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先ほどシャルティアが自ら話すと言ったが、焦れた王が先に口を開いた。
「お主らに頼みというのは、どうか……どうか……シャルティアを助けくれないか。」
「はぁ……?助ける?オヒメサマを何から助けるんだよ?」
心底疑問という風にガルは王に聞き返した。
シオンは何か考えを巡らせているようである。
王の隣に控えている男……おそらく宰相が具体的な説明をし始めた。
「一月ほど前シャルティア様の御身に呪いの印が現われたのです。」
「呪いですか?一体どのような?そもそも王族であるシャルティア様を呪うことができる者などいるのでしょうか?」
シオンは怪訝な顔で聞き返した。
シオンの言う通り王族に会うことが許されるのは極一部の人間のみである。
しかも、未婚の姫となれば、なおさらむやみやたらに人に会うことはないだろう。
「あなたの言う通りです。シャルティア様を呪うなんてことは本来ならできるはずがないのです。しかし、その胸元に現われた印は間違いなく呪いの印でした。そのため、極秘に調べる必要がありました。」
「その結果わかったのはシャルティーのその印は太古の時代からある呪いであり、それは人の手によってかけられる呪いではないということだ。そして、その印を持つ者は決して17を越えられない……」
王は威厳のある態度を崩しはしないが、その表情には悲痛さや悔しさといった様々な感情を押し殺しているようであった。
呪いの話が始まってから一度も口を開いていないガルは今まで王と宰相に向けていた視線をシャルティアに向けた。
シャルティアは先ほどと変わらない表情をしていた。
笑みを浮かべているわけではないが、その表情は穏やかなものであった。
今目の前で自分の父親が自分の生死に関わる話をしているのに、その表情には負の感情が全くなかった。
ガルはシャルティアに向けた視線を再び王と宰相に向けた。
「事情はわかりましたが……なぜ私たちにシャルティア様のことを頼むのですか?セレーナ王家の力でも解けない呪いを私たちのような無法者が解けるとでもお思いですか。」
その言葉には嫌味が含まれていた。
シオンはセレーナ王国の国力をよく理解していたのである。
「はい。確かにここはセレーナ王国で最も情報が集まる場所です。ただし、それはセレーナ王国内の情報、そして書物に書かれている情報のみであります。」
「……つまり、私たちにこの姫様を連れて旅をしろと?」
察しの良いシオンは怪訝な顔をしたまま瞬時に眉間のしわをさらに深めた。
城育ちの姫を連れて旅をすることがどれだけとんでもないことなのかがわからない者は今この場にはいない。
旅に危険は付きものであるだけでなく、城育ちの姫が自分の身の回りのことができるとも思えない。
下手をしたら自分で服を着ることができるかもあやしい。
しかも、未婚の姫にどこの馬の骨ともわからない男二人と昼夜をともにさせるなんて正気の沙汰ではない。