ。
あのときは特に気にしなかったけど、ちゃんと読んでいてくれてよかった。家にあるランプを全部処分してくれているといいんだが……。
火災が起きたのは王国の西部か。
俺たちが東部に住んでいてよかった……なんて思ってしまうのは申し訳ないが、被害に遭った人たちは本当に気の毒だ。
その後もいくつか張り紙を読んでみたが、これ以上気になるものは見つからなかった。
……それにしても、あの男はどこをほっつき歩いているんだ?
もう帰ろう。これ以上、日が暮れるまで待っていられない。
そう思った、その瞬間だった。
上の階から、あの男が降りてきた。
筋肉質で、背が高く、全身に傷跡がある。そして……眠そうだった。
……俺はわざわざここで待っていたのに、こいつは俺が金を払った部屋でぐっすり寝ていたのかよ!
「……来たんだな」
「……ああ」
男は手招きすると、再び階段を上り始めた。
第8章・第3部
俺たちは二階へ上がった。
男は二十分ほど鍵を鍵穴に差し込もうと悪戦苦闘していたが、やがて、そもそもドアに鍵をかけていなかったことを思い出した。
部屋に入って、俺は少し驚いた。
こいつ、見た目からして掃除なんて気にしなさそうだし、かなりだらしない人間に見える。なのに、部屋の中は意外にもきれいだった。
……まあ、ここに来たのは昨日なんだし、見た目だけで判断するのはよくないか。
入口のそばには、二つの袋が置かれていた。
「一つ、質問してもいいですか?」
男の顔がぴくりと動いた。明らかにイライラし始めている。
「くだらない質問じゃなければな」
「その袋には何が入っているんですか?」
「くだらない質問だ。答える気はない」
「お願いします」
男の顔がさらに険しくなった。
「いいか、約束しろ。俺の前では黙っていろ。ドラゴン語も話すな。質問があるなら、手を挙げろ」
俺は頷いた。
「よし、いい子だ……。お前、半年くらい前に村が一つ焼けたのを知っているか?」
俺は頷いた。
「俺はあの火事が起きたとき、そこにいたんだ。こいつらを運び出してきた。どうせ、もう誰も使わないだろうと思ってな。ところが、中には妙な穀物が入っていた。国外でしか育たないらしい。試しに食べてみたんだが、どうやら調理しないと食えないみたいだ」
男は袋の一つをほどいた。
中に入っていたのは、小さくて白い粒。
それはまぎれもなく――
「米だあああああ!」
もう二度と食べられないと思っていたのに、まさか向こうから俺のところへやって来てくれるとは!
「これが何かわかるのか?」
俺は満面の笑みで頷いた。
「調理の仕方も知っているのか?」
今度はさっきよりも大きな笑みで頷いた。
「……うまく作れたら、袋を一つ持っていっていいぞ」
……言ったな?
前世では料理人になるために勉強していたし、何より俺は米が大好きだ。こんなもの、簡単に調理できるに決まっている!
調理には五十分ほどかかったが、その価値は十分にあった。
俺は二人分の皿をテーブルに置くと、すぐに席についた。無詠唱魔法で箸を作り、夢中になって米を頬張る。
「無詠唱魔法か? しかも、ずいぶん速いな。驚いた。魔法の腕は悪くないらしいな。ドラゴン語はあれだが……。それにしても、無詠唱魔法をここまで使いこなす奴は初めて見た」
……おや、意外だな。
この世界では無詠唱魔法を使える人間自体が少ない。これは素直に褒め言葉として受け取っておこう。
「まあ、俺の魔法には及ばないがな」
男は得意げな笑みを浮かべた。
……どうやら、自慢したいのか、俺の興味を引きたいのか、その両方らしい。
どちらにせよ、狙いどおりになっているのが腹立たしい。
「俺がどんな魔法を使えるのか、気になるか? どうしようかな。教えてやるべきか……」
……こいつ、だんだん腹が立ってきたな。
「まあ、お前があまりにも哀れだから、特別に教えてやろう。俺が使えるのは、一言魔法だ。呪文の名前を口にするだけでいい。詠唱も集中も必要ない」
……そんな都合のいい話があるか?
「お前、信じてないだろ? 顔を見ればわかるぞ! なら、実際に見せてやる」
男は戸棚を開け、中から杖を取り出した。
……杖って、普通は戸棚にしまっておくものなのか?
それは確かに美しい杖だった。特注品らしく、雪のように白い魔石と、長い黒色の柄が見事な対比を生み出している。
正直、俺は少し見惚れてしまった。
男は自信満々のポーズを取ると、堂々と言い放った。
「さあ、見て驚け!」
……正直、少しデジャヴを感じた。
杖の魔石が突然輝き、そして、同じくらい突然に光を失った。
「あ……そうだった」
男はがっくりと肩を落とし、悲しげにつぶやいた。
その瞬間、俺は腹を抱えて笑い始めた。
「お前、笑い声までうるさいな!」
その後、俺は二十分ほど笑い続けた。
男がついに我慢の限界を迎え、黙れと命じるまで。
第8章・第4部
俺がまだ笑い続けていると、男は突然、テーブルを叩いた。
「……お前、鬱陶しいな」
「ごめん、ごめんって」
俺は手を挙げた。
「今度は何だ?」
「お名前を聞いてもいいですか?」
「お前、相手のことを何も知らないのに、よくついて来られたな?」
俺は頷いた。
「俺が殺人鬼だったらどうする? それとも、ペドフィリアだったら? ……まあいい。俺の名前はルシウス。ルシウス三世だ。お前は?」
「ヴィック……いや、ヴィキルです」
「お前にぴったりの名前だな。お前のドラゴン語と同じくらい耳障りだ」
男は杖を戸棚に戻すと、剣を取り出し、鞘に収めた。
……こいつ、剣士なのか? それとも魔法使い?
