第19色 サーシュの長
サーシュの門に着くと、門番の方が僕らを確認する。ただ僕が『白』ということを確認するとその場で開けてしまった。そしてそのままの流れでサーシュの長がいるという家まで通された。
「なぁ、流石に都合が良すぎないか?」
「うん、僕もそう思う…」
「進んでるんならいいんじゃない?」
レブはそう言うが、特に何かした訳ではないのにここまで進んでるって言うのは疑わずにはいられないんだよな…
ただコレが罠だったとしてもよほどのことがない限りこのメンバーだとそうそう負けることはないはず。
そう考え、家の敷地内へと足を進める。
「いらっしゃい。『白』とその仲間。そして、指名手配犯?」
臨戦態勢に入りつつ、既にここまで広まっていたということを知る。
…どこまで知っている?
「そんなに警戒しないでくれよ。この街が『白』を大切にしてるのは知ってるだろ?」
「ああ。一応な。ただ俺はその話を詳しく知らないんだよ。結局、どういうことなんだ?」
これは、僕たちが一番聞きたかったことでもある。なぜこんなにも『白』を優遇しているのか。逆に『黒』を忌避しているのか。
「おや。その話を知らないか。じゃあ簡単にだが話してあげよう。」
サーシュ以外では全くと言っていいほど聞かなかったから、隠されているんじゃないかとも思ったがそうじゃないのか…
「昔、この南の街サーシュと、北の街ノルスとの間で大規模な争いがあったんだ。それぞれの軍を率いたのが『白』と『黒』。そして南が『白』だったからいまでも『白』を大切…というか贔屓してるんだよ。簡単に話したんだが、これでいいかな?」
「ああ。分かった。」
話の流れから察するに、その争いが終わった後に今後そんな事を引き起こさないようにするためにバルトとかその周辺の街を作ったって感じか?
「ところで君たちは今後の展望はあるかい?」
「ワイド、話すか?」
「ああ、話しておいたほうが良さそうだ。」
「僕たちは、この壁の外に行こうと思っています。」
バルトだけでなくこの壁の内側にいるものであれば誰でも知っている、というより注意されていること。
“あの壁の外には出るな”
という話。
いままでであれば危険なのかな程度に済ましていた。ただバルトにおける洗脳行為や突然の襲撃。これからいくつかの仮説を立てた。
まず何かしらの理由で僕が邪魔ということ。
そして、壁の外になにか隠したい物があるということ。これらはまだ仮説に過ぎない。ただこの中にいても追われるだけなのであればいっそ全てをこの目で見に行くというのもいいのではないか。
なにより街で聞いた噂に、僕を助けてくれたあの人が壁の外に行ったという噂がある。それを僕は確かめに行きたい。
「壁の外…か。それはどうして?」
「この壁の中にいても一生追われ続けるだけなので、外に出たほうが逃げられる確率は高いと思ったからです。」
「壁の外がどんなものかも知らないで?」
「はい。知らなくても、です。」
その言葉を聞いたサーシュの長は少し考えてから、一つの提案をする。
「わかった。壁の外に行きたいのならこちらも少しは協力をしよう。ただいくつか条件がある。」
「何でしょう。」
「まず、街の人々には壁の外に行くということを伝えないでほしい。」
「次に、これは少し君たちの実力を測るためでもあるのだが、最近この付近の平原に普通の鳥ではない、所謂怪鳥が住み着いてしまってね。そいつを倒してきてくれないか?そうすれば、僕たちは君たちのことを支援しよう。」
「…わかりました。」
「受けてくれるか。それはありがたい。私からは以上だ。怪鳥討伐、よろしく頼むよ。」
「はい。任せてください。」
「そうは言ったが、あいつ、信用できるのか?」
「うーん、分からない…」
僕たちが不信感を抱いている理由は相手はこちらを知っているのに名前で呼ばず、あちらの名前も名乗らなかったこと。そして困っているはずの怪鳥の情報を何一つ語らなかったこと。
「あいつが信用できるかは置いておいて、とりあえず情報収集じゃないか?」
「そうだけど…何かアテはあるのか?」
「ああ。今も同じ場所でやってるなら、だけどな。」
あの長のことは置いておいて、僕たちは〈怪鳥〉の情報収集に向かった。
その頃、長は机の上に浮く、『光』と話をしていた。ただそれは話というより独り言というのが正しい表現かもしれない。
「僕はこの街のみんなと同じく『白』というのを激しく敬愛、いや崇拝といったほうが正しいかな?しているんだよ。ただ僕はあのような不純物の混じった『白』じゃだめなんだ。伝承のような、それこそ東の英雄のような混じり気のない、『純白』じゃないとだめなんだ。だからこそ僕はあいつが気に入らない。なぜ『純白』になれる素質が有りながらその素質を潰すような、あの英雄たちを潰す、冒涜するような事をするのか…本当に理解に苦しむ。」
話に区切りをつけ、呼吸を整えてから彼は言う。
「だから、私は君たちに協力しよう。バルト学校諸君。」
彼らを追う『星』は、まだ墜ちてはいない。




