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愛犬と一緒に異世界転生したら、うちの子が神獣に⁈いいえ、普通のパピヨンです  作者: kotao


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第三十話 エピローグ

神獣をめぐる一連の事件も無事に解決。

エレナとロブのその後をエピローグとして。

 王宮を出る朝、ロブは窓辺に置かれた丸いクッションから動かなかった。


「それ、持っていっていいって」


 耳が動いたが、それでも動かない。


 部屋の中には箱が並んでいた。


 服や本、北東部から持ち帰った記録の写し。


 ロブの食器、おもちゃ代わりの枝、そして毛布。


 私が荷造りを始めると、ロブは一つずつ中を確認した。


 クッションからは動かない。


「置いていかないから」


「くぅん」


「新しい家でも、窓辺に置こうね」


 ようやく立ち上がった。


 北東部から戻って、三か月が過ぎている。


 七つの標は、サレス前大神官とミラたちが順番に修復した。


 完全に元へ戻ったとは、まだ誰も言っていない。


 季節ごとに水皿と鈴で状態を確かめる。


 一つの場所へ記録を集めず、王宮、大神殿、セレム地方の三か所へ同じ写しを残す。


 魔獣を観測の道具にしないという、サレスが守ってきた方法も、正式な規定となった。


 グランツ公爵の裁きは、まだ終わっていない。


 灰の狩人一味が関わった事件は多く、領地の異変について王宮が放置した責任も調べられている。


 公爵一人に、すべての責任を押しつけて、事件の幕引きとはならないだろう。


 だから時間がかかる。


 グランツ公爵領では、枯れた井戸の再調査が始まっていた。


 魔力の減少を測る術具が置かれ、森から戻らない魔獣のために人の通らない道も作られている。


 領主がいなくなっても、土地に暮らす人はいる。


 それぞれができることを続けていた。


 私とロブも、王宮へ戻ってから何度も話を聞かれた。


 境界の中で見たものなど、私が説明できることは話した。


 わからないことは、わからないと答えた。


 ロブにも一応、正式な聞き取りの席が用意された。


 記録官が質問するが、ロブがまともに答えることはなかった。


 報告書には「神獣から明確な回答は得られず」と書かれた。


 当然だろう。ロブは神獣かもしれないが、犬なのだ。


 明確な回答ができるなら、こんなに苦労はしていない。


 王宮の部屋を出ると決めたのは、その聞き取りが終わったころだ。


 ちなみに追い出されたのではない。


 むしろ、ずっといてよいとまで言ってくれた。


 王宮での暮らしに、不自由は何もなかった。


 でも境界の中で、私はロブと、ここを私たちの居場所に選んだ。


 ここで生きていくと決めた以上は、いつまでも王宮の世話になるわけにはいかない。


 私はこの世界で、自分の仕事と、帰る家がほしかった。


「本当に、よろしいのですか」


 侍女が最後の箱を閉じながら尋ねる。


「はい。王都の中ですから、いつでも来られますよ」


「神獣様のお食事は」


「自分で作ります」


 侍女の顔に不安が出た。


「鶏肉は茹でられます」


 レンジの無いこの世界で、鶏肉をレンチンすることはできない。少しめんどくさいがなんとかなるだろう。


 荷物が運び出される。


 少し寂しい。


 ここは、私たちが帰る場所だった。


 これからも、時々思い出すだろう。


「行こうか」


 ロブへ声をかける。


 開いた扉に向かって走るロブに、迷いはないようだった。


     ◇


 新しい家は、王都の東側にあった。


 タウンハウスのような小さな二階建てが並ぶ一角。


 アトラストリート221が、私たちの住まいだ。


 一階は小さなリビングとキッチン。二階には部屋二つとバスルーム。


 王宮の部屋よりシンプルだが居心地は良い。ロブと暮らすには十分だ。


 何より、窓から差し込む朝日が心地よい。


 通りを歩く人が見える。


 向かいのお店から、焼きたてのパンの匂いがする。


 ロブは新しい部屋へ入ると、一通り匂いチェックをした。


 丸いクッションを窓辺へ置くと、早速くつろいでいる。


「気に入った?」


 返事はない。


 すぐ立ち上がり、窓の下のパンの匂いへ鼻を向けた。


 部屋より、そちらの確認が先なのか。

 

