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34.とても弱々しい虎に出会いました

 ナミラ町上空。

 そこには黒い雲が一面に広がっていた。

 雲からは雷がビリビリ発生している様子も見える。



「なんか嫌な天気だな」

「そうですね。この雷雲、もしかして……」

「俺、雷嫌いなんだよなー。雲+(ぬ)+(り)で”ぬくもり”!」



 すると一面を覆っていた雲が消え去る!

 そして代わりに誰かのぬくもりが感じられる手編みのセーターやマフラーなどが大量に生まれ、地上にフワフワ落ちていった!



「な、何が起きたんですか……?」

「うーんと、一種の魔法だ」

「天候を簡単に変える魔法なんて聞いたことないですよ……」

「とにかく、雷雲がはれたことだし、様子を見に行くか」

「そうですね。そうしましょうか」



 そう言ったシラリィは地上へと降りていった。





「あいつは……召喚獣か?電気を身にまとった虎のようだが?」

「はい、そうです。五獣魔のうちの一人ですよ」

「その割にはやけに弱々しくないか?」



 俺の目の前には確かに帯電している虎がいる。

 だが一般的な虎のような強いイメージとは裏腹に、目の前の虎はひどく弱った様子に見える。

 こいつが暴れまわっていたというのか?



「もしかすると……さっきのライク様の行動の影響かと」

「さっきの行動って、雷雲を消した事か?」

「はい。推測に過ぎませんが、この虎は雷雲を活動のエネルギーにしていたのではないでしょうか」

「なるほどな。だから雷雲がなくなった今、ひどく弱っているのか……」



 なんか悪いことしちまったな。

 でもそのおかげでナミラ町は攻撃されずに済みそうだ。



「早く従属させましょう。そうすれば生まれ変わりますからまた元気になるはずですよ」

「そうなのか。弱った相手に攻撃するのは忍びないが……」



 攻撃しないでいても、いつかはそうしないといけないんだろうし、さっさとやっちまうか。

 苦しんでいる様子を見るのはあまり好きじゃない。


 俺はバハムートに変身し、サッと虎にトドメをさす。

 そして虎の事を思い浮かべる。



「コイツはそうだな―――雷虎ライダス!」



 俺がそう念じると、倒れている弱々しい虎の姿が消えた。

 そして俺の目の前には―――



「呼んだか? 俺の新たな主よ」



 電気、いや、雷とも言える強烈な電気を全身に身にまとい、凛々しい姿をした虎が目の前に現れたのだった!



「ちょっ!? 危ないって!」

「おおっと、これは失礼」



 そう言った虎は俺と距離をとった。


 虎が元気になったのはいい。

 だが近くにいた俺は普通に虎の電気に当たることになったんだが。

 バハムート状態になったから全くダメージなかったけど、人間のままだったら多分即死だぞ?

 本当、おっかないな……


 それに虎の影響か、雷雲がまた上空に発生する事になった。

 多分存在するだけで天候に影響を及ぼす生物なんだろう、この虎は。



「えっと……お前はこの町を攻撃していたみたいなんだが、記憶はあるか?」

「いや、ない」

「全くないのか?」

「ああ。ただ、強烈な恐怖感、そして破壊したい衝動に襲われていたような気はする。だが何をしたかまでは覚えていない」



 そうなのか。

 言っていることはシラリィとほぼ同じだし、暴れまわっている召喚獣は自分の意思がない状態と言っても良さそうだ。

 いわゆる暴走状態といった所か。

 ライダスの場合、あまりに弱々しかったから暴れているようには見えなかったけど。



「そうか、ありがとな。じゃあネフターヌに戻っていいぞ」

「心遣い感謝する。俺の力が必要になったらいつでも呼んでくれ」

「ああ、そうさせてもらうよ」



 多分余程のことがない限り呼ばないけどな。

 だって危なすぎるじゃん。

 今ならともかく、人間状態の時に呼んだ日には、マルチ死亡エンドが見えてるよな。

 味方にやられるなんてそんな間抜けなことするかってんだ。



 言葉を交わした後、ライダスは姿を消した。

 ふう、これで一安心だな。

 ライダスが姿を消すと、上空の雷雲も消えたし、もう雷に怯える必要はないだろう。


 安心した俺は人間へと戻る。



「人間になったり龍になったり忙しい人ですね、あなたは」

「別にいいじゃないか。戦闘の時は戦闘に適した姿が、生活する時は生活しやすい姿が良いだろ?」

「まあそれはそうかもしれませんが……」



 バハムートから人間に戻っても、服なども全て元通りだし、戻る事のデメリットはあまりないんだよな。

 やっぱり戦わなくていい環境なら人間が一番ラクだ。



「次はどこへ行きましょう?」

「うーん、他の五獣魔の所に行きたいが、どこにいるかは分からないよな……」

「あっ、それならライダスに案内してもらうといいですよ! 彼なら空気中の電気の反応から、誰がどこにいるのかおおよその場所を把握できますから!」



 えー、ライダス呼び出すの?

 さっき呼び出したくないと思ったばかりなのにな。

 うーん、でも行き先が分からないと困るし、仕方ないか。





「呼んだか、ライク様?」



 バハムートにまた変身してから俺はライダスを呼び出した。

 というか、なんで名乗ってもないのにライダスは俺の名前を知っているんだよ?



「なんで俺の名前を?」

「同じ術者に従属する召喚獣の記憶は共有されるのでな。それで主がライク様だと分かった」

「なるほどな……」



 記憶を共有ねえ。

 まあその方がこちらとしては同じ説明を何度もしなくても済みそうだから良いんだけど。



「という事は、お前を呼び出した目的は分かるな」

「はい、俺にお任せ下さい! すぐに見つけ出してお近くまで連れていって差し上げますよ!」



 そう言ったライダスは前傾姿勢になり、しばらくそのままの体勢を維持する。

 そして身にまとっている電気はさらに勢いを増す!


 しばらく待っていると、身にまとった電気は弱まり、そしてライダス自身の体勢も元に戻った。



「風魔の場所が分かった。すぐに向かうか?」

「ああ、案内を頼む」



 こうしてライダスの案内を頼りに俺とシラリィは風魔と呼ばれる召喚獣がいる場所を目指すのだった。

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