55日目
ライムが父さんと母さんを殺したことは、大々的にメディアに取り上げられた。
凶器もなく、犯人の指紋も見つからない。この事件は人々を不安にさせながら、迷宮入りの事件となる。
僕はそんなことを気にせず、ライムが幼い僕のもとへ行こうとしてるのが不安で仕方なかった。
「にいさん……。にいさん……」
ライムは足早に僕の引っ越し先の家に向かう。けど、何だかライムの様子がおかしかった。
ライムは僕の部屋に入ると、寝ている幼い僕をうっとりと眺めている。
「ふふ、にいさん……。寂しかったんだよ」
「ずっと、ずっと、ずっと。にいさんのこと考えてたんだ」
ライムは黒いリュックからナイフを取り出し、自分の腕を切る。
当然、幼いライムの腕からは血がしたたり落ち、幼い僕の顔に数滴当たった。
僕はこの光景がおぞましくて吐きそうになったが、ぐっとこらえる。でも、これよりも酷い光景が僕の目に入った。
「ねぇ、にいさん……。見てよ……。これ全部、父さんと母さんの血なんだ」
幼いライムの指から、大量の血が渦巻いている。
そして、ライムが少し指を払っただけで、僕の部屋には血で真っ赤に染まった魔法陣ができあがる。
「ねぇ、にいさん……聞いてよ。僕ね、とっても素敵な呪術を本で見つけたんだ」
幼いライムは年相応の笑顔を見せるが、幼い僕は寝ていて気づかない。
でも、今の僕にとっては恐怖そのものだった。
「けどね、それには身近な人の血が必要だったんだ。もう言いたいことは分かるよね?」
幼いライムは、まるで今の僕に言っているかのように言い聞かせる。
「父さんと母さんにとって、僕はただの『いい子』なんだ。にいさんのことも見向きもしないで、僕だけに愛情を注がせる」
「そんな父さんと母さんが僕は大嫌いなんだ。だから殺した。でも、もう一つ理由があるんだ」
幼いライムは一呼吸分の息を吐くと、あの不気味な笑顔で口を開いた。
「にいさん、『僕』になってよ」




