第21色 出発の前に
〈械鳥〉討伐に行く前に一日かけて休むことにした。適当に宿を取るとワイドは一瞬で寝てしまった。だからレブとまた買い物に行こうかと思い声をかけようとするといつの間にかワイドの隣で気持ちよさそうに寝ていた。
先に街を見ておこうと思い外に出ると、辺り一面人、人、人。
凄まじいほどの人の数で、店の前にも行けないので人の流れに乗ってぶらーっと歩く。
そして人がまばらになるくらいの場所まで来て、ふらっと一つの店に入る。するとそこの店員が
「あんたが噂の『白』か!」
と言うやいなや辺りから人がどんどん近寄ってくる。
恐らく僕にかつての〈白の英雄〉を重ねているのだろう。
…気持ち悪い。五月蝿い。僕は僕だ。ジューク・アイルだ。〈英雄〉じゃない。
そう思うが決して声にも顔にも出さず、作り笑いでその場を凌ぐ。
だが一向に人が居なくならない。耐えられなくなってきた僕は皆に聞こえないように呟く。
「『白洗』」
そうだ。僕がすべきは〈白壁〉を超えることだ。その目標を再確認した僕は辺りに集まってきた人との話の中でさりげなく〈械鳥〉と〈白壁〉の話を聞いていく。
それで分かったことは、
・〈械鳥〉の羽根には何かで抉られたか貫通したかのような穴が空いている
・〈白壁〉の近くでは『色』が使えなくなる
・門は冒険者が通る時にしか開かない
ということだった。〈械鳥〉がダメージを受けているというのはいい情報だった。少なくとも殺せない相手ではないという事だ。
それより気になるのは〈白壁〉のこと。なぜ『色』が使えなくなるのか…そしてどうやって通るか…
そんなことを考えているといつのまにか宿に戻っていた。
部屋に帰るとワイドが腕立て伏せをしていた。
「おっ、ジューク、おかえり。」
「ああ。ただいま。」
さっきの気持ち悪い奴らに比べるととてつもないほどの安心感。仲間は大事だな…
「ところでワイド。」
「ん?どうした?」
「そういえば、なんで〈白壁〉の外を目指そうなんて言ったんだ?」
ここに来たことがあるならワイドは『色』が使えなくなることを知っていたはずだ。なのに何故そんなことを提案したのか。
「前、俺の幼馴染の『白』の話をしただろ?あいつがここにきた時の話で、〈白壁〉の外の街にこの壁の中…いや、世界の本当の話があるって言っててな。その街を目指したい。だから、この壁を越えたいんだ。」
世界の真実…正直言ってバルトも何もあんまり信用できない。ただ僕はワイドほど何か大層な目的があるわけではない。“あの人”にもう一度会いたいだけだ。
「ところで、その街の名前ってわかる?」
「あいつは…トウキョウ…とか言ってたかな」
トウキョウ?何か引っかかる。初めて聞いたはずの単語なのに…
「レブ?どうかしたか?」
ワイドの声でレブの方を見ると、頭を指で押さえながらうんうん唸っていた。
「うーん、なーんか聞いたことがある気がするんだけど思い出せないんだよな…」
「別に無理に思い出さなくていいよ。それに、行けば分かる。」
「それもそうだね!」
相変わらずレブは切り替えがいい。そうだな。その通りだ。まずは一つ一つ、目の前のことから潰していこう。
その日、ジェイル国中央部、バルト校周辺にて、夏なのに雪が降るという現象が起こった。数十分で収まった為皆はそれほど気にしていなかった。
だが、バルト校地下。その一室が、氷に閉ざされる。
「ふふ、また後でね、ジューク。」




