35話
「ん、んぅ〜、はぁぁぁ。」
気失ってたみたいだな。確認した所5時間程経っていた。
体が軽い。Level上昇の効果が大半だろうが、睡眠を取ったのも大きいだろう。
「最近寝れてなかったし、時間にして約1ヶ月くらいはダンジョン攻略で活動したもんな〜」
そう、起きてから確認したんだが、地下77階からダンジョンマスターを倒すまで約640時間掛かっていた。今は2月7日の水曜日の昼頃。学校を思いっきり無断欠席している。攻略に夢中で全然気づかなかった。
「まぁ、過ぎた事は仕方ない」
無断欠席ついでにダンジョン内で戦利品の確認もして行く事にした。
・ダンジョンコア
・進化の実:能力の進化を促す実。
ダンジョンコアは一応魔石で最上級の質らしい。真っ白な水晶のような魔石だ。一点の曇りも無い。本当に綺麗な魔石だ。錬金術の素材には存在しなかったので、今の所使い道が無い綺麗な置物にしかならないが入手したという事は何かに使える物だと思う。
そして、進化の実。これは実って言うより魔石に見える。大きさはビー玉サイズで色は真っ黒。バリ怪しい。毒とか入ってそう。明らかに食べてはいけない雰囲気を放っている。
進化の実は食べる事で能力を1つ進化させる事が出来る実らしい。正直食べたくないので一旦、収納鞄に放置する事にした。
次はLevel。
・名前:安藤 匠
・年齢:15
・種族:人種
・Level:5
・能力:強制閲覧、錬金術、テイムマスター、鑑定、投擲術
Levelは5。1つ上がった。Level10の魔物を倒したのだからもっと上がってもいいんじゃないかな?と思ったがそうはならないらしい。
どうやらこれにはLevel上昇のシステムが関係しているらしく、Levelが飛び級する事はあり得ないみたいだ。例えば、Level4の状態でLevel4以下の魔物を倒し一定数の経験値が溜めると経験値はそれ以上溜まらなくなる。その状態でLevel上位敵を倒すとLevelが上昇するシステムらしい。要はLevel0の生物がどれだけLevel0の魔物を倒した所でLevelの上昇は起きないって事だ。これは逆にLevel0の生物がLevel2の魔物を倒してもLevelは1しか上がらない事になる。
Levelを上げる最善手は同Levelの魔物を狩りまくってなるべく弱いLevel上位敵を倒す事だな。勿論、最初からLevel上位敵を屠れる程の力があるなら話は別だが。
取り敢えず、確認したい事は出来たので地上に戻る事にした。
「エスケープ」
・・・・
ダンジョン入り口付近に転移したんだが、俺は失念していた。
目の前に火炎放射器を携えた迷彩服の集団がいたのだ。
「おい、そこのお前、誰だ??ここで何をしている??」
先頭の部隊長らしき人が尋ねてくる。
普通に見つかった。ヤバい。どうやら広末さんは警察にダンジョンの事をきちんと報告してしまったらしい。
外の様子も強制閲覧で確認した所、しっかりと自衛隊が囲って立ち入り禁止状態になっている。
「おい!早く答えろ!」
そんな火炎放射器を人に向けんなよ。危ないだろ。
幸い、俺の顔は見られていない筈。とっさに後ろを振り返ったから大丈夫な筈だ。こんな黒コートの怪しいやつだけじゃ身元までは判明出来んだろう。収納鞄からミラージュ帽を取り出して被る。
「動くな!手をゆっくりと壁につけるんだ!でないと今すぐに拘束する」
なんてごちゃごちゃ言っていたが、関係ない。ミラージュ帽を取り出して被るのにコンマ1秒もあれば完了する。
「っな!!消えた!??何処に行った!?探せ!!」
「はっ!」
総員40名程の自衛隊が辺りをキョロキョロしている。目じゃ見つからないよ。念の為にここで息の根を止めて置く事も考えたが、まぁこの人達になんの恨みも無いので、そのままスルーして外に出た。
外には簡単な基地が出来ていた。基地と言ってもテント等で作った簡易な物だが、様々な銃器に爆薬等、物騒な物である。日本にもこんなに武器があったんだなと驚いた。
そのまま誰にも気付かれる事無く、山を降り、家に帰り着いた。
・・・・
「はぁぁ、やっぱあったかいお湯は最高だ」
帰ってから速攻で風呂に入った。疲れは体力回復薬でも取れるが、風呂は一味違う。今回も湯船を溜めてしまったが、浸かった瞬間にあったかい筈なのに鳥肌が立つあの感じ。堪らんな。
風呂から上がった時の時間は13時。取り敢えず学校に連絡を入れなけらば。
「はい、桜ヶ丘中学です」
「もしもし、桜ヶ丘中学3年1組の安藤 匠です。小鳥遊先生はいらっしゃいますか?」
「安藤君か!小鳥遊先生心配してたぞ!直ぐ変わるからちょっと待っとくれ!」
「安藤か!今何処にいるんだよ!?」
「心配かけてごめん。今は家に帰り着いてる。ちょっと帰りお金が足んなくて歩いて帰る羽目になってね」
「そ、そうか。大丈夫なんだな?」
「うん、問題ないですよ。明日から学校行きますんで」
「安藤の祖母に連絡を入れても知らないの一点張りでね!ほんと心配したぞ!」
そりゃ知らないだろうな。
「申し訳ない。でも大丈夫だから」
「そうか、大丈夫ならいいんだ!じゃあまた学校でな!待ってるぞ!」
「はい」
ガチャ。
◇◇◇◇◇◇◇
匠が去った後のダンジョンにて、
「隊長、先程の人影は何処にも見当たりません」
「一体なんだったんだろうな。俺は正直幕寮長とお会いした時よりも緊張したぞ」
「自分は先程、死ぬ覚悟を決めた所でした!」
「見つからないのは困るがそれで良かったと思ってしまうな。仮基地の方にこの件を伝えて来てくれ。」
「はっ!」
噂のスライムとは明らかに違う存在だった。というかアレは人の姿をしていたが本当に人だったのだろうか??あんな人間がいていいものだろうか??分からないが出来る事なら関わりたくは無い。そう思わざるを得なかった。
お読みいただきありがとうございます。




