56日目
『僕』になってほしい? いったいどういう意味だ?
僕が色々な可能性を考えていると、ライムは何事かを呟いた。
「……………」
前のような暗い表情じゃない。歪んで、ねじ曲がった、人を陥れるような笑顔で。
「ねぇ、にいさん。僕と『入れ換えっこ』しようよ」
「僕がにいさんになって、にいさんが僕になるんだ。とてもいいアイデアでしょ?」
それでも幼い僕は寝ているのか、全く目覚めない。
「そう言ってくれると思った。……じゃあ、ちょっとごめんね」
「にいさん」
ナイフを振りかざす幼いライム。赤に染まっていく幼い僕を、今の僕は見ている。
いや、見ることしかできなかったんだ。この悲劇を、現実を。
ベッドが、床が幼い僕の血肉でいっぱいになった。幼い僕がぐちゃぐちゃになっても、ライムは僕をナイフで刺すのをやめなかった。
「ふふっ、あははっ。あはははっ!」
「あれ? にいさん、死んじゃったの? ふふ、あはは」
幼いライムがひとしきり笑った後、ライムが呪術を解放しようとする。
「待ちなさい!」
アリアの突然の声に振り向いた瞬間、幼いライムはテナーに取り押さえられた。
「ぐっ……。『犬』と『魔女』め! 僕の邪魔をするな!」
「これは命令だ!」
その声に、姿に、誰もが驚いた。
「ら、ライム様が……」
「あ、あぁ……」
テナーとアリアは血相を変えて、その人から離れた。
「どういうことだ? 説明しろ、テナー!」
「あ、アルトにぃさま……? どういうこと……?」
なんと、ライムだった人間が僕にすり変わったのだ。
今までの僕との変わりように、今の僕はあっけらかんと口を開いた。




