学年別個人戦7
めっちゃ遅刻して投稿。
すみません
煙がコートを覆う。
「おお、すっげ。あれ一条って奴だろ。クラス対抗で1位だったクラスの」
「ああ、あれが噂の一条くん。で大雅くんのライバル」
「ライバルではないし、知り合いでもないぞ和久」
「あ、そうなんだ。でも一条くんは、大雅くんのこと知ってると思うけどね」
横一列で席に座っていた和久達3人は目線をコートに向けたまま話し続ける。その目線の先には渦巻くような煙が晴れるとそこには1人立つ男子生徒とそのすぐ側で倒れている女子生徒。バチバチという音と共に眩しい光が男子生徒の手から発せられている。
1年2組 一条光輝
能力 雷
昔から優秀な能力者を多く輩出している一条家出身でクラス対抗模擬戦の際には、1人で1万点以上獲得しクラス優勝に大きく貢献したレベルCの男子生徒。
彼は入学試験トップの成績だったため、その時からかなり期待されていたらしい。その後入学してから一番初めに行われる身体能力測定で彼はもちろんオール5。身体能力測定でオール5の生徒は毎年数人しかおらず、しかも一条家などといった能力者を多く輩出する名家出身であることが殆どだ。しかし今年は予想外なことが起きた。オール5の生徒が一条光輝のほかにもう1人いたのだ。
それが大雅だ。名家出身でも、レベルCでもない。なのにオール5。
予想外の人物に、当然名家出身の生徒や教師、加えて在学生は驚きを隠せなかった。そして大雅がオール5であることはすぐさま学校中に広がり、必然的に一条光輝よりも注目されることとなった。
周囲の人々は、大雅は一条光輝のライバルであると勝手に盛り上がり、今回の個人戦でも2人の対戦が期待されている。大雅はBコート、一条光輝はAコートであるため、対戦するとなるとそれぞれのコートで勝ち進み決勝戦で対戦ということになるが、心配せずとも2人は決勝戦で戦うことになるだろう。この2人は他の生徒とは別格だ。大雅は当然だが、現在Aコートで行われている試合を見る限り一条くんもかなり強い。能力だけでなく身体能力もレベルが高くて動きに無駄が少なく、相手の動きを見て対応している。それに体術など基礎がしっかりしていて、能力も使い方や使うタイミングを工夫している。多分彼は幼い頃から努力してきたのだろう。才能だけでは説明できない戦い方だ。少々性格が戦闘狂寄りという噂もあるが、その性格もここまで彼を強くした一つの要因と考えられる。
「まぁ、大雅は入学早々目立ってたもんなー。……チッ、これだからイケメンは」
「やめなよー、圭介くん。そんなこと言ったって女の子にはモテないよ〜。まぁ、一条くんもイケメンだし、強い能力者はイケメンっていう法則でもあるのかもね。いや、イケメンだから強いのかな?…はっ!もしかしてその論理でいくと、圭介くんは一生モテないし強くなれないのでは…?!」
和久は口を押さえ、圭介へ悲痛な表情を向けた。
「うるせーよ!ねぇ、和久は俺になんか恨みでもあるわけ?!日々俺に対してひどくなってない?!」
「ソンナコトナイヨー。ね、大雅くん」
「ん?あ、ああ。そうだな」
じーっと試合を見ていた大雅は和久に話を振られ少し焦った様子でこちらを向いた。
「絶対今聞いてなかったよな?!」
「試合見てた」
「ごめんね!邪魔して!」
まるでコントのような3人の掛け合いに近くに座っていた生徒たちがクスクスと笑う。
「ほら〜、圭介くんが騒がしいから目立っちゃってんじゃん。……あ、一条くん勝った」
一条光輝の試合は数分で終わり、コート上には無傷の一条光輝と倒れて気絶している女子生徒。うん、男女平等。素晴らしい。
一条光輝は2回戦突破。明日の3回戦は朝1番の試合だ。そして明日の相手は…
「てことは、この後和久が試合で勝ったら明日は一条とか」
圭介がドンマイと言いながら、和久にサムズアップしてきた。そんな圭介を和久は冷めた目で見ていたが、実際和久の気分は下がっていた。こんなに早く強い相手と当たるとは思っていなかった。これでは3回戦は負けるという選択肢以外和久には存在しない。久々にくじ運の悪い自分を和久は呪う。
せっかく大雅のハーレム女子達で遊べると和久は楽しみに思っていたのに。
「でも僕一条くんと戦ってみたいんだよね。強い人と戦えるなんて、今後絶対役に立つしね」
