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樹冠祈願  作者: レニペン
第3章〜それぞれの物語〜
43/48

43.『自分のこと、仲間のこと、故人のこと、生者のこと』

大阪編ラスト!


今回は今後の物語においてすごく大事な話です。






 カグヤ先輩に憧れていた。


 獅童アラタがそうはっきりと明言できる先輩はカグヤだけだ。


 カグヤの優しいところが好きだった。強いところも好きだった。俺も、カグヤ先輩みたいに強くなりたかった。


 いや、強くなってやる。絶対だ。俺はカグヤ先輩になる。いや、それすらも超える。


 それが獅童アラタの夢だった。


 後輩は全然自分のことを尊敬してくれない。ラクもハルキもアラタの扱いは雑だ。無視したり、蹴ったり叩いたりしてきたり、喧嘩になったり、出会ったら『うわっ』って言われたり。


 正直、アラタはラクもハルキも好きじゃなかった。ラクなんかカグヤ先輩の弟でなければ絶対にボコボコにしている。ハルキはたまにボコすけど、反撃してくるので結構きつい。


 だが、そんな『嫌な後輩』二人が、二人だけがカグヤ先輩の意思を継ごうとし、現に共に行動しているのはその二人だけだ。


 後輩というより『腐れ縁』、というのが正しいのか、または『仲間』、か。アイツ等二人にはなんやかんや言って感謝している。


 神木柊に憎むべき相手、カグヤ先輩を殺した男、光冥シンの過去を見せられた時、アラタは『可哀想』だと思った。


 愛するものを失い、居場所も失い、何もかも失い。それで無駄に強い能力だけが残った。


 だからといってシンを許すことはない。彼はカグヤ先輩を殺した。それは事実。決して許さない、決して許せない。


 あの時、カグヤ先輩の死を目の前で見たラクとミクは勿論、カグヤに逃されたアラタとハルキも皆、己の無力を痛感しただろう。結果、真剣組は活動休止状態。皆散り散りで、アラタはラクとハルキ以外のメンバーが今、何処で何をしているのか分からない。


 もし、自分があの場で違う行動を取っていたら状況は変わっていただろうか。そんなことは無いだろうが、考えずにはいられない。


 もし、もっと自分が強ければ。もし、もっと違う行動を取っていれば。もし、もっと自分にリーダーシップがあれば。もし、もっと自分に知性があれば。もっと自分に....


 並べればきりがない後悔の数々。そんなこと今更考えてももう遅いのに。








「あぁ、俺はカグヤ先輩と同じスタートラインに立ったぜ!」


 その言葉の重みはおそらく相手...コラプスにはわからないだろう。あこがれの先輩、ずっと背中を見てきた先輩、自分を救ってくれた先輩、自分が救えなかった先輩...


 自分の、お手本。


 この言葉はアラタにとっては弟子が師匠と同じ程の強さになったと弟子がいうのと同じ、言うのにはそれなりの覚悟がいる言葉。故に、その言葉が、アラタ自身を奮い立たせる。


「ぶっ飛べや!」


 コラプスをアラタが拳で殴り飛ばす。その拳は目には見えないほどの速さ、目の前を新幹線が通り過ぎていったような速度で飛んでいった。空気を2つに断つかのような速度。


 もちろん、これだけでは終わらない。


「飛ばされたらそれで終わり、じゃァねぇよ!」


 新幹線ほどの速さで飛ばされるコラプスより更に速い速度でアラタは飛んでいき、あっという間にコラプスを追い越す。そのままコラプスの飛んでいく方向に先回りし、飛んできたコラプスを今度は地面に向かって蹴り飛ばした。



「ほぉ....」


 コラプスは感心したような顔で地面に叩きつけられる。すかさずアラタがコラプスを踏みつける。


「どうだ?形勢逆転だ!」


「甘い。」


 コラプスはアラタに向かって手を伸ばす。すかさずアラタがコラプスの視界から消える。


「...ほぅ...」


「後ろだ!」


 コラプスの背後から強い衝撃。アラタに違いない。しかし振り向いた頃にはもうアラタはいない。


「こっちだ!」


 右側から衝撃。


「おりゃ!」


 左側から衝撃。


「残念、もう一回左。」


 左側から衝撃。


 右、左、後ろ、後ろ、後ろ、右、後ろ、左、左、右、右、右、後ろ、上、後ろ、後ろ、右、左、右、左、後ろ、右、右、上、上、左、右、右、後ろ、後ろ、後ろ、左、右....


