14.攻略動画を投稿します
「さて、私は動画編集の仕上げをしなくてはなりませんね。あまり難しい編集もしていないので、明日には終わりそうです」
「今回の動画は確か、俺がダンジョンで暴れた動画か?」
「はい。昨日撮影した攻略動画です。これを投稿して、実力があるということを知ってもらいます」
AIということを疑われる可能性は高いが、プロの探索者であればきっと本物だと分かってくれるだろう。
問題は、それを見抜ける人がどのくらいいるかということだが。
「AIがここまで進化すると、まずは映像が本物かどうかを疑いますからね。だからこそ、動画勢が減って配信勢が増えた訳ですけど」
仮に見抜けた人がいたとしても、今やどうしても「いや、AIじゃないのか?」ということが頭をよぎって、最終的にAIだと思い込む人が多い。
これを突破してくれる人がいることを願うしかない。
「思ったんだが、俺が配信に出るっていうのは駄目なのか? お前は後ろでスマホを構えていれば、映る心配もないだろう? 例えば配信で喋って、編集じゃないことを明かすのはどうだ?」
「それは危険です。考えても見てください」
テレパシーはともかく、実際に喋るモンスターは今までも確認されていない。
それだけではなく、ギラはS級モンスターも雑魚扱いできる程の強さを持っている。
この状態で身バレをしたらどうなるのか?
「研究所行きですよ」
「研究所?」
「はい。ダンジョンは今も謎が多い空間です。その中で、今までに確認されたことのないイレギュラーが出れば研究対象になることは避けられません。どんな実験をされるかも分かりませんからね」
「俺は別に人間相手からなら逃げられる自信もあるぞ? 別にお前が止めないなら逃げる必要もないが」
「あまり人殺しはして欲しくないですね」
「じゃあ、逃げればいいだろ」
「確かにあなたはいいかもしれませんが、私はどうなるか分かりません」
「顔映ってないんだしいいだろ」
「顔が映らなくても、ネット民にかかれば特定は時間の問題です。私はあくまもで、後ろの存在でいたいんですよ」
「じゃあ、どうして動画を出すんだ?」
「それは」
「それは?」
「楽しいからです」
何をやってもムロは才能がない。
だから、普段楽しめることは少ない。
そんな中で、やっと見つけた才能だから。
自分の実力ではないが、人脈も才能だ。
(と、思いたいね)
才能が無いのは、勉強などではなくゲームでもそうだ。
ポッケモンも本編は楽しめるが、対人戦が楽しめずにネットでは引退を勧められるほどの才能の無さである。
(だからこそ! なんかやっと楽しめることを見つけた気がする!)
物事を楽しむには、少量の才能がいるというのがムロの持論だ。
だが、ダンジョンに関しては少量どころの話ではない。
最強の力が手に入ったに等しいのだから。
◇
翌日。
学校帰りに、自室で動画の編集を行った。
「よし! 完成! 後はこれをアップロードしてと!」
編集した動画をアップロードする。
動画の内容はこうだ。
まず、上野駅のダンジョンに入るところから動画はスタートする。
最初にダンジョンに入ったことを証明するのだ。
そして次に、層を進む階段までの道のりをカットを多用して進んでいく。
この段階では戦闘シーンは映さない。
3層までたどり着いたら本番だ。
ギラがA級モンスターであるプレミネンスタイガーや、その他A級モンスター相手に無双しているシーンを数分間流す。
タイトルは「上野駅3層のA級モンスター相手に無双する、白銀の龍が強過ぎるwww」だ。
ムロは動画が完成したのを報告するのに、自室にあるダンジョンゲートから、ギラの住処へと向かった。
「完成しました!」
「俺にはよく分からないが、良かったな。で、今回は前よりも見て貰えそうか?」
「はい。種はまいてあります」
「種?」
「はい。前回ナナミさんに宣伝して貰った動画ですよ。確かにチャンネル登録者は劇的に増えた訳ではありませんでした。しかし、一度見た動画のチャンネルは、おススメに上がることも多いんです」
つまり、前回の動画を見てチャンネル登録をせずにそれっきりだった人の前にも、今回の動画がおススメされる可能性はあるということだ。
「動画は投稿したことですし、ナナミさんに連絡して宣伝して貰いましょう」
「宣伝して貰ったばかりで、怪しまれないのか?」
「私が宣伝頼んだということが、ナナミさんのリスナーにバレないかという心配ですか?」
「ああ」
「その心配はいりませんよ。一度ナナミさんは動画を見ているんです。おススメに上がったものが紹介されたものを自然にまた紹介したと考えれば、別に不自然ではないですよ」
「お前はナナミに自分のチャンネルだって言ってないんだろ? あいつ自身にはお前のチャンネルだってことは、バレないのか?」
「大丈夫です。
私はおススメした立場ですからね。
チャンネル登録していたから、新しい動画が通知されたと言えば怪しまれません。
それにいくらフリとはいえ、配信切り忘れ作戦を実行していますからね。
私の言うことは、きっと信用しますよ」
少し悪徳セールスマンみたいだなと思いながらも、ムロはナナミにメッセージを送った。




