23日目
「ごちそうさま、でした……」
改めてお皿をみると米粒もかけらも何もなく、綺麗すぎるほどに食べていた。
僕はどんな料理でも基本的には残さない。何より僕はご飯が大好きだし、神様に失礼だから。
僕は椅子から降りると、テナーが手際よくお皿を片付け洗っていく。
僕の『やってはいけない』食べ方には特に怒っておらず、むしろいいアレンジだと褒めてくれた。
……最初は泣き崩れていたけど。
「アルくんが美味しそうにご飯を食べてくれるだけで、私は幸せです」
「お気楽、だね……」
「悪く言えばですけどね!? アルくん酷いです……」
まぁ、そんな茶番はともかくだ。僕らは昨日から言っていたことをしなきゃいけない。
「テナー……。これまでのこと、話そう……」
「はい、そうですね。どこから話しましょうか?」
テナーは考えるそぶりをすると、僕もからっぽな頭を使って考える。
まずは情報を共有したり、お互いの知らないことを話すのが一番かな……。
「テナー。情報共有、しよう……。あと、お互いが知らないこと……話す」
僕がからっぽな頭を絞りきった結果がこれだ。テナーも、この提案に納得してくれるだろう。
「おお、さすがアルくんです! そうしましょう。アルくんは頼りになります」
「お世辞とか、いいから……」
「いえ、お世辞などではありません! 心からの褒め言葉です!」
たまには、褒められるのもいいかもしれない。いや、僕はずっと誰かに褒められたかったんだ。
僕はその事をあまり表に出さずに伝える。
「まぁ……。ありが、とう……」
僕の顔が熱くなる。いいや、僕は照れているのか? よく分からな……。
するとテナーが真顔で、スマホを片手にカメラアプリの連写機能を起動する。
「……」
「……」
下手なホラーより怖い。なんて恐ろしい従者なんだ……。
「アルくん可愛いですアルくん……」
何も聞かなかったことにしよう。そうしよう。
話の共有をするのに、一時間ぐらいかかった僕らだった。