 攻撃が来る、そんなこと分かっている。だが、視界に入ってこない。見えない。


「ふぅ...厄介極まりない。」








 そうだ、アラタの能力はおそらく単純な速度を速くするだけの能力。しかし、問題は早すぎること。もしかしたら音速を超えているかもしれない。いや、多分超えているだろう。いくらなんでも速すぎる。


 攻撃自体は単純。ただ単に速度が速くなっただけ。そうだ、速度が速くなっただけだ。拳の速度が上がっているから衝撃も半端では無いが、速度が上がっているだけ。アラタの頭脳は変わってない。思考速度も変わってないはず。アラタは、今のアラタは咄嗟の判断が出来ない。つまり、攻撃を空振ったら少しは止まるはずだ。


「簡単な話だ。」


 コラプスは地面に手を付ける。と、同時に地面がひび割れ、地面に穴が開く。さらに亀裂が手を中心にでき始め、周りのビルも崩れていく。ガラス、コンクリ片。さすがにすべて避けるのは不可能。さらに地面を破壊し、コラプスは自身のいた地面を他の地面より一段と下げた。これでアラタは間違いなく空振る。そして...


「っ!」


「予想通りだ。」


 コラプスの反撃が始まる。アラタの一瞬の隙をコラプスは見逃してくれない。


「お前も崩れろ。」


 アラタの足を、しっかりとコラプスはつかんだ。アラタは咄嗟に避けようとしたが、間に合わなかった。


「ぐぁぁ!」


 足が、指先から崩れていく。徐々に、ゆっくり。痛い。怖い。止められない。崩れる足を見ることしか...


「っ!お前も道連れだ!」


 アラタはコラプスの足を掴んでいた右手を掴み返す。右手で手首を、左手で腕を掴む。そして、精一杯引き千切ろうとする。


「右手だけでも持っていってやる!」


 筋肉の速度を上げる。足が片方無くて踏ん張れない。けど、千切ってやる。墓場への土産だ。


「お前一人の力で出来るはずもなかろう。とっとと崩れろ。」


「一人なら無理だろうな、なぁ!ハルキ!」


 コラプスの腕に無数の傷が出てくる。いきなり、何も当たってないのに。いや、当たっている。空気だ。」空気が刃物のようにコラプスの手を傷つけているのだ。


「...これは...」


「敵から目を離すとは、感心しねぇなぁ!」


 ぶっきらぼうな声。相手をばかにするような、少年の声。


 ハルキが10mほど離れた場所から両手をコラプスの方に被せていた。おそらく風を操る能力でやったのだろう。しかし、ハルキもへとへと。血まみれ。もう意識を保つのがやっとの様子だ。


