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転生したら、生活魔法使えるようになりました  作者: メイコノノ


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六月の終わり、王都から早馬が来た。


差出人はイレーナだった。内容は短かった。


「王国東部、三つの村で魔力の流れが完全に止まった。作物が枯れ始めている。至急、調査を依頼したい」


学院長がサチコとエルクを学院長室に呼んだ。


「行けるか」と学院長は言った。


「行きます」とサチコは即座に答えた。


エルクも「当然だ」と言った。


学院長は少し目を細めた。


「急な話だ。準備の時間は三日ある」

「三日あれば十分です」


「リナ」学院長は少し間を置いた。


「村の魔力異常は、学院の陣とは規模が違う。自然の流れが相手だ。無理をするな」


「わかっています」


「本当にわかっているか、毎回確認したくなる」


「それはつまり、心配してくださっているということですか」


学院長はふん、と言って顔を背けた。カーロ先生に似た仕草だった。


サチコは礼をして、部屋を出た。


廊下でエルクが「準備リストを作る」と言って、もう歩き出していた。




アンナに話すと、「また行くの」と言って少し困った顔をした。


「危なくない?」


「危なくはないと思います」


「思います、って言葉が気になる」


「確実に安全とは言えないので、正直に言っています」


アンナはしばらく黙って、「わかった」と言った。


「でも約束して。絶対に帰ってくるって」


「約束します」


「エルクくんにも言っておく」


「エルクに?」


「兄なんだから、無茶しないように言う権利がある」アンナは真剣な顔で言った。


「やっとお兄さんができたんだから、すぐいなくなってほしくない」


サチコは少し目が熱くなるのをこらえた。


「アンナ、それをエルクに言ってあげてください。本人に」


「言う。絶対言う」


翌朝、エルクが研究室に来たとき、少し表情が違った。


「アンナに言われましたか?」とサチコが言った。


「……言われた」


「何て?」


「無茶をするなと。それと——」エルクは羊皮紙を広げながら、少し間を置いた。


「帰ってこいと」


サチコは何も言わなかった。


エルクも何も言わなかった。


でも羊皮紙に向かう横顔が、いつもより少し、穏やかだった。




三日後、馬車で東部に向かった。


学院から二日の距離にある農村地帯だった。緑豊かなはずの土地が、近づくにつれて様子がおかしくなっていく。


草の色が薄い。木の葉が、時期外れに枯れている。川の水が、妙に濁っている。


村に着くと、村長が出迎えた。五十代の、日焼けした顔の男だった。


「来てくださって助かります。もう手の打ちようがなくて」


作物が育たない。魔法が使えない。家畜が弱っている。隣村も、その隣村も、同じ状態だという。


サチコは村の中を歩いた。

魔力を地面に伸ばす。感じる。


(ある。流れがある。でも——)


「詰まっている」とサチコはつぶやいた。


「どこが」とエルクが隣で聞いた。


「地下の深いところ。この村の下だけじゃない。広い範囲で、魔力の流れが何かに塞がれています」


「何かに、とは」


「人工的なものではない。自然のものだと思う。地層の変化か、あるいは——」


サチコは目を閉じた。流れをもっと深く辿る。


根っこを、探すように。


数分後、目を開けた。


「エルク、地図を持っていますか」


「ある」エルクが素早く広げた。


「この三つの村の位置を見て。ここと、ここと、ここ」サチコは地図に指を置いた。


「全部、この川の上流に位置しています」


「川の——」エルクが地図を睨んだ。


「上流に何かある、ということか」


「川の上流の、さらに上。山の中に、大きな魔力の滞りがある。そこが根本だと思います」


「山の中」エルクは即座に考え始めた。


「地質の変動か...?それで地下の流れが変わった可能性が——」


「調べに行きましょう」


「山に、か」


「はい」


エルクはしばらく地図を見た。


それから「わかった」と言った。


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