第122話旭を連れて行きますか?
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「あさ――っ!」
思わずその名を口にしてしまうが、最後まで言い切ることは叶わなかった。
驚いて後退り、コツッと手がドアをノックしてしまったのだ。
普段であれば事前に気付けた気配。防げた挙動。
――しまッ、クソ……!
未だ回復し切らない身体に内心で悪態をつきながら、袈刃音は咄嗟に旭の腕を掴んだ。
「ん?あれ、っかしーなぁ。絶対何かいると思ったのに……」
勢い良く開いたドア。金属バットを抱き寄せるようにして構え、恐る恐るといった風に周囲を見渡す朱音。
ゾンビを警戒してなのか、慣れていないなりにも容赦がない。
自分の直感にも自信があるようで、姿の見えない音の正体を疑ってすぐに部屋へと戻ろうとしなかった。
「……ッ」
薄闇の中、柱の影に隠れる袈刃音は額に若干の嫌な汗を感じつつ、その腕に抱いた幼馴染の口をさらに強く手で塞ぐ。自分と共に旭の気配まで強引に殺し、空気へ溶け込ませるようにして。
こちらの存在に勘付かれるわけにはいかない。
わざわざここまで来たのは、未来で自分を裏切る藍刃愛羅を事前に殺すため。いや、それは最後だ。まずは【守護者】達の動きを彼女から聞き出し、誘い出して、不意打ちを仕掛けて連中の息の根を確実に止める。
それが袈刃音の真なる目的であり、そのためには、誰にも知られず愛羅と接触するしかなかった。
旭一人に見つかっただけの今ならば軌道修正は効く、と信じたい。
だが、それより先は……。
もう、袈刃音にはこれ以外に確実で安全な方法が思いつかないのだ。
「どうかした?朱音ちゃん」
「……いや、何でもない。一瞬ゾンビかと思ったけど、気の所為だったわ」
「え、え、なっ、何それ怖いんだけど。どういうこと」
「いやだから、気の所為だって。ホント昔から変わんないわね、アンタは――」
時間にすればそれほど長くはなかっただろう。数十秒、恐らくそのくらいだ。
浅く、極端に少なくなっていた呼吸。緊張の糸は未だ緩まず、袈刃音は静かに一呼吸する。
「説明する。来てくれ」
そう短く旭に囁き、袈刃音は彼女を連れて人気のない部屋へ歩き出した。
今週は2回行動でございます!
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