「それはそうだけど、俺はできれば避けたいなー。能力の相性が微妙だし」
圭介はどちらかと言うと、近距離の戦闘が得意であり攻撃する際相手に近づく必要がある。それに比べて一条光輝は近距離も遠距離も両方得意。近づいてくる相手には電撃を浴びさせることができるので、攻撃の際相手に近づかなければならない圭介にとっては非常に闘いづらい相手である。
「まぁ取り敢えず今日の試合次第だろ。それで相手はどんな奴なんだ?」
大雅が和久に問う。和久なら次の対戦相手の情報を把握していると確信している様子だった。
実はこの個人戦、教師側が見ているのは、何も戦闘力だけではない。
そもそも今回の個人戦、1ヶ月ほど前にクラス対抗の模擬戦があったとしろ新入生はお互いの能力をほとんど把握していない。そのため1回戦目はしょうがないとして、2回戦目から重要になるのが『情報』。次に対戦する相手は誰か。性別、能力、体格、身長、性格などはどのようなものか。それらを知るために対戦相手の試合を見るも良し、他人から情報を得るのも良し。
学校側が個人戦の試合以外特に指示をしていないところを見ると、自分達で気付けという学校側からの無言の指示なんだろう。
「うん、昨日試合見といたし。能力と戦い方は大方把握してるから大丈夫。多分勝てると思うよ」
和久は昨日見た試合の様子を思い出しながら話す。そんな和久の様子に大雅は流石だなと言い感心するが、一方で圭介は何とも言えない顔をしていた。
「なに、圭介くん。その顔」
「いや、なんか和久が勝てるって言うなら本当に勝ちそうだなって思って」
「そう?」
「まぁ確かに。和久は見てて負ける気がしないと言うか。和久が勝てると思うんだったらこの後の試合は大丈夫だな」
やはり随分と大雅は和久への評価が高いらしい。彼にとって初めての同い年の友人ということもあるが、正直和久は入学当時ここまで大雅から信用されるとは思っていなかった。
(ここまで信用されてると、後でなんかあった時に裏切るのが少し心苦しくなりそうだなぁ〜)
和久は心にも無いことを思いながら、大雅と圭介にヘラっと返事をする。
和久の試合は4試合後。圭介は和久の後、同時にBコートで大雅の試合がある。おそらく一条光輝は和久の試合を見るだろう。そして明日の試合の敵情報を得て、どう倒すか考える。
確かに明日の試合能力が治癒の和久が勝つということはあってはならない。和久が今後も学校で必要以上に目立たず楽しく生活し、そして裏で回収屋として人を殺し続けるためにも。
でも人を殺したい、人の苦しむ顔を見たい、人の絶望する顔を見たい、人の壊れるところを見たい、赤黒くてどろっとした血に触れたいし、まだ温かい臓器に触れたい、錆び付いた鉄のような匂いを嗅ぎたい。
ここ1ヶ月殺しの仕事をしていなかったせいか、本能が死を、血を求めている。だけどこれも今後のことを思えば抑えることができる。
和久のモットーは『好きなことをして楽しく生きる』だ。
(明日の試合は楽しみたいなー。優秀な能力者を輩出している名家中の名家、一条家の才能溢れる一条光輝くんは一体どれくらいの強さなんだろう)
そう和久は楽しむことができればなんでも良い。せっかく負けるんだったら、めいいっぱい楽しんで負けよう。
その為にもこの後の試合は負けられない。いや、勝つのだが。一条光輝が見ているのだから、明日和久が楽しむ為に一条光輝に情報提供をしようと和久は考えていた。次の試合は和久の動き方、体術、ナイフの振り方や使い方、それらを一条光輝に見せるための試合だ。そうすれば明日の試合はより楽しいものとなる、そう和久は思いながら大雅、圭介と談笑を続けるのだった。
次話は今月中に投稿と言っていた3月半ば。そして3月は終わり4月も終わり5月になってやっと投稿しました。全然筆が進まない…待ってくれてる皆さんに申し訳ないです。気長にお待ち下さい!
それはそうと映像授業が始まり、やたらと課題が多い今日この頃。元々休日は家に引きこもっている人間なので、外出自粛全然苦じゃない。むしろ通学時間なくてとても良いし、映像授業かなり集中できます。暗いニュースが多いですが、マイナスのことばかりではないのかなと感じます。
皆さん、体調にはお気をつけて。




