33.言語魔法のレベルが最大になっていました
「なんか随分と元気になったものだな」
「もちろんです。私は生まれ変わったようなものなので。それにライク様に召喚していただいたおかげで色々と呪縛から解き放たれました」
「呪縛? そんなものがあったのか?」
「ええ。今でこそ分かったのですが、本当酷いです。まず、自我を持たせてくれていないんです。さらにそこらじゅうを破壊するように命令されていました。これじゃ私達、ただの破壊の道具じゃないですか!?」
「うーん確かにそれは酷いな。その召喚主が誰かは分かるか?」
「それがですね……分からないのです」
「分からない?」
「はい。普通は分かるはずなのですが、情報隠蔽の魔法がかけられていて特定できないのです……」
そうなのか。
酷い事をする奴だが、特定できないなら仕方ないな。
こちらから手をうつことは出来なさそうだ。
「すまない。その様子だと俺はお前の力にはなれなさそうだ。頑張って生きてくれ。俺は自分の町に帰るから」
「えっ? 別に元の召喚主を倒して欲しいなんて頼んだ覚えはありませんよ?」
「えっ、そうなのか?」
「それに私は召喚獣です。この世界で私を呼び出せるのはライク様だけですし、別に御用でないときは私をネフターヌに戻して頂ければ帰りますよ?」
そういえばそうだったな。
召喚獣なのだから、今の白龍シラリィは俺が召喚したからここにいるわけで。
それはつまり、召喚を解除すればシラリィは元の世界に戻っていくというわけで。
「じゃあシラリィ、とりあえず元の世界に戻ってくれないか?」
「はい。ご命令とあれば。御用のある時はいつでもお呼び下さい」
そう言ったシラリィはフッと姿を消した。
急に現れたり、急に消えたりする所を見ると、普通の魔物じゃないんだろうな。
やっぱり召喚獣という扱いで間違いないらしい。
って、これってまるで俺が召喚術士になったみたいだよな。
全然疲れを感じないから魔力を使っていないんだろうけど。
って事は言語魔法で呼び出したって事か?
言語魔法って確か自分以外の生物に直接影響を与えられなかったんじゃなかったっけ?
ちょっと説明が必要だな。
説明書さんお願いします!
俺はいつものように説明書を出現させる。
そして現れた紙を見てみると―――
言語魔法lvMAX
lv1との相違点
・言語を引くことで現象を発現できる
・言語を足す際に使うワードの消費がなくなる
・自分を変化させる際の時間制限がなくなる
・召喚魔法を使うことができる
おっ、いつの間に言語魔法のレベルが最大になってやがる!
って、これチートすぎねえか?
だって今までの縛りがほとんどなくなってるじゃん、これ!?
言語を足すタイプでも使い放題になるし、変身に関しても気兼ねなく使えるようになるじゃないか!
すげぇ魔法だと思ってはいたが、とんでもねえな、言語魔法って。
というわけでだ。
まだバハムートになってから三日経っていないが、人間に戻れるってことだよな。
ちょっとやってみるか。
「火+(と)で”ひと”!」
すると俺の体はみるみるうちに小さくなっていく。
そして見慣れた体に戻ることができた。
うん、やっぱり人間の姿が一番しっくりくるわ。
さて、後は空中都市に戻るだけだが……多分距離ありすぎるから、飛んでいかないとダメだな。
大陸自体違うしさ。
となるとまたバハムートに戻って―――あっ、そういえばあの手があったか。
「白龍シラリィ!」
俺は先程まで話していた白龍を呼び出した。
すると目の前に現れたのはーーー
「で、でけぇな、おい」
「えっ? あなたがライク様……ですか?」
シラリィがあまりに巨大すぎて、見上げてもシラリィの顔を確認する事ができない。
バハムート状態でも大きいと思える大きさの体のシラリィだ。
人間の姿で見たら―――まあお察しだろう。
「なんかとても弱々しいですねぇ」
「弱々しい言うなよ!? この姿の方が生活しやすいんだっつーの!」
「そうなんですか。で、私を呼び出したということは何か御用が?」
「ああ。俺を隣の大陸まで乗せて行って欲しいんだ」
「それならあなたが自分で飛んでいけば良い話じゃないですか?」
「そりゃそうだけどさ。でもそうなったらお前を呼び出す意味がなくなるだろ?」
自分で出来ることは自分でやれ。
その理論でいくと、バハムート状態の俺は飛ぶのも戦うのにもシラリィを呼び出す必要がない。
その事にシラリィも気づいたのか、急に気持ちを改めたようで。
「そうですね。お心遣い感謝します。では私の背中にお乗り下さい」
こうして俺はシラリィに乗って空中都市へと戻る事になった。
「あっ、ライク様、お久しぶりです!」
空中都市に降り立つと、元魔王軍の長、レティダが迎えに来た。
「レティダか。俺がいない間、変わりはなかったか?」
「そうですね……色々とありましたが、でも大丈夫です!」
「色々と? 一体何があったんだ?」
俺はレティダから話を聞く。
するとどうやら、世界中あちこちで巨大生物が出現しているらしい。
「その話―――もしかして召喚獣の事かもしれません」
近くにいた白龍シラリィがそう話してきた。
「この龍は?」
「シラリィという。俺の召喚獣らしい」
「どうも。私はシラリィと申します。今後ともお見知り置きを」
「私はレティダと申します。ライク様の忠実な下僕です。よろしくお願いします」
下僕って……そんな扱いしているつもりはないんだけどな。
まあ本人がすすんでその気になっているなら止めはしないが。
「召喚獣が出現しているとはどういう事だ?」
「はい。実はちょっとネフターヌに戻って分かったのですが、私以外の五獣魔も召喚されているようなのです。だからもしかしてと思いまして」
「五獣魔ってなんだ?」
「そうですね。簡単にいえば、召喚獣の中で最も強力な五人の総称でしょうか」
最も強力な五人……
ちなみにその五人はあまりに強力故に、滅多に召喚されることはないらしい。
召喚して存在を維持する魔力量が馬鹿にならないのだとか。
そんな五人のうちシラリィ以外の全員がネフターヌに不在。
つまり、その四人とも召喚されている状態らしい。
そんな事は滅多にないので、異様に映ったのだそうだ。
「というか、シラリィもその五人のうちの一人なら、こんなホイホイこの世界に来ちまっていいのか?」
「え? ライク様の魔力が尽きなければ別に私としては全く問題ないんですけど?」
「え? 俺、魔力使ってないけど? だって俺の魔力は平凡な量しかないし」
静まり返る一同。
バハムート状態の時は俺の魔力量が多いという説明ができた。
でも今の俺は人間だ。
魔力量は人間の中でも平凡。
大した魔力量を持ち合わせていない。
うん。
言語魔法様様だわ。
俺は適当にそれらしく説明して納得してもらう事にした。
「召喚獣が出現しているとはいうが、町は大丈夫なのか?」
「そうですね……既にナミラ町が攻撃され始めています」
「ナミラ町って、復興の町じゃねえか!? 被害状況は?」
「まだ被害はそこまで受けていないです。何とか援護射撃で侵攻を食い止めてますから!」
「おお、やるな!」
「ですが、食い止めるのがやっとで、侵攻されるのも時間も問題かと」
「いや、それで十分だ。シラリィ、行くぞ!」
「はい、了解です!」
町を守る為、俺はシラリィに乗ってナミラ町へと急いで向かうのだった。