「...これは...おどろいた。しかし、この程度。」


 コラプスがそう言っている間にもアラタの足は崩れていく。


「最期の言葉は?」


 コラプスはアラタに訊いた。


「仲間って、持っていて損はないな。」


 アラタはニヤリを笑って、そのまま意識を失い、倒れていく。


「アラタ先輩!後は任せてください!」

「アラタくん!今から治療を!」


 コラプスが初めて聞く声だ。


 その声とともにコラプスの腕に刀が飛んでくる。一本じゃない。何本も、何本も。アラタとハルキの攻撃で傷まみれになっていた腕は、それで簡単にポロッと落ちた。


「はぁ...お前達皆もろとも、破壊してもいいってことかい?」


 コラプスはそんなことお構い無しに立ち上がった。そして、駆けつけた一人の刀を持った少年...水無瀬ヒビキと、アラタの治療を始める白椿ツバキを見つめる。 


 が、コラプスはその二人になにかすることはなかった。ただ、空を見上げた。そして、少し笑った。


「今回は撤退しないといけないみたいだぁ。」


 コラプスはその言葉を放って去ろうとした。


「逃がすか!」


 ヒビキは追いかけようとするが、コラプスがさり際に地面を触り、地面が割れて追いかけることは不可能だった。











「目、覚めたみたいだな。」


 アラタが目を開けると、何処かで見たことあるような、見たこと無いような天井が広がっていた。視線を落とすと見たことある顔が一人。


「ラク、どういう状況だ?」


 とりあえず、ラクに話しかける。


「...真剣組がみんな来ている。今からみんなで話し合いだ。」


「ここは?」


「早乙女邸。」


 アラタは納得する。なるほど、だから地味に見たことあるような天井だったのか。


「とりあえず、後日談、教えるよ。」


 アラタは黙って頷いた。


「まず、マオリネットの件。彼女は、僕が殺した。」


「どうやって?」


 アラタが訊くと、ラクが目を三色に光らせた。なるほど、覚醒したのか。


「で、他の人達は?」


「マオリネットの方にはソウヤ先輩が参戦した。アカネは無傷、ソウヤ先輩とミナトが重症だけど、まぁ、アラタ先輩よりマシだ。」


「先輩ってつけてくれるんだな。」


「まぁ、大サービスだよ。」


「で、コラプスの方は?」


「あぁ、アイツ、コラプスって名前なのか。えーとね、なぜか来ていたヒビキとツバキ先輩が駆けつけて、ヒビキの刀で相手の手を斬り落としたらしい。で、ツバキ先輩がアラタ先輩の治療をして、足を再生させたよ。」


「ツバキ、すげぇな!」


「なんか、ツバキ先輩曰く、破壊された直後だったから出来たことらしくて、あと数分遅かったら死んでたって。」


「怖!めちゃ怖いじゃん!」


「で、ハルキも治療を受けて。」


「...コラプスは?」


「腕を斬られた後に逃げたらしい。イオが戦場に来たからかな。」


「イオさんが...来たのか?」


「うん。すごかった。めちゃクソ強いじゃん。今の僕でも多分勝てない。圧倒されて終わりそう。次元が違う。」


「そっか。お前がどれくらい強いかとかわかんないけど。にしても、暗いな、お前。」


 アラタと会話していて、ラクは目を光らせたとき以外アラタを見ていなかった。床か、天井か。


「アカネに慰められたんだけどね。それでも、自分の手で人を直接殺めるってのはけっこう堪える。」


「...まぁ、殺さないと死んでいただろ?」


「けど、マオリネット、あいつ、死ぬ前に笑ったんだ。その顔がさ、本当にただの少女で。胸が締め付けられるような感じで、痛くて。相手がおっさんだったら、ババァだったらこんな感情も無かったよ。だけど、相手は僕より幼い少女だ。それに、あいつ、負けを認めて死んだんだ。あの娘の過去に何があったかは知らない。だけど、だけどさ、僕は女の子を殺した。その事実がもう、ちょっとね。」


 ラクは無理に笑顔を作ろうとする。アラタは何を話せば良いのかわからない。なんと言ったって、自分はまだ人を殺したことがない。


「...お前は、優しいんだな。お前は大勢の人を殺して、道具のようにその人達を使った相手に情をわかせている。俺じゃ出来ないね。言っちゃ悪いけど死んで当然の人が殺されただけ。たまたまその執行人がお前だっただけだ。」


「けどよ、相手は女の子なんだぜ?まだ未来がある...」


「だから何だ?多くの人の未来を奪ってきたやつが未来を見る資格はないと俺は思う。そうだろ?人から奪っといて自分は奪われないなんて、強欲だろ?ラク、このことはお前が一番わかっているだろ。」


「っ...」


「...本当にお前は優しいんだな。その優しさが俺にも向いてくれれば良いんだけど。」


 少し冗談を言ってみるが、ラクは暗い表情のままだ。


「...俺な、覚醒する時、思い出したんだ。」


「何を?」


「カグヤ先輩のこと。」


 ラクはアラタのその言葉で黙った。けど、さっきと違い、少し口元を緩ませた。


「...ふぅ。先輩、起きれます?」


「あぁ。多分。」


「みんな下の階で待ってます。行きましょう。」


 ラクがアラタに手を貸し、アラタその手を取り、ゆっくりと立ち上がる。ラクは少し笑い...目は笑ってなかったが。そのままアラタを誘導して下の階の一室に向かう。








「おや、目覚めたみたいだね。よし、よしよしよし!じゃぁ、話し合いを始めようか!」


 この場にいる唯一の成人した人間、早乙女リリアが子供のようなハイテンションでアラタとラクを迎え入れた。そのままアラタとラクは席につく。大きな机を真剣組の皆...とミナトとアカネが囲んでいた。