 新しい職場は、家から歩いてすぐの場所だ。


 ディート診療所。


 人のための普通の診療所だったが、最近は魔獣も診ることになった。


 大きな魔獣は、訪問診療までおこなうそうだ。


 ディート先生は、いよいよ人だけでなく魔獣のお医者さんにもなったのだ。


 診療所の入口は二つに分かれていた。


 人の待合室。


 動物と一緒に待つ部屋。


 けれど、どちらへ入ればよいかわからない患者もいる。


 魔獣に引っかかれた人や両方を連れてくる人。


「まず話を聞いて、どこへ案内するか決めてね」


 初日にディート先生から言われた。


 私はこの診療所で受付として働くことになった。


「患者が増えそうだから、人手が足りない」


 とディート先生が嘆いていたので、求人に応募した。 


 受けとしての仕事。


 まずは名前。


 どこで何があったか。


 何を食べたか。


 誰かを傷つけたなら、その前に何があったか。


 同じ傷に見えても、理由は違う。


 私は話を聞き、記録を作り、診療に回す。


 日本でしていた仕事とは違う。


 でも、予定を整理し、人の話を聞き、抜けていることを確かめるという仕事は私の得意とするところだ。


 わからないことを、わからない欄のまま残すことにも慣れた。


 勤務形態が柔軟なのが、いちばんうれしい。毎日ロブと一緒に通勤している。


 日本ではロブはいつも留守番だった。


 そんな暮らしはもうしたくなかったから。

 

 はじめは私の足元にクッションを置いていたが、慣れてくると診療所を自由に動き回るようになった。


 ロブが患者さんに勝手に近づくことはない。


 最初にロブに近づいたのは、魔獣を怖がる男の子だった。


 岩角兎に驚いて転び、膝を怪我してしまったそうだ。


 傷は完治したが、外へ出ると、茂みから何か出てくる気がして怖いという。


 母親に連れられ、ディート先生に相談に来たのだった。


 待合室で、男の子はロブを見た。


「魔獣?」


「ロブは犬だよ」


「神獣様よ」


 母親が言う。


「神獣とも呼ばれてる。でも、普通の犬だよ」


 私は言った。


 どちらか一つではない。神獣であり犬なのだ。


 男の子は母親の後ろから出なかった。


 ロブも近づかなかった。


 クッションの上で丸くなり、前足へ顎を載せている。


 しばらくして、男の子が一歩動いた。


「触ってもいい?」


「先に手を見せてあげて」


 小さな手が差し出される。


 ロブが顔を上げ、その手の匂いを嗅ぐ。


 自分から頭を寄せた。


 男の子の指が白い毛へ触れる。


 最初はすぐ離れた。


 もう一度。


「やわらかい」


 今度は背中を撫でた。


 ロブが目を細める。


 その日、男の子は診療所の入口まで自分で歩いた。


 次の週には、通りの角まで。


 ロブが治したわけではないだろう。


 先生との診療や母親が待った時間、男の子自身が踏み出した一歩。


 いろいろなものが重なっているだろう。


 でも、ロブが隣にいたことも、その一つに数えたいと思った。


「ロブ、セラピードッグみたい」


 うれしくなって思わず言った。


「せらぴい?」


「人の心や体の回復を助ける犬です。日本にいました」


「ロブちゃんが?」


「日本ではしてませんけど」


 家では寝て、散歩して、ごはんを食べる普通の犬だった。


「この診療所ではロブちゃんを採用するよ、よろしくね」


「本人は仕事だと思ってないはず」


「ロブちゃんはただそこにいてくれるだけでいいよ」


 ディート先生は記録用紙に、新しい欄を作った。


 ロブと接した時間。


 患者の様子。


 嫌がる反応があったか。


 勝手に効果があると決めず、一人ずつ記録する。


 ロブが疲れている日は休み。


 自分から離れたら追わせない。


 一日に会うのは三人まで。


 報酬は仕事のあとのおやつ!


