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フィーニス・ウィア ❖終焉の軌跡❖  作者: 朱華のキキョウ
1章 血肉啜る悪魔の元に
22/81

21話 戦闘はまだ先

ここで唐突な小ネタみたいなやつ

のちとフリガナが振られていないものは基本全てあとと読むということで書き分けてます

ややこしくて申し訳ないが細かいことを考えるのが好きなんです、そのせいで設定を忘れたりするんですけどね

てへッ(*ノ>ᴗ<)

「〈暴喰ぼうしょく誓言せいごん ヲクテルース〉の……討伐?」


 レモンの口から腑抜けた声が出る。


「それが、認められる条件、ということですか……」


 口篭るレモンにエスマは煙草を吹かしながら笑みを向ける。


「そう重く受け止めなくていい。何もこの日までにとかそういった決まりはねェからな。何年かかってもいい」


 煙草の灰を灰皿に捨て、エスマは煙草を咥える。それからショットグラスを水ですすぎ、元あった位置へと直す。

 エスマが言っていた言葉に先程まで困惑していたアソビトが口を開いた。


「暴喰を討伐しろって言ってるが、肝心のどこにいるかってのは分かってるのか?」


 アソビトは困惑しながらも自身の考えを整理しつつ、相手の話をしっかりと聞いていた。


 ──傲慢ごうまんに続いて暴喰の〈特異奇矯種ユニークプライマリア〉か。この右腕が暴喰の情報のトリガーってことは、傲慢と暴喰にはなにか関係でもあるのか?


 顎に手を当てて考える。何かしらの関係があることは分かっているが、まだ深いことはわかっていない。そしてエスマも傲慢と暴喰に深い関係があることは確かなようだ。

 エスマは考えるアソビトを無視し、質問に答えた。


「当たり前だろォ?見当もないのにあんたらに無理を強いる訳ないだろ。と、言いたいところだけどな」


 エスマは3/10吸った煙草を一気に1/2まで吸い、灰皿に煙草を置いた。


「細かな場所は分かってない。()()()()、と言ったところだ」


 エスマの言葉にアソビトは深く息を吐き、顎から手を離した。


()()()()、ねぇ……」


 少し間を開けたのち、アソビトは頷き、エスマに顔を向けた。


「その()()()()の場所を聞こう」


 エスマは直ぐに笑みを浮かべ、そう来ると思っていたと言わんばかりに口を開いた。


「場所は〈輝石道明きせきどうめい渓谷けいこく〉を抜けた先にある〈死屍累々(ししるいるい)酸化洞さんかどう〉。そこのどこかにいる」


 〈死屍累々の酸化洞〉、アソビトはこのエリアの名前を覚えていた。第1の街〈ウーナ・レイデア〉から第2の街〈エスペント・ドゥオ〉へ行く迂回ルートと1つとしてレモンに名を挙げられたエリア。レモンが言っていた通り、本来〈死屍累々の酸化洞〉は第5の街〈クィーンクェ・メステ・メーデ〉に行くための直通ルートで、そこのエネミーのレベルはかなり高めだ。

 少なくとも今のアソビトに〈死屍累々の酸化洞〉を攻略するには無理がある。プレイヤースキルがあるとは言え、レベル差補正によるダメージの減少はかなり戦闘のテンポを悪くする。

 なるべく早く行き、〈暴喰の誓言 ヲクテルース〉の行動パターンの分析などをしたかったアソビトだが、今すぐには無理だという考えに至る。


 ──レベル23じゃ〈死屍累々の酸化洞〉のエネミーですらキツイだろう。まずはレベル上げが必要だな


 アソビトは椅子から立ち上がり、結露した酒入りショットグラスをエスマまで押す。


「飲まないのか?酒」

「まだ19歳なんだ、遠慮しとくよ」


 その言葉に少し歯切れの悪そうな顔を浮かべるエスマ。が、いい事を思いついたのかすぐに笑みを浮かべ、カウンターの下から小綺麗な紙を取り出した。


「なら、スキルの強化してくかァ?」


 エスマの口から飛び出した言葉にレモンがアソビトに目を向けた。

 そう、エスマが言うスキルの強化は特定の場所でしかできない。そして、そのチュートリアルがまだ完了していなかったのだ。

 アソビトは驚きを質問にし、エスマに投げかけた。


「エスマって〈鍛冶屋・戦之業いくさのわざ〉もやってんのか?」


 エスマはアソビトの言葉に頷き、半分になった煙草を持った。


「あァ、そうだ。こう見えてわーは〈天元鍛冶てんげんかじ〉なんだぜ」

「てんげんかじ?」


 聞き慣れない言葉に首を傾げていると、レモンが横から解説を挟んだ。


「〈天元鍛冶〉というのは元々、鍛冶師の始祖という意味ですが、その意味が変化し、今では鍛冶師の頂点、鍛冶の全てを極めた者にのみ与えられる称号になっています。ここで言う極めた、というのは文字通り、戦之業も含めた全てです」


 熱の入った解説に〈天元鍛冶〉という称号が如何いかに凄いものかを知ったアソビト。

 だが、チュートリアルを今する気分ではなかったアソビトはエスマに断りを入れようとする。しかし、紙をカウンターへ置いてこちらへと差し出してくるエスマにアソビトは押し切られそうになるが、そこでふと思い出した。


 ──待てよ?そういえば、ネルガのとこで買った〈経験の血刃けつじん〉で所持金切らしてたよな?


 タイミング良く思い出したアソビトはそれを盾に逃げようと画策した。


「悪いが、今は一文無しなんだ。また金を手に入れたら来るよ」


 アソビトのその言葉にエスマは少し考えた後、煙草を吸い切り、灰皿に擦り付けた。


「そうか、分かった。なら、また金を持って来てくれ。いつでも歓迎しよう」

「分かった、ありがとうエスマ。それと、〈暴喰の誓言 ヲクテルース〉はしっかりと討伐するからな」

「あァ、期待してるよ」


 笑みを浮かべ、背を向けて歩くアソビトとそれについて行くレモンに手を振った。


「……()()()()()……」


 エスマは哀愁漂う笑みでカウンターに目を落とし、そう、口にした。

壱の次だから弐が来る?いや来なあああい!

間隔を開けます!開けさせてもらうぜ!

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