不幸せ
人見『麻里とは、仮面なんだろ?』
佐村『曲作りでお互いにそういう時間がないんだよ。別れてもメンバーだから、そのままだろ?だから、うやむやにしてんだよ。』
人見『気が無くなってんなら、解放してやれよ。』
佐村『あっちが離れないんだよ。さっきも言ったけど、メンバーだろ。しかもボーカルだ。中々、言えないぜ?別れようなんて。』
人見『1年後でも2年後でも、3年後でもいい。もし、麻里とお前が正式に別れたら、白瀬を気にかけてやってくれ。』
佐村『俺と白瀬は相性が悪いって知ってるだろ・・・よくよく考えたら、俺はあいつに騙されたんだぜ?』
人見『寸止めだろ(笑)あれは女の武器だ。で、それに引っかかるお前が悪いんだよ(笑)』
佐村『笑えねえよ。どうすんだよ・・・色仕掛けに騙されて、都会に連れてきたのは俺たちで、すぐに放してしまったのも俺たちだ。』
人見『騙されたのはお前だろ(笑)まあ・・・放してしまったっていう言い方が正しいのかはわからないけど、そこは確かに俺たち全員に責任がある。』
佐村『白瀬は側にいるのか?』
人見『ベッドで寝てる。』
佐村『あの小さいベッドで二人で寝てるのか・・・?』
人見『まあ、俺の家だし。』
佐村『お前・・・更生生活を利用して、ヤッたりしてないよな・・・。』
人見『はあ?(笑)』
佐村『はあ?じゃねえよ!!』
人見『なんだよ(笑)ヤってねえよ。もう、諦めてるんだ。話したろ?あいつの母親とのこと。』
佐村『・・・でも、所詮は口約束だろ。』
うーん・・・あれ・・・電気が点いてる。人見は・・・電話中か。私は体を起こした。
人見『白瀬が起きた。切るぞ。』
私『誰と電話してたの?今、何時?』
人見『まだ、朝の4時だ。佐村、徹夜してるみたいだぞ(笑)』
私『大変だよね。人見も手伝えばいいのに。』
人見『お前の更生があるだろ。』
私『私、結構良くなってきたんじゃない?3週間も耐えたよ。』
人見『ああ。』
私『そろそろアパートに帰りたいんだけど・・・。』
人見『そうだな・・・最後に一つだけ課題がある。』
私『なに?』
人見『母親と妹に電話しろ。』
私『母さんと美知に・・・ごめん、無理。』
人見『無理か・・・。』
人見が悲しい顔をしてる。
私『じゃ、じゃあ・・・私からも最後のお願いいいかな。そのお願いを聞いてくれるなら電話してもいい・・・。』
人見『最後のお願いってなんだ?』
私『キスまででいいから・・・人見と触れ合いたい。』
人見『・・・。』
私『素面だよ。』
人見『まだ早朝だから、考えさせてくれ。』
よ、よし・・・。
人見『ん!?』
私『・・・。』
私は人見にキスした。あの日と同じように。でも、ちょっぴり成長したキスをした。
私『こ、これで最後のお願いは達成。実家に電話するよ。』
私は恥ずかしかったのか、顔を赤らめ布団を被った。しばらくして人見が横にきた。言葉もなく抱き締めてくれた。
仲谷『・・・どう?』
佐村『・・・。』
麻里『佐村・・・?』
佐村『これ、本当に麻里が書いたのか?』
仲谷『私は助言しただけだよ。字数をなるべく合わせるとか、字余りもカッコよければOKだって。』
ガチャ・・・
人見『やっと出来たのか(笑)』
麻里『あ、人見。私の書いた歌詞が採用されそうなの!!』
佐村『とりあえず、これに俺が曲をつけて完成させよう。鈴木さんはまだか。』
仲谷『私が鈴木の代わりをするよ。』
こうして、完成した曲はプチヒットとなり、バンドの名前は世間に知られることとなる。ブレイクまであと一歩だ。
私『ふー、やっとアパートに帰ってきた。でも、こんなに綺麗に片付いてたかな。』
部屋が出てきたときよりも、綺麗に片付いてる。人見が片付けてくれたのかな。一か月、ずっと一緒にいたような気がするけど。
私『母さんに電話か・・・なんて、話せばいいのかな・・・。』
私は受話器を取って、実家の電話番号を押した。
プルルルル・・・プルルルル・・・
何故かドキドキする。
美知『はい、白瀬です。』
私『あ・・・美知・・・。』
美知『え、もしかして、お姉ちゃん?』
私『う、うん・・・その・・・か、母さんは元気?』
美知『元気だよ(笑)本当、久しぶりだね。大晦日くらい帰って来れば良かったのに。』
私『用事があったのよ・・・美知は何かと順調?』
美知『順調だよ。母さんに代わろうか?』
私『・・・。』
母さん・・・私の人生が狂っているのは母さんのせいだ・・・人見の話が本当ならば、こんな人から産まれたくなかった。
母『色葉・・・本当に色葉なのね!!』
私『色葉だよ。友達と上手くやってるから、心配しないで。』
母『舞台女優もストレスとかで大変でしょ・・・どこに住んでるの?』
私『アパートに住んでる。場所はいいでしょ。』
母『一人暮らし?』
私『・・・一人暮らしだよ。』
母『・・・そう・・・頑張ってね。』
頑張ってね?一人暮らしを頑張ってね、という意味なのか。まだ、一人暮らしなのね・・・頑張りなさいよ、という意味なのか。
後者だったら・・・ムカつく。
母『人見くんは元気?』
私『え?元気だけど・・・どうして?』
母『いや、いいの。元気なら良かった。色葉も主演を勝ち取れるように頑張ってね。』
あ・・・切れた。
主演・・・今のところ、私たちの物語の主演は麻里かな。いつも、笑顔だし。
麻里『サム・・・久しぶりに・・・。』
佐村『だから、その呼び方やめろって。今日は気分が悪い。』
麻里『・・・。』
私は、麻里と違って、なんでこんなに不幸せなんだろ。