「アラタ先輩、今から話し合うのは今後の真剣組についてのことだ。」


 ヒビキが早速口を開く。皆、ピリついている。特にヒビキとハルキは。


「今回の件もそうだけど、流石に危険すぎる。だから俺は真剣組は解散、あるいは活動を制限してテロを止めようとしたり、危険な場所でヤバいヤツと戦ったりは止めて、避難所のお手伝いみたいなのだけにするべきだと思う。」


 ヒビキがアラタに言う。ハルキがそのヒビキを睨んでいる。ラクもはぁ、とため息を付き、顔を背ける。


「...けど、そもそも俺達は神環が動くのが遅いからそれまでに皆を助けるのが目的の組織だ。避難所のボランティアでは無い。」

「死人が出ているんだぞ!2人も!それも組織ができてから数ヶ月で!綺麗事が言ってられるか!」


 ヒビキがアラタに怒鳴る。それに被せるようにハルキが身を乗り出してヒビキに怒鳴る。


「おい、だからこそだろ。死人が出ている。その二人は何のために死んだ?俺達に『この仕事は危ないからやめようねー』と言うために死んだとでも?」


「少なくともカグヤ先輩もトモヤ先輩も俺達が死ぬことを望んでいない!」


 しばらくの沈黙が部屋の中で続く。真剣組のメンバーは各々、天井を眺めたり、あたふたしたりと反応を見せている。


 早乙女リリアだけはこんな空気になると思っていなかったらしく、すごく慌てている。


「...俺の考えを言っていいか?」


 アラタはそっと口を開く。ヒビキとハルキがゆっくりとアラタの方を向く。


「俺たちは、力を持っている。俺も、ラクも、ハルキも。俺達は人を助けることが出来る力を持っている。その力で誰かを救うことが出来る。」


 アラタは一呼吸置く。


「闇の軍の動きが活発化している。けど、俺達はあれらに対抗できる力がある。その力で誰かを救えるなら俺は救いたい。俺達が戦って守れる命があるなら、俺は戦う。」


 アラタはヒビキの目を見る。


「俺はこれまで通り真剣組の活動を続けたい。」


 そのアラタの発言で、ハルキはヒビキを勝ち誇ったような目で見る。


「アラタ!お前、自分の言っていることの意味、分かってんのか?お前は俺達に死ぬかもしれない道に行くと言ったんだぞ!お前は俺達に、死ねと言ってるんだぞ!」


「おい、ヒビキ。これ以上言うなら武力行使で黙らせるぞ。アラタはカグヤがいない今、僕らのリーダーだ。アラタ先輩の命令は基本聞かなくていいが、こういった大事な命令は聞け。」


 ラクが立ち上がり、ヒビキにそう告げた。ヒビキは悔しそうに歯をかみながら、言う。


「っいつ決まった!アラタがリーダーだって!」

「僕が決めた。」


 ラクがすぐに返答する。ヒビキは言い返す。


「なら俺は決めてない!俺の中だとアラタはリーダーじゃない。」


「僕の中ではリーダーだ。ここはリーダーの顔を立てさててもらう。」


 ラクが右手から炎を出す。ヒビキも刀を召喚し、それを見ていたハルキも手を構える。


「っ!お前ら落ち着け!こんなところで殺し合いなんかしちゃ、シャレにならねぇぞ!」


 ソウヤが慌てて皆を止めようとする。リリアは相変わらずあたふたしている。


「...じゃぁ、ここで決めよう。しっかり。俺の方につく方と、アラタの方につく方。安全に皆を助ける道を選ぶか、仲間を見殺しにする道を選ぶか。」


 ヒビキが大声で言う。


「一人ずつ、言っていけ。」


「俺は勿論アラタの方だ。」

「僕はアラタ先輩についていく。」


 ハルキとラクは即答だった。


「俺は...もう誰にも死んでほしく無いかな。」


 ソウヤはヒビキの方についた。


「あたしも、この前のトモヤ先輩みたいに、ラクくんが死体を生き返らせてって泣き叫ぶのは、見たくない。」


 ツバキもヒビキ側らしい。


「俺も。」


 タカマもヒビキ側。


「俺、ちょっと舐めてたっす。まさかこんなに壮絶だとは。俺は自分が憧れている人たちに死んでほしくないっす。」


 ミナトまで、ヒビキにつくらしい。


「これが答えだ、アラタ。そこの二人のバカ以外はお前についていかない。それでも戦うというなら証明しろ。自分はみんなを守れると。少なくとも今のお前にそんなものは感じない。」


