17日目
「わたしはアルトにぃさま……。いいえ、わたしがにぃさまの従者にしてやったのに、随分な物言いね? テナー」
アリアが毒を吐くように言葉を並べ、テナーに精神的な攻撃を与えようとしたが、テナーには全く効かなかった。
「えぇ、アリア様。私はしょせん、あなたの期待に沿えることができない従者です」
テナーは一呼吸置いて、言葉をつむぐ。
「……今度は。私はアルくんの手足となり、彼を支える『友達』になってみせます」
それは友達としてはやりすぎなんじゃないかと、心のなかで僕はツッコミをしたが、彼らの話していることは真剣だ。コメディじゃない。
「……ちょっとは、いいこと。言ってくれる、じゃん」
つい口を滑らせてしまった。テナーが何を言い出すか分からない。
僕は恐る恐るテナーの方を見ると、テナーは嬉しさで震えていた。
「はい、アルくん。私、精一杯アルくんをお守りさせていただきます」
テナーは狂っていない純粋な笑顔をして、胸に右手をそえる。
「だから……」
「私は記憶が失ったアルくんでも、あなたの『親友』でいたい」
そして、振り向き様に襲ってくるぬいぐるみをナイフで切り裂いた。
「……あなたには。まだ、私があなたの何なのかは言えませんが……」
テナーは僕たちに聞こえないほどの声で呟き、自分を欺くかのように笑ってみせる。
「……っ! こんのっ、従うことしかできない犬があああっ!」
アリアは絶叫し、僕でも分かるほどのオーラを放っている。
さらに次はぬいぐるみではなく、どこからともなく何本ものナイフを出現させた。
「はっ、相変わらず女の嫉妬は怖いなぁ?」
「テナー……?」
一瞬だけ、テナーの雰囲気が変わった気がする。
けれど僕はそれを言う暇も無いまま、テナーに手を引かれた。
「いえ。少々、口が過ぎましたね。では改めて……」
テナーはこほん、と咳払いをして言い直す。
「女性の嫉妬ほど、怖いものはありませんから」




