第23色 南の平原に星の煌めきを
「ライラ…先生…?」
「おーう。お前らの先生、ライラ先生だぞー。」
バルトにいたときのように気の抜けた話し方で、何もなかったかのように僕たちに話しかけてくる。あまりにも変わらなさすぎて裏になにかあるとしか思えないが、それがなにか見当もつかない。
「待て待て、そんなに疑うなよ。私は基本的に中立側だ。何なら今はお前ら側だぜ?」
「信用できると思いますか?こっちからしたらあなたは敵側なんですよ。そう簡単に信用できるはずないでしょう。」
その言葉で先生は少し考え、
「なら、お前らが信用できるような情報を教えてやろうか?」
「情報?」
と、的確に僕たちがほしい事を提示してきた。
欲しい情報などいくらでもある。
「おうおう相談したいならいくらでもどーぞ。ただし、教えられるのは1つだけだ。それと一個教えておいてやると、お前らが思っている以上に残り時間は少ないぜ。」
そう意味深なことを言い、それを頭の隅に置いておいてから相談を始める。
「本当のことを話してくれると思うか?」
「わからん。そもそもあの先生はいい加減なところが多いからな…」
あの先生がいい加減というところに関して意見が一致したところに対して苦笑しつつ話を続ける。
「いま一番欲しい情報はあの〈長〉か〈白壁〉だよな?」
「ああ。一刻も早くここから出るためにもこれらの情報が優先だろう。」
「おーーーい、まーーだかーーー?」
「決まりましたよ。少し待ってくれてもいいじゃないですか。」
〈長〉か、〈白璧〉か。この選択で僕たちが取ったのは…
「その、〈時間がない〉っていうの、詳しく聞かせてもらえますか?」
先生は心底楽しそうに笑うと、
「やっぱりお前らならそれを選ぶと思ってたよ」
と言って語りだした。
先生が話した内容の中には僕たちが予想していた『色』の性質が正しいということを裏付けるような内容や、あの学園は洗脳をしているということなど、あの学園の深いところまで教えてくれた。その前置きをした上で僕たちに語りだした〈時間がない〉という言葉の意味。
「…は?」
それは、僕たち、特に僕には信じたくない話だった。
「もう一回言ってやろうか?この学園は生徒を〈改造〉して『色』の出力を爆増させてんだよ。そんで、その中でも現状一番の出来なのが、お前の幼馴染、ルミアちゃんだよ。」
あまりにも酷い。本当に…。『色』の出力を上げる?なんのために?それに違和感を持たせないために洗脳をするのか?そんな事をしていいのか?思考が止まらない。止め処なく思考が溢れる。
「『白洗』」
そうだ。落ち着け。いますべきことを考えろ。今は何よりも〈白壁〉を超えることを考えろ。なんのための情報だ。
「落ち着いたか?せっかくだからこれも教えておいてやるが、ルミアちゃんを含めた数人が今ここに向かってきてる。恐らくここにつくのは2.3日後ってところか。朗報はお前らがあんまり早くここに来たせいで〈調整〉がしっかりできてないってところかな。つまり、力をうまく扱えないと思うぜ。」
残り、2日。2.3日とは言っていたものの2日と考えたほうがいいだろう。それまでにどのような準備をするか。さっさと〈白壁〉の外に出たいところではあるが問題はあの〈長〉。これは最悪の場合の予測でしかないが、〈学園〉と繋がっている場合。そうなっていたらあらゆる手段で妨害いや遅延される。そしてルミア達と接敵させられる。現状のルミアの状態がわからないから話が通じる状態なのかそうじゃないのかすらわからない。
「それはそれとして、お前ら、あの授業の時より大分強くなったろ。ちょっと戦おうぜ。」
「…え?いや、時間がないって言ったのそっちですよね…?」
「いや、どうせ2日はこなさそうだしちょっとくらい大丈夫だって!」
こういうところが胡散臭くて信用できない理由なんだよなぁ…。
「僕が戦ってみたい!」
「レブが?」
「だってあの人すごく強そうだし、お兄ちゃんのさっきのももっかい見てみたいし!」
レブがそこまで言うのは珍しいかもしれない。まだあんまり時間が経ってないからわからんが。
「ジューク、まあいいんじゃないか?俺もそろそろ動きたい。」
「ならやろうか。」
「おっ!いいんだな!?じゃあ、早速行くぞ!」
そう言うと、『光』となった先生が周囲を駆け巡る。かつてであれば呆然とするだけであったが、今は違う。
「『赤血・網』!」
「『緑風・場』!」
「『白粉・霧』!」
僕達は合図でほぼ同時に『色』を発動させる。
レブの『網』を僕らを囲う檻のように展開した後、それをぐいっと広げ、試験のときのリングほどの大きさまでにする。すかさずワイドの『場』で『網』の外から内に風を強く送り、内では竜巻のように回転させる。そこに僕の『霧』で『色』を封じ込める。
これで、僕たち特化の『場』が完成する。
「なあるほど。なら、私もちょっと本気でいこうかね!」
そう言うと、『場』の外にいる先生は強風をものともせず立ち止まると、何もない空間で弓を射るような姿を取る。
「『白星・十二・射手』」
先生の手や足、そして何もない空間に『星』が現れる。見惚れる間もなくその間に線が引かれる。すべての星が繋がったとき、先生の手には『弓』と『矢』が握られていた。
そう認識したとき、『矢』は放たれた。その『矢』はこの暴風でも一切軌道が逸れることなく僕の元へ一直線に飛んでくる。一瞬の間に僕達の前に現れた『矢』に対し、咄嗟に僕は左手を突き出し、刺さった感覚がした瞬間に『血』を固める。
タイミングはギリギリ。矢じりが完全に腕から出ている。落ち着いて腕の『硬化』を解き、『矢』を地面に落とすと、光の粒となり消えていった。
先生の方を向くと、こちらに走って来ていた。だがレブの『網』がある。あの『網』は触れたところを固めて固定。そのまま中心に引きずり込むというようにレブが操作する。触れれば最後だ。
「『白星・八八・六分儀』」
またしても先生の前に『星』が現れ、物を象っていく。六十度ほどの分度器のような形ができたかと思うと『網』がその分度器に合わせて開いた。
「レブ!制御は!?」
「やってるよ!あそこだけ制御が効かない!」
その言葉で、あれは何か強制力のあるものだと認識する。
「『刀身拡張・直剣』!」
「『赤血・槍』!」
「『血染』!!」
「『緑突・閃』!」
〈白剣〉を一本の直剣とし、そのまま『血染』で先生を攻撃する。他の二人も自身の持ちうる遠距離技で攻撃した。が。
「『白星・八八・盾』」
またしても『星』が象る『盾』を先生が操り、『血槍』を防ぎ、『血染』は横に回避。その先に来る『緑突』はグッと、上に飛ぶことで回避。
「さあ、どんどん行くぜ!」
いつの間にか暗くなった辺りを散った『星』が煌めき、彩る。
その勝負の熱気は、迫る冷気を隠すには十分すぎた。
今回のライラの『色』は八十八星座をモチーフとしています。(中でも十二星座だけは有名ということもあって特別枠としていますが…)
いつかその一覧を設定集の方にでも載せておこうかなと思っています。




