34話
34
ダンジョンマスターという第6ダンジョンのラスボスがまさかのLevel10なんて化物である事を知り攻略を諦め帰ろうとしていた時だった。
「エスケ(帰っちゃうの??ダメだよ。)」
「・・・・」
こうゆうのを金縛りって言うんだろう。体が動かない。動けない。動く気すら起こらない。
(せっかくここまで来たんだ。僕と遊んで行こうよ。)
「ァ・・ァクァァ」
思考が回らない。自分が何を言っているのか何を言おうとしているか分からない。
(そんなに緊張しなくていいよ。僕は嬉しいんだ。1000年もここに閉じ込められて。君は初めてのお客さんなんだ。)
「・・・・」
ダンジョンマスターの声が頭の中に響く。ほんの少しだけ俺の意思が正常に戻り始める。
(無視されたら悲しいなぁ。僕はここから出られないんだよ。君が入って来てよ。)
「そ、それ、は、で、でき、ない。」
何とか口を動かし返答する。
(え〜、なんでだよ〜)
「そこ、に入れ、ば、死ぬ」
(ぁははは。お客さん相手にそんな粗相はしないさ〜)
んな言葉1ミリも信じれる訳ねぇだろ。
「信用、できない」
(信じてよ〜〜。僕ずっとずっと暇だったんだよ〜〜。1000待ってたんだよ。1000年。)
何年でも待ってろ。後1000年でも2000年でも、そこで待ってろ。漸く頭が正常に近い状態に戻ってきた。
「無理だな」
(え〜。ひどいよ。君が帰っちゃったらもう誰も来ないかも知らないじゃないか。)
状況を整理しよう。先ずさっきから頭に響くこの声は恐らくダンジョンマスターのモノだろう。何故声を届ける事が出来ているのか、何故門を開けていないのに俺を認識できているのか、ダンジョンマスターには何が出来て何が出来ないのか。
声が聞こえる理由は分からない。そんな能力は持っていなかったが、俺の理解の範疇を超えているのは間違いないだろう。次に俺を認識できている理由だが、恐らくはダンジョンマスターという種族に関係している気がする。これも確信はない。
そして、何が出来て何が出来ないのか。先ずダンジョンマスターはボス部屋から出てくる事は出来ない。これを前提として考えれば俺は助かる可能性が非常に高くなるだろう。何せボス部屋に入らなければいいのだ。逃げるは恥だが役に立つ。今の状況にぴったりの言葉だろう。
そう思い逃げる一択でエスケープを使おうとしたんだか、俺は門に手を掛けていた。
「は?おいおい。待てよ。」
俺の思考とは別に体は門に手を掛け開き、一歩、また一歩とボス部屋に足を進めている。
バタンッ。
遂に門が後ろの門が閉まる。
「初めまして〜。第6ダンジョンのダンジョンマスター。名をシックス。君の名前は?」
嘘だろ。おい。
「安藤 匠」
「そっか〜。匠君か〜。いや〜。会えて嬉しいよ〜。」
俺は全然嬉しくないね。目の前のダンジョンマスター。名前のシックスは第6ダンジョンって所から来てるんだろう。容姿は人型。身長は俺とそんなに変わらない。明らかに違うのは全身が黒く、顔の部分だけが異様に白く目が7つあり、大きな口があり、鼻はない。
はっきり言って気味が悪い。
「そうか。それで、俺はどうしたら帰して貰えるのか?」
「え〜。知ってるでしょ〜。この空間から出るには僕が死ぬか。匠君が死ぬか。どっちかしかないよ〜。」
要は出たいなら倒せ。か。
普通に戦っては先ず無理だろうな。[撃魔貫穿]の弾を当てる事が出来ればワンチャン。
「なら俺が帰る為にシックスは死んでくれるのか?」
「のんのん。僕は自害出来ない。帰りたいなら匠君が頑張るしかない。」
軽く言ってくれるぜ。それが出来れば苦労しないっつーの。
「りよーかい。で、何すんの?」
