46日目
ヒーローとは言っても、それは昔の僕が思ったことだ。
いじめられている自分を仲間を引き連れてやって来る。それは、どんな特撮番組や少年漫画よりも助けられるものだろう。
そのヒーローは、弟のライムだった。
相変わらずの癖毛の黒髪にオッドアイの瞳、小麦色の肌。昔の僕とお揃いのパーカーと、ズボンにスニーカー。
それは、今で言う双子コーデとかいうやつだろう。
「あぁ? てめぇ、ライム。こんなよわっちいやつの味方すんのかよ」
「お、おい。そんなこと言ったら……」
一人の男の子が横暴な男子を止めようとしたのもつかの間、ライムはリーダー格の男子を蹴りあげる。
「ってぇな! おい、お前らも加勢し……」
「ひっ、ひぇぇぇ~!」
「暴力なんてサイテー!」
そんな捨て台詞を吐きながら、リーダー格以外の男の子と女の子たちはいなくなった。
「さぁ、どうします? リーダーさん……?」
笑顔だが不適なオーラを放つライムに、恐怖心を覚えたリーダー格の男の子は助けを乞いながらどこかへ走っていく。
……途中で転んだのは見なかったことにしよう。
「さっすが、俺らのライムだな!」
「そうかな? ありがとう」
「このこの~!」
そう言って、ひときしりライムの快挙を祝った後、ライムの友人たちは帰っていった。
「……にいさん」
泣きじゃくる過去の僕に、ライムは優しく声をかけてくれた。
「らい、む……」
「あははっ。どっちが兄なのか分からないね」
「ライム……。僕、せんせーのところに行きたい……」
「うん、いいよ。父さんと母さんに連絡して、夜は少し遅くなるって言っておこう」
先生? 僕は特別、仲のいい先生なんていなかったはずだけど……。
そう思いながらも、僕は幼い僕とライムのもとへ着いていった。