いや、魔法使いとは思えないな。何せ、基本中の基本みたいな魔法すら使えなかったんだから。
……まあ、聞いてみるか。
俺は再び手を挙げた。
「はあ……。お前、いい加減にしろよ。今度は何だ?」
「剣士なんですか? それとも魔法使いなんですか?」
「魔法使いだ」
「そうは見えませんけど」
「黙れ」
……とはいえ、まだまだ聞きたいことはある。
俺はまた手を挙げた。
「……もう手を挙げるな! その仕草までイライラする! 聞きたいことがあるなら、まとめて聞け!」
「あなたの種族に興味があるんです」
「俺の父親は半竜人で、母親は普通の人間だ」
「なるほど……。でも、どうして半竜人はドラゴンが殺されることに反対しないんですか? 親戚みたいなものでしょう?」
男の表情が一瞬で険しくなった。
「俺たちの祖先は、あんなドラゴンとは違う。もっと知性のあるドラゴンだったんだ。あいつらと一緒にするな」
……つまり、前世で言う人間とゴリラみたいなものか。
いや、前世ではゴリラを殺すどころか、動物愛護団体が保護していたけどな。
……まあ、こいつにも何か事情があるんだろう。
興味はあるが、知り合ったばかりの相手に、これ以上踏み込むのはやめておこう。
「ところで、この硬貨は何なんですか?」
俺は昨日、男から受け取った硬貨を取り出した。
「半竜人の硬貨だ。だが、ここじゃただのガラクタみたいなものだな」
「なるほど……。ところで、あなたは人間の言葉を知らないのに、どうやって俺にドラゴン語を教えるつもりなんですか?」
男は黙り込んだ。
……どうやら、そこまで考えていなかったらしい。
それでも何とか切り抜けようとしたのか、部屋にある物を指差し始めた。
「……それじゃ、俺は何も新しいことを覚えられないって、わかってますよね?」
男は頷いた。
「だったら、ドラゴン語を学ぶのはやめましょうか? それより、あなたの話を聞かせてもらうほうが、俺としては嬉しいんですけど」
「いや、俺は……やらなきゃならないんだ。やらなきゃ……。通訳が必要だな」
……本当に頑固な奴だ。
まあ、通訳を連れてくるという案自体は悪くない。
実は、ちょうどいい人物に心当たりがある。
第8章・第5部
通訳役にはラナを頼むことにした。
何せ、俺にドラゴン語を教えてくれた本人だ。ドラゴン語も人間の言葉も知っている。これ以上ない適任者だろう。
最初は説得が必要かと思っていたが、ラナは意外にも快く引き受けてくれた。
今回は待たずに、すぐルシウスの部屋へ向かうことにした。
「一応言っておくけど、あの人、ちょっとイライラするところがあるの。でも、悪い人ではなさそうだから……どうか怒らないであげてね」
そうラナに伝えてから、俺はドアをノックした。
すると、驚いたことに、すぐにドアが開いた。
「こんにちは。こちらが通訳の――」
最後まで言い終える前に、ルシウスは胸を押さえ、苦しそうに息をし始めた。
そして、勢いよくドアを閉めた。
「……何があったの?」
ラナが不思議そうに尋ねた。
俺は肩をすくめた。
……まさか、女が苦手なのか?
いや、ギルドの受付嬢とは普通に話していたはずだ。なら、別の理由があるのか?
俺はもう一度ドアを叩いた。
「おい、開けろ!」
それから十分ほど、俺はドアの前で開けるように頼み続けた。
だが、一向に開く気配がない。
……仕方ない。
俺は土魔法で鍵を作り、ドアを開けた。
部屋の隅では、ルシウスが体を縮こまらせて座り込んでいた。息は荒く、体は震えている。
「……ちょっと待ってて」
俺はラナにそう言い残し、ルシウスのところへ向かった。
「どうしたんですか?」
ルシウスは黙ったまま、俺から少し距離を取った。
額には冷や汗が浮かんでいる。
……これ、パニック発作じゃないのか?
いったい、どうして……?
「……あの人と知り合いなんですか?」
ルシウスは首を横に振った。
「ち、違う……。ただ、あの人が……ある人に似ているんだ。……いや、何でもない」
彼は突然立ち上がり、テーブルの前に座った。
「……い、入れてもいいぞ」
無理やり平静を装っているようだが、俺には彼の心臓が激しく鼓動しているのが聞こえていた。
「本当に大丈夫ですか? やっぱり――」
「いいから入れろ。俺は大丈夫だ」
……そう言うなら。
俺はラナを部屋に招き入れた。
「ラナ、こちらがルシウス。ルシウス、こちらがラナ。俺にドラゴン語を教えてくれた先生です」
「ようやく会えたわね。あなたがヴィックにあんなひどいドラゴン語を教えた人?」
ラナは俺の耳元に顔を寄せ、小声で言った。
「あなた、あの人がちょっと面倒な人だとは言っていたけど……まさか、ここまでひどいとは思わなかったわ」
「そのうち慣れますよ」
それから一時間ほど、ラナは通訳をしながら、ルシウスが俺にドラゴン語を教えるのを手伝ってくれた。
その間、ルシウスは何度もラナをちらちらと見ていた。
……あれは、恐怖……なのだろうか?
確かに恐怖が感じられる。だが、それだけではない。
どこか温かいものも、彼の眼差しには混じっていた。
とはいえ、恐怖のほうが圧倒的に強かったが……。
まあ、今日だけで新しい単語も文法もいくつか覚えられた。
どうやら、無駄な一日ではなかったらしい。