「そうだね〜。普通に戦っても僕が面白くないから〜。じゃあ。ジャンケンで勝った方から順番に殴り合うってのはどう?」
完全に巫山戯てやがる。
「いいよ。その代わり、ハンデくらいくれてもいいと思うんだが。俺とお前では実力に差があり過ぎる」
「う〜ん。まぁいっか。どんなハンデがいいの。」
「俺だけ武器の使用可。後最初の一手目は俺からスタート。これくらいでどうだ?」
「そんな事でいいの。なんなら僕は小指だけしか使わない。これも付け足そう。」
受けてくれた。これはもしかしたらもしかするぞ。小指だろうが、拳だろうがお前の攻撃ターンにならなければ変わらない。
「それでいい。じゃあ、先ずは俺の攻撃からで」
「うん。攻撃される側は避けちゃダメ。これ絶対ルール。その武器強そう。少しは痛いかも。でもその方が盛り上がる。」
[撃魔貫穿]を見て少し痛いかもと言っている。もしその程度のダメージしか入らなかったらその時点で俺の敗北は確定するだろう。ここでの敗北は=死だ。
「りよーかい。じゃあ行くぞ」
ダンジョンマスターは5m程先に手を広げて立っている。少し近すぎる気もするが誤差の範囲だろう。狙うは頭。今は閉じている7つの目をぶち抜いてやる。
肩の力を抜いて、構える。緊張しても意味はない。俺の運命はこの一撃で決まる。ダメージが通ると祈るだけだ。
狙いなんて定めなくても弾は当たる。ショットガンはそういう銃である。
引き金に手を掛け、ゆっくりと指を絞る。
ハァハァフー。
ズヴァンッッ!!!
《アースでのダンジョン初攻略を確認》
《第6ダンジョン地下100階層ダンジョンマスターの初討伐を確認。初討伐報酬【進化の実】を獲得》
《Level上昇》
そんなアナウンスが頭に響くと同時に気が抜けたのか、俺はその場で意識を失ってしまった。
◇◇◇◇◇◇◇
2018年、2月14日水曜日、午前9時。
《アースでのダンジョン初攻略を確認》
世界中の生物はこの時間、同時に同じ意味の言葉を聞いた。
これを聞いた多くの人はその意味を正しく理解出来ていない。
首を傾げる者。気にも止めない者。神に祈る者。推理を始める者。調査を始める者。騒ぎ立てる者。
また変な声が聞こえた。そう感じるのが9.9割の存在だ。ただ極一部の人間は知りたがる。
一体誰だ?
ダンジョンと言う謎の洞窟が突如現れたのはほんの数ヶ月前。その中には凶悪な生物が住み着いており攻略どころか入ったが最後帰還する方が難しい程の魔境の地である。
そんな場所を攻略??こんな短期間で??裏で日本を牛耳っている者ですら、攻略した存在の尻尾すら掴めていなかった。そしてそれは地球上の全ての生物に同じ事が言える。攻略した本人を除いて。
一部の人間は知っている。ダンジョンと言う地が齎すであろう莫大な価値を。ダンジョンを手中に収める事が出来た時、その者はこれからの地球で圧倒的優位に立つ事を。
そんなダンジョンを攻略した者が、どこかの国の者がいるのだ。世界各国の名だたる国々が調査に手をこまねいているこの状況で。出遅れた先進国の焦りは尋常な物ではない。
日本、アメリカ、ロシア、中国の圧倒的権力者達は直ぐに命令を発していた。
「どこの国か調べろ」と
実際に攻略したのは日本人で攻略されたダンジョンも日本にある。その事を世界各国はおろか、日本ですら知らない。結果、日本は他の主要国を念入りに調べ始める。そしてそこには何の情報も無い。灯台下暗しとはこの事だ。かと言って、他の国が日本でダンジョン攻略が成されたと分かっている訳ではない。なんせ攻略したのは極普通の中学生で、それを予想できる人等先ずいないのだから。
お読みいただきありがとうございます。




