16日目
「とにかく! 私はアルくんの味方ですからね!」
ツギハギ男は僕に眩しすぎる笑顔をしてきたので、とりあえず無視した。
「ねっ!」
もう一度アピールしてきたので、僕はそっぽを向く。
「ああっ! その冷たい態度も素敵です!」
そう言って、ツギハギ男は感嘆の声をあげて泣き出した。
……本当にウザい。なんなんだこいつは。ストーカー女ほどではないが、かなりイライラする。
怒りに任せてツギハギ男を蹴ろうかと思ったが、さらに面倒くさいことになりそうだったのでやめた。
名前も極力呼ばないようにしよう。うん、そうしよう。
僕は死んだ目で、どうでもいいことを決意した。
「……ていうか。僕を殺そうとした、のに。よくそんなこと……言えるな」
僕は不安定な話し方で、ツギハギ男を睨み付ける。
僕が殺されかけたのは本当だ。リビングで寝ていた僕を、ナイフで刺そうとしていたのだ。
けど、僕はテーブルの上にあったタバスコの瓶で叩きつけて、ツギハギ男を撃退した。
タバスコはかなり強烈だから、目に入れば地獄絵図と化しただろう。ざまぁみろ。
「申し訳ありません、アルくん。あのとき私は操られていたのです」
「操られ、てた……?」
ツギハギ男は『はい』と、うなずき少し悲しそうな表情を見せる。
今度は興奮したり変な気を起こさなかったので、僕は大人しく話を聞いた。
「かなり高等な呪術師ではない限り、人を操ることはできません。私も、アリア様も……。以前は、当たり前ですがアルくんに手を出すことは毛頭もございません」
「ですが、私たちは操られてしまったのです。あの悪魔のような人間に」
悪魔のような人間? ストーカー女のことか?
「あぁ、でも……。流暢に話してる時間はありませんね」
「なん、で……? って、わ……!?」
ツギハギ男……テナーは一歩前に出て、かばうように僕を守る。
「テナー……。婚約者がいる前で、よくそんなにベラベラと話せるわね……?」
「はっ、かかってこいよ。アリア様?」
これはとんでもない修羅場になりそうだと、僕は悟る。そして、当分僕は日記を書けないことを察した。




