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「先ほどの大会はシャルティア様の生誕祭も兼ねていることは存じ上げていらっしゃいますね?つまりもう一年しか猶予はありません……。」
王も宰相もまるで死刑宣告を待つ囚人のように、深刻な表情で彼らの返事を待っている。
長く口を閉ざしていたガルが嘲笑うかのように口を開いた。
ガルは基本的に考えなしに動くタイプであることをシオンはよく理解していたが、決して頭が悪い訳ではないことも知っていた。
そんなガルが珍しく何か考え込んでいるようだったので、シオンはしばらくの間ガルがどうするのか様子を見ることにした。
「……んで?オヒメサマの呪いを解くオテツダイをしたら俺らに何をくれるって言うんだ?」
王はこの機会を逃さないよう、即座に返事をした。
「引く受けてくれるというのなら、金銀財宝なんでもお主らに渡そ「お父様!」……シャルティー……」
「お父様、それはいけません。」
ガルと同じくしばらくの間口を閉ざしていたシャルティアが王の言葉を遮った。
そのことにガルは目論みが成功したような顔をした。
尊大な表情でニヤリと笑みを浮かべながら、ガルはシャルティアに向かって口を開いた。
「はん?俺たちみたいのにやる金はないっていうのか?オヒメサマよぉ!」
「そうではありません。でも、金銀財宝ではダメです。」
「な、なぜだ、シャルティー?」
「だって、お父様、このお願いは命懸けのものなのですよ?」
王は微かに眉をひそめた。
「それゆえ、報酬は惜しまないと言っておるのだ。」
シャルティアはゆっくり首を横に振った。
微笑みを浮かべつつもその目には真剣さがにじみ出ていた。
「命の対価となる宝石なんてこの世に存在しません。」
その言葉はあまりに力強く重いものであった。
しばらくの間誰も一言も言葉を発さなかった。
この世の中は金や地位のために命をかけて働くなんてそんなに珍しいことではない。
そういうもののために進んで危ない仕事をする者もいれば、大枚をはたいて危険な仕事を依頼する者もいる。
もちろんガルとシオンは前者に当てはまりる。
無法者。
その単語が先ほどからしばしば王や彼らの口から出てくる。
その言葉の通りに彼らに法は関係なく、彼らはどこの国にも所属していない。
そんな彼らが真っ当な職に就けるはずもない。
そして、地位や財力がある者が彼らのような者を"使う"のはひどく当たり前のことであった。
王も宰相も決して彼らの命を軽んじていたわけではない。
だが、王も宰相も人を使うことに慣れすぎているのだ。
生まれながらにして人の上に立つことを決められていたため、それが染み付いていた。
シャルティアも同じはずであった。
彼女も王族に生まれ、王族として育てられたのだから。
王族や貴族のそういう性質をよく理解していたガルとシオンは彼女の言葉に驚きを隠せなかった。
そして、王と宰相もその言葉になんとも言えない感情が広がった。
「……それなら、何なら"私たち"の命と釣り合うというのですか?」
とても長く感じられた沈黙を破ったのはシオンであった。
彼はシャルティアの答えにとても興味があった。
彼女にとって"無法者"の命と釣り合うものが何なのだろうか。
それはガルも同じであった。
ガルはこの"オヒメサマ"を初めて見たときから彼女は普通の姫ではないと感じていた。
それは何かしらの根拠があるわけではないのだが、ガルは自分のそういう勘は信じることにしている。
「私は命と釣り合うものなんてないと思っていますわ。ですが、今回はどうしてもこの依頼を引き受けてもらわなくては困りますの。」
その表情から初めて笑みが消えた。
「だって、私が死んだらお父様もお兄様も悲しみますもの。私は自分が死ぬことよりも私を大切に思ってくださる方が悲しむことの方が嫌です。」
「ふーん、死ぬのは怖くないって?」
「いいえ、そういうわけではありません。」
シャルティアは再び笑みを浮かべた。
「死ぬことは怖いです。私のせいで私の大切な方々が悲しむのも嫌です。だから、あなた方が私を助けてくださるというのなら………」
それまで淀みなく話していたシャルティアが一度言葉を切った。
そして、ゆっくりと力強くその彼らにその言葉を発した。
「私シャルティア・セレーナを差し上げます。」




