表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら、生活魔法使えるようになりました  作者: メイコノノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/37

16

事の発端は、エルクの論文だった。


地下の陣を修復した翌月、エルクは「調律魔法の理論的体系化——生活魔法の再定義と新魔法系統の提唱」という論文を書き上げ、王立魔法学会に投稿した。


サチコはその事実を、投稿後に知った。


「……なぜ事前に言わないのですか」


「言ったら止めると思ったから」


「止めます」


「だから言わなかった」


研究室でそのやりとりをしながら、サチコは論文の写しを読んだ。

エルクの文章は緻密で、無駄がなく、しかし読みやすい。

サチコとの議論の全てが、丁寧に理論として組み上げられていた。


調律魔法の定義。作用の原理。既存の魔法体系との関係。応用範囲の考察。

そして——実例として、サチコがやってきたことが全て記録されていた。


「エルク、これ私の名前が」


「共同研究者として記載した。問題あるか」


「問題というか——」


「お前がいなければこの理論は存在しない。名前が載るのは当然だ」


サチコは論文を置いた。


(前世では、こんな風に名前を残せたことはなかった。)


事務仕事の中に、田中サチコの名前が残った記録はひとつもない。

それを悔やんでいたわけではないが——


「……ありがとう、エルク」


「礼を言われることはしていない。事実を記録しただけだ」


「それでも」


エルクはそっぽを向いた。いつもの癖だ。サチコはもう慣れた。

論文が王立魔法学会に届いたのが十月。


それが爆発したのは、十一月のことだった。



最初の反応は、懐疑だった。


「生活魔法の延長で体内魔力を調整できるというのは、理論的に不可能だ」


「十六歳の学生が書いた論文に、学会が動く必要はない」


「実例が本当なら、再現実験を求める」


そういった声が、学会内で上がったとエルクは報告した。


「想定内だ」とエルクは言った。


「だから次の手を打った」


「次の手?」


「学院長に証言を依頼した。ファルド学院長が陣の修復を直接見ている。学院長の証言なら学会も無視できない」


サチコは学院長の顔を思い浮かべた。

あの鋭い目の老人が、自分のために証言してくれる——想像すると、少し背筋が伸びた。


「学院長は承諾してくれたんですか」


「『喜んで』と言っていた」


「学院長が『喜んで』と言ったんですか」


「珍しく、笑っていた」


サチコは少し複雑な気持ちになった。自分が知らないところで、いろいろと動いている。

前世ならこういう状況に、もう少し不安を感じたはずだ。


でも今は——エルクが動いていると思うと、妙に落ち着いていた。


この子が考えたことは、大体、正しい。四十三年の経験がそう判定していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