     ◇


 ルークは、診療所によく顔を出した。


 最初は護衛の確認だった。


 次は北東部の報告を持ってきた。


 その次は、近くを通ったから。


「騎士団本部から、結構距離ありそうだけど」


「巡回経路を変えたので」


 でも毎回、干し肉の入った布袋がポケットから出てくる。


 ある日の帰り、ルークと一緒に街を歩いた。


 ロブは私たちの間。


 市場の店が閉まり始めているが、仕事帰りの人たちも多い。 


 以前、大神殿から王宮へ戻る途中で歩いた通りだった。


 串焼きの店もある。


 ロブが覚えていたかはわからないが、迷わず店の前へ座った。


「今日も頑張った分だ」


 ルークが言う。


「診療所では半日寝てたけどね」


 味をつけていない端の肉を、少しだけ買った。


 冷めるのを待つ間、ロブは座ったまま肉を見ている。


「あの……返事ですが」


 私が言うと、ルークの手が止まった。


「今?」


「今がいいので」


 特別な場所でなくてもいいと思った。


 串焼きの匂いが漂う、人が行き交う通りで。


 足元には、肉を待つロブ。


 私たちらしかった。


「私も、ルークにそばにいてほしいです」


 言葉にすると、思ったより短かった。


「騎士団長としてではなく?」


 前に私が聞いたことを、そのまま返される。


「一人の男の人として」


 顔が熱い、でも目を逸らさなかった。


「それは、恋人という意味で合っていますか」


「合っています」


 ルークが息を吐いた。微笑んでいるようにも見えた。


「よかった」


 差し出された手に、自分の手を重ねる。


 境界で結んだ白い紐はない。


 ただ、同じ道を歩くための手と手だった。


 ロブが短く鳴く。


「わん」


 祝ってくれたようにも聞こえるのは、私が浮かれているのか。


 実際は、串焼きの肉を早くよこせということだと思う。


「あ、すまん」


 ルークが慌てて肉を渡す。


 ロブにとっては、私のロマンスよりも目の前の肉が大切らしい。


     ◇


 国王陛下から正式な呼び出しが届いたのは、冬の初めだった。


 私とロブは王宮へ向かった。


 大広間には、王族のほか、大臣、騎士団、神官たち、北東部から来た代表者もいた。


 何の式か、事前には詳しく聞いていなかった。


 国王陛下が玉座の前に立っていた。


 隣に王妃、アレクシス王子とセシリア王女もいる。


 王女は私を見ると、小さく手を振った。綺麗可愛い。


 赤い絨毯の上を歩く。


 「ロブ、ヒール」


 小声で言う。


 ロブは私を見上げ、私たちは一緒に歩いた。


 私の横に着いて歩くトレーニングが、こんなところで役に立つとは。


 国王の前で止まる。


「エレナ。そしてロブ」


 国王の声が大広間に響く。


「二人は王国へ来た日より、多くの命を救った」


 ロブが一頭で救ったわけではない。


 そう言おうとしたのを、陛下が手で止めた。


「騎士、神官、治療師、村人。多くの者が力を尽くしてくれたことは、記録に残している。その者たちが共に動く道を開いたことも、二人の功績だ」


 私が言いたかったことまで含まれていた。


