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34日目

 テナーは頑丈(がんじょう)そうな扉を開けると、その部屋は何も変哲(へんてつ)のない普通の部屋だった。


 ……ドキツい変な趣味の家具を除けば。


「これは……」


「うわぁ……」


 僕とテナーは二人してドン引きした。かつて、こんな甘ったるくて吐きそうな部屋があっただろうか。


 どんなに可愛いともてはやされてるモデルやアイドルだとしても、ここまではいかない。と思うほどに酷い部屋だ。


「これは酷いですね……」


「あのおばさん……。趣味も、ひねくれてるとか……最悪……」


 辺りを見渡しても、画面やボタンがたくさんあるようなところは無く、さらに部屋に続くドアが三つほどあった。


 一般的に考えると、トイレ、ベッドルーム、マイルームの三つだが、明らかに頑丈に施錠(せじょう)された部屋がある。


「……アルくん」


「うん。あからさまに……怪しいのは、あれだよね……」


 僕は生つばをごくりと飲んでうなずくと、テナーは冷や汗をかいていた。


「テナー……? 大丈……」


 言い終わる前にテナーは、大量のどす黒い色と赤が混じった何かを残して倒れていった。


 原因は不明。何で倒れたのかも分からない。


 でも、倒れている時には目を見開いて涙を流していた。


 僕が駆けつけた時にはなんとか一命を取り止めていたが、ほとんど瀕死状態だった。


 その時、僕は気づいていなかった。


 あの執念と嫉妬に溺れた少女の断片の姿を。その(かたわ)らで笑っている、あの女を。

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