39話 逃走劇は闇の最中に
闇に禍いし死の宣告
Level150
細々とした長い両腕に似つかわしくないやせ細った巨大な手。6本の指の先には長く鋭い爪が伸び、左右の手の中指と小指にそれぞれ指輪のような物が付いている。細々とした両腕の根元、〈闇に禍いし死の宣告〉の本体は両腕よりも小さく、ボロボロの黒い布をたなびかせ、顔と思わしき場所は布に穴が空いており、目と思わしき2つの黄色い輝きがアソビトを見ていた。
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恐らく〈闇に禍いし死の宣告〉から放たれた音だろうか、軋みや風が洞窟を掠める音、金属が擦れる音などが入り交じったような音が響く。
アソビトはそれを目の前に、固唾を飲んでいた。
「はは……頭のネジ抜けてんだろ、運営」
乾いた笑いがアソビトの口から漏れる。お互い睨み合うアソビトと〈闇に禍いし死の宣告〉、その緊張を打ち砕くようにミカエルが口を開いた。
「今回の相手はお前との相性がすこぶる悪いから、条件をつけよう。条件は〈一撃でも攻撃を当てる〉だ」
その言葉にアソビトは眉を顰め、大剣を構えた。
「〈一撃でも攻撃を当てる〉?ふざけてんのか、俺はメレデヴェレデの脚をもいだ男だぞ!」
そう言ってスキル〈空蹴〉を使って飛び上がり、アソビトは〈闇に禍いし死の宣告〉に斬りかかった。
アソビトが振り下ろした大剣は真っ直ぐに〈闇に禍いし死の宣告〉の頭を狙い、一瞬にしてアソビトは一撃を加えた。と、思われたが、大剣は勢いのまま〈闇に禍いし死の宣告〉の体を縦に斬り、アソビトの体は〈闇に禍いし死の宣告〉の体を貫通し、すり抜けた。
「うぉわっ!?」
驚きの声と共にアソビトは地面に激突し、HPが7低下し、45/52と表示される。
いててと頭を撫でながらアソビトは〈闇に禍いし死の宣告〉を見上げる。
そこには先程と変わらずアソビトを見ている〈闇に禍いし死の宣告〉の姿があった。
アソビトはゆっくりと立ち上がり、唸り出した。
──見間違いじゃない。確実に攻撃を当てた。でも攻撃を当てた感触がなかった、俺の体と同様にあいつの体をすり抜けたのか?
〈闇に禍いし死の宣告〉を見上げ、アソビトは冷や汗をかきながら笑みを浮かべた。
「相性がすこぶる悪い。まだ詳しいことはわかってないが、本当に相性は悪いみたいだな」
次の一手を考えようと大剣を構え直したアソビト。だが、脳は次の一手について考えることを放棄する。
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なぜなら、〈闇に禍いし死の宣告〉が腕を動かし始めたからだ。
〈闇に禍いし死の宣告〉は音を出しながらゆっくりと両手を持ち上げ、天を仰ぐ。そして次の瞬間。
「──は?」
突如、アソビトの足元が黒く染まり、アソビトの足を飲み込もうとする。
「くそがっ!」
アソビトはスキル〈グライド・ステップ〉を使って難を逃れる。だが、次から次へと足元に現れる暗黒にアソビトは足を止めることが出来ずにいた。
「ど、どうなってんだこの攻撃!」
逃げ惑うアソビト、それを空から一方的に見つめる〈闇に禍いし死の宣告〉はまた何か音を立てながら右掌を下に向けた。
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それを合図に今度はアソビトの真正面から黒く細長い物がとてつもない勢いで飛んできた。
「うわあああっ!?」
体をひねり、何とか回避することができたが、黒い槍は次から次へとアソビトを全方位から狙ってくる。
それを避けながら足元の暗黒を避けていく。翻弄されているのは目に見えて明らかだ。
【ギャウギャウ!】
アソビトを応援するゾルちゃんだが、アソビトは逃げることで手一杯だった。
「ひっひっひっ!攻撃のクールタイム無いとか終わってんだろあいつ!」
ノータイムで打ってくる攻撃にアソビトは弱音を吐いていた。
逃げることで手一杯なアソビトは〈闇に禍いし死の宣告〉を攻撃するなど到底無理な話。喉から手を伸ばせたとしても条件を達成することはできない。
──どうする、このまま逃げ回ってても勝ち目は無い。あと1分も逃げればスタミナが尽きて確実に狩られる!考えろ、考えるんだ、この攻撃を掻い潜りすり抜けるあいつの体を攻撃する方法を!
コロッセオの舞台上を走り回りながら思考を巡らせる。そんな時、アソビトの目に小さな瓦礫が映った。
1体目のエネミー〈帝の蛮皇者〉が地面に勢いよく大剣を叩きつけたことによりできた石ころサイズの小さな小さな瓦礫。当然それはひとつだけではなく、地面にゴロゴロと転がっている。だがそれらも暗黒により数が減っていっている。
アソビトは走りながらもその石ころサイズの瓦礫を手に取り、〈闇に禍いし死の宣告〉に目を向ける。
未だ両手を上にあげ、右掌を下に向けている。
「いつまでも高みの見物してんじゃねぇぞオラァ!」
アソビトはそう言って勢いよく石ころを〈闇に禍いし死の宣告〉に向かって投げた。
それに気づいた〈闇に禍いし死の宣告〉は攻撃を中断し、石ころを回避した。
「……避けた?」
アソビトの脳には2通りの考えが過ぎる。それは〈遠距離攻撃は透過できない〉、〈攻撃中は攻撃を透過できない〉というもの。
アソビトは笑みを浮かべ、石ころを拾って〈闇に禍いし死の宣告〉に体を向けた。
「さて、ゲーマーあるある、検証の時間だ」
手に持った石ころを何度も上部へと軽く投げ、アソビトは検証を始めた。
クリア条件はさすがに変えました
オリジナリティもちゃんも混ぜないとただのパクリ作品になってしまいますからね、あくまで〈リスペクト〉作品ですので