「また、境界の危機に際し、この国へ残ることを自ら選んだと聞く」


「はい」


「これまで、そなたたちは神獣と契約者として、王宮が保護する客人であった」


 客人、私もそう思っていた。


「今日より、客人ではない」


 一瞬、意味がわからなかった。


 二つの文書を持って、記録官が前へ出る。


「エレナ・カンダを、アルディア王国民として迎える」


 国王が続ける。


「出自の地を捨てさせるものではない。この国に住み、働き、法に守られ、自らの意思で道を選ぶ者として、その名を記す」


 文書には、私の名前があった。


 生まれた土地の欄は、空白ではない。


 異界、日本とそのまま書かれている。


「ロブについては」


 もう一枚が開かれる。


「王国の民という語が、人のみを指すとの反対があった」


 大臣の何人かが下を向いた。


「ゆえに法の文を改めた。王国に生き、自らの名を持ち、他者の所有物ではない者を、民として迎える」


 ロブの名前も書かれていた。


 神獣、白き獣でもなく、ロブと。


 国王はロブへ目を向けた。


「受けてくれるか」


 ロブは答えない。


 国王の衣を嗅ぐ。


 袖の中から、小さな包みが出された。


「鶏肉を用意した」


 ロブが国王の前に座った。


 大広間から、感動したような息が漏れる。


「神獣様が、王国の民となることを受け入れられた」


 大神殿の神官が呟いた。


「鶏肉を…」


 私の声は、大広間の前列まで聞こえたらしい。


 アレクシス王子が笑いを堪えている。


 国王も少し笑った。

 

 緊張していた式は、思っていたより温かい雰囲気で終わった。


 大神殿からは、フェリアス大神官とロジェ神官が来ていた。


「正式な記録として『共渡り』の項目を追加しました」


 ロジェ神官が教えてくれる。


「契約者より上、とはしていません。異なる形として並べています」


「ありがとうございます」


「ロブ様の食事記録も、神獣典礼録とは別に残しております」


「そこは必要ですか」


「三百年後の者が困りません」


 鶏肉を好む。


 人参を避ける。


 枝は気分によって追う。


 もしかしたら三百年後には、重要な記録になるのかもしれない?


 大神官は、ロブに手の甲を見せてから頭を撫でた。


「いつでも大神殿にお立ち寄りください。祭壇の供物は、常に干し肉にしてありますよ」


 散歩コースに大神殿を加えてもいいものか、迷う。 


     ◇


 式のあとの昼食会で皆に配られたものがある。


 王国内で発売予定の、王族の慈善活動をまとめた小冊子だ。


 その冊子の表紙はアレクシス王子の肖像画だった。国宝級の麗しさ!


 アレクシス王子は以前より忙しそうだった。


 公爵領の暫定統治。


 七標の保全。


 境界研究の公開範囲。


 王宮が長く見落としてきた北東部への補償など。


 小冊子では、避難所で子供へ毛布を渡す姿や、記録院で徹夜している姿が載っている。


 売上の一部が、北東部の井戸と治療所へ使われるという。

 

 私も予約していたが、王子が表紙だとは知らなかった。


 よし、一冊は保存用にできる。

 

