47日目
幼い僕とライムが行き着いた先は、病院だった。
厳密に言えば、精神的な悩みや体にどこか悪いものを抱える子どもたちが多く受診する、『子ども心療内科』だ。
よく精神科と心療内科の違いを言われるが、精神科は心の病気。主にうつ病などが挙げられる。
また心療内科は脳や体に、何か障がいを抱えている人が多く通う。主に発達障害などが挙げられるだろう。
「病院、ついた」
「着いたね、にいさん」
幼い僕とライムが病院に着くや否や、幼い僕は背伸びしてカウンター越しに受付の女性へ何かカードのような物を渡した。
「せんせ、カード」
幼い僕がそう言うと、受付の女性は幼い僕とライムにソファにかけることを提示する。
「いつもありがとうございます」
ライムが丁寧に頭を下げると、受付の女性は優しい声で言った。
「いいのよ、いつもの事だから。また何かあればいつでも来てくださいね」
そして受付の女性とライムは、心の底からの笑顔をして各々の持ち場に戻った。
僕は一足先にソファに座っている幼い僕を見ると、何やら過去の僕は少し大きめのぬいぐるみを抱きしめていた。
幼い僕は目を星のように輝かせて、くじらのぬいぐるみを色んな角度から見ている。相当気に入っていたようだ。
「ライム、見てみて……! くじらさん! かわ、いい!」
「どこで見つけたの?」
「あっち……!」
僕は幼い僕が指さした方を見ると、そこにはテーブルの上にたくさんのぬいぐるみが置いてあった。
ぬいぐるみの動物が多く、種類は様々だ。
ライムがなぜそのぬいぐるみを選んだのかと聞くと、幼い僕は『王冠がついててカッコいいから』と、得意気に答えた。
「アルトくんと、その付きそいのライム様~。診察の準備が完了したので、診察室へどうぞ」
「せんせーに、会える……!」
「うん、楽しみだね。にいさん」
そんな楽しいひとときもつかの間、名前を呼ばれて幼い僕とライムは奥の部屋に行ってしまった。
「ぼ、僕も……行かな、きゃ」
そう思って、僕も彼らについていこうとした時。ほんの、ほんの一瞬だったが、幼いライムがこちらを向いたような気がした。




