8/15
8
…勇者様が、やって来た。
「…戻って、来てくれないか?
君がいなくなって、ようやく気づいたんだ。
君をまだ愛している。どうか、側にいてほしい。」
私の前で膝をつき、私の手をとる勇者様。
嗚呼。
貴方はまだ気づいていなかったのか。
まだ目を逸らすつもりなのか。
貴方が時折、悲しげな顔をすることに。
貴方のその瞳が、私を見ていないことに。
貴方自身が、私を愛していないことに。
私たちが、貴方に伝えていない事実があることに。
お可哀想な勇者様。
貴方は、利用されているに過ぎないのに。
本当に、気づいていないの?
本当に、お父様たちを信じているの?
「勇者様。
今から、私が言うことは真実です。
ただ、私から聞いたとは言わないで下さい。いいですよね。
…私たちは、貴方を元の世界に戻す手段を持っています。」
「…今、何と…。」
「私たちは、貴方を召喚した時の状態のまま戻すことができます。」
私ははっきりと、そう告げた。