 王宮から出たので、今後王子にいつ会えるかもわからない。


 でもこれからも全力で推させていただきます。 


 家宝の青い石も大切にしています。


     ◇


 王宮の庭園では、マルクとミラがロブを待っていた。


 マルクは式典に合わせ、胸元の留め具まで磨かれた新しい騎士服姿だった。


 ロブがマルクに近づき。匂いを嗅ぐ。


 片方の前足を、磨かれた靴へ載せたとき、土がついてしまった。


「光栄です」


 マルクは気にしなかった。


「第四標で前払いをいただいたお褒めの言葉に、ようやく働きが追いついたということですね」


「覚えていたんですか」


「生涯忘れません」


 ミラがロブの首元を確認する。


 青い糸があった場所は今、毛も生え揃い、痕も残っていない。


「異常なしです」


「三日前も見たのに」


「今日は王宮の結界を通りましたからね」


 ミラは確認をやめない。


 境界の門を閉じたあと、ロブの体に異常は見られなかった。


 突然言葉を話したり、魔法を使いこなすなんていうチートな能力も現れていない。


 ただ、魔力を測る術具が、ときどきロブの周りで二つの値を示すことがあった。


 こちらの岸と境界の向こうと関係しているかはわからない。


 二つの値はすぐ一つに戻るため、危険な反応ではないと考えられている。


「これからも測らせてください」


「ロブが嫌がらない範囲で」


「もちろんです」


 マルクが鞄から細長い包みを出した。


「神獣様にプレゼントです」


 中には、棒が入っていた。


 美しく磨かれ、端には白い布が巻かれている。


「棒?」


「長く使えます。木工職人の叔父に作ってもらいました」


「ロブがいつも咥えているのは、拾った枝ですよ」


「神獣様に、道端の枝を差し上げるわけにはいきません」


 マルクが棒をロブの前へ置くと、しばらく匂いを嗅いだあと咥えた。


 マルクが感動する。


 しかしロブはすぐに棒を落とし、庭の端に落ちている普通の枝へ走った。


「……落ちてる枝に、負けました」


「枝に関してはすごく気まぐれなんです」


「では次回、もう一度お見せします」


 マルクは棒を拾い、大切に包み直す。諦めていないようだ。


 ディート先生は、急患があったそうで、昼食会へ遅れて来た。


「エレナ。明日は仕事休みにしよう」


「急に?」


「今日、式へ出た分を休日とします」


 式は診療所の仕事とは違うのではと思ったが、ありがたくお休みをいただくことにした。

 

「ロブちゃんもね。昨日、患者と四人も会ったでしょう」


「ありがとうございます」


 もう日本の社畜生活とは違う。明日の外出は散歩だけにするぞ。


     ◇


 日が暮れる前、私たちは家に帰った。


 今日はルークも一緒だった。


 恋人になってからも、毎日会えるわけではない。


 お互いの仕事がある。


 会えない日は、短い手紙が届く。


 内容は、業務報告のようだった。


 今日は北門を巡回した。


 訓練でマルクが転んだ。


 厨房からロブ用の干し肉を預かった。


 でも最後の一行に、次に会える日が書かれているのがうれしかった。


 私も返事を書く。


 診療所に翼猫の子供が来た。


 ロブが薬草箱の前でくしゃみをした。


 パン屋の新作が美味しかった。


 そして最後には、私の次の休みを書く。


 恋人らしい手紙かはわからない。


 でも、互いの日常を知ることができたし、それが楽しみでもあった。

 

 家に着くと、大神殿からの手紙が届いていた。


 厚い封筒の差出人はフェリアス大神官。


 中には、セレム原神殿の管理報告が入っていた。


 第一標は安定。


 水皿の揺れも通常の範囲。


 翼猫二頭は回復し、カルム村近くの森へ戻った。


 サレスは原神殿へ残り、後継の研究者を早速困らせているそうだ。


「サレスさん、元気そう」


「困らせる程度には」


 ルークが答える。


 サレスからの小さなメモも、一枚入っていた。


 ――境界を閉じた後、七標の外より一度だけ音が返った。


 ――方角は西。


 ――三度ではない。二度。


「警告ではない?」


「七標の警告は三度だ、ただの反響かもしれないな」


 ルークが紙を見る。


「そうだね」


 遠くで岩が落ちた音を、標が拾っただけかもしれない。


 メモも報告書と一緒に保管する。


 明日は休みだ。


 ロブと散歩へ行こう。


 午後には来られるルークも一緒に。


「夕食食べてく?」


 ルークへ尋ねる。


「いいのか」


「最近、料理にハマってる」


「手伝うよ」


「ルークのは野営用じゃん」


「肉はうまく焼ける」


 確かに。


 小さな台所で、二人並んで夕食を作った。


 夜、窓辺のクッションで丸くなっているロブに話しかける。


「明日は散歩行こうね」


「わん」


 明日も、私たちは同じ扉から外へ出る。


 そして同じ家に帰る。


 特別な役目だけではない日々が、これからも続いていく。


 ――完

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