 ヒビキはアラタにそう言い放って部屋を後にした。少し気まずそうに他のメンバーも部屋を出ていく。




 部屋には、アラタ、ラク、ハルキ...と、ミクとアカネとリリアが残った。


「オレはラク兄がアラタの方につくならついていくだけだ。オレはラク兄を守りたい。それだけが目標だから。」

 アカネは自分がここに残った理由を説明した。


「あたしは別にお前らについていこうって思っているわけじゃない。どっちでも良い。どうでもいい。興味ない。もうあたしはやる気も起きない。勝手にしろ。どっちの味方もしない。」


 ミクはアラタたちに言い放った。







「さて、こんなメソメソしている暇はない。せっかく大阪まで行って東京まで行く予定だったのに早乙女邸に逆戻りだ。結局振り出し...ってわけでもない。」


 アラタは明るく言う。


「早乙女リリア、彼女がここにはいる!」


 アラタが叫ぶ。リリアは驚いて「私?!」と自分を指さしている。


「俺達のスポンサーになってくれ!」


 アラタがリリアに言う。リリアは驚いてまたあたふたする。










 アラタはこれからの自分たちの活動についてリリアに話した。魔法使いの遺骨を集めるために、それぞれノルトハーヴェン、NY、南極にいかなければならないと。


「なるほど、君たちはこれからの目的のために世界中に行く...その助っ人として私を頼りたい...と。」


「無理なお願いなのは分かってる。だけど...」


「私みたいなスーパー発明家が後ろにいたほうが動きやすい、と。」


 リリアは珍しく真面目にアラタ達の話を聞いていた。


「いいよ、私がスポンサーになっても。」


「本当か?!」


「ただし、私にもメリットがないと。」


 リリアはアラタたちにニヤリと笑って言う。まさか、この女に見返りを求めるような心があったとは。


「僕が南極で研究を手伝う。」

「よし!契約成立だ!」


 ラクの発言に一瞬で賛同し、ラクとリリアは握手をした。


「軽っ!軽すぎだろ!」

「おいおいおいおい、そんなんでいいのか?もっとあるだろ!」

「...なんかラッキー。」


 各々の反応はさておき、これでリリアとアラタたち...アラタ派の協力関係は結べた。


「で、ハルキくんがたしかノルトハーヴェンに行くんだったよね?」


 リリアがハルキに言う。


「あっ、うん。俺がノルトハーヴェンに行く。」


「なら、あっちに私の知り合いがいる。グライナー交易商会っていう会社を営んでいてね。エリオット・グライナーって名前なんだ。彼は日本語も話せるから、私の名前を出したら君に協力してくれると思う。」


 リリアはそう言ってハルキにエリオットの電話番号とグライナー交易商会の住所をメモに書いて渡した。


「それからアラタくん、NYだったっけ。アメリカに腕のいい通訳がいる。ガイドの仕事もやっていて、道を聞くのにも使えると思う。こっちから連絡をつけておこう。」


 リリアはアラタに写真を渡した。少し赤混じりの金髪のきれいなお姉さんの写真だ。おそらくリリアが言っていた通訳だろう。『エリカ』という名前が写真の後ろに書いてある。


「それから、ラクくん。君には約束通り、南極で研究の手伝いをしてもらう。ほんの一ヶ月、南極で研究するプロジェクトがちょうど来週からあってね。私は参加するつもり無かったけれども、駆け込みでも私ならいけるだろう。助手としてラクくんの名前を入れておくよ。」


「なら、オレもついていかせてくれ!」


 いきなりアカネが叫んだ。


「オレも、ラク兄の役にたちたい。もう守られてばかりじゃ嫌だ。」


 アカネの言葉に、リリアは頷く。


「はぁ、どうでもいい。勝手にしろ。」


 ミクは呆れたように部屋から出ていった。






次回からノルトハーヴェン編、やります!ハルキメインの物語はこれから少なくとも3回はやるのですが、その中の一番最初のヤツです。ハルキはこの『樹冠祈願』という物語の真の主役だと僕は思っているので、どうか見守ってやってください。

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