16話 神の失墜2
今必殺の一撃が千の刃となり振り注ごうと来たその時だった。
未来が定まった。
「ふっ………」
かまいたちは風の影響を受けてあらぬ方へ飛んでいく。
「まただ………何だこれ。何をした」
「何も」
「まただ君を相手にしているとやはり感覚が狂う」
「効果が出てきたようだな」
「効果?」
「このフロア温かくなっているのに気付かないか?」
「温かく………?」
そう言われてハッとした様子を見せるフェニックス。
「確かに………何をした?」
「何ってこのフロアを温めてるんだよ」
「どうやって………」
疑問に思っているようだが何かに気付いたような顔をするフェニックス。
「まさか!」
「そのまさかさ」
「まさか………このダンジョンの最上階全体を火魔法で熱しているのか?」
「ご名答。よく分かったな」
「しかし、温めてどうするつもりだ?」
「気付かないか?」
俺の目には既に答えは映っていた。
「まさか………」
「風が上に向かっているのを。温められた空気は上に登ろうとする。その性質を活かせば風の向きだって変えられるだろ?」
「ぐっ………風を操れない。このダンジョンマスターの僕ですら………干渉出来ないのか」
「自然の法則には勝てないか?流石の神でも」
「しかし、これでは僕は勝てないが君も勝てないだろ?」
「いや、これはまだ初期段階だ」
首を捻るフェニックス。
そう言って俺は後ろに控えている少女達に指示を出す。
「みんな、例のものを上に放ってくれ」
「分かりました!」
アナを含めて皆が俺の指示に従う。
そうして風と一緒に上に上がるのは。
「何だそれは」
「転移結晶の欠片さ。本当は欠片ではなく本体を使いたかったが持ち込むのが大変だったのでこちらを使うことにした」
「な、何をするつもりだ。何かをここに向かわせても僕は負けない」
「こうする」
再度みんなに指示を出す。
「今こそ神を引きずり落とす時だ」
その宣言と共に皆が上に登った転移結晶の欠片を発動させた。
すると、ゴォォォォォォォォォ!!!!!!
欠片から降り注ぐ大量の水。
「み、水、だと?!」
驚くフェニックス、奴の体に大量の水が降りかかる。
正直ここは賭けの部分もあったが。
「ビンゴ、だな」
「お、重い!」
「お前の大量の羽が仇になったな?羽は水を吸水する。すると、どうなるか」
「くそがぁぁぁぁ!!!!」
重りのようになった羽を支えられないのか高度を下げ始めるフェニックス。
俺たちの方にも水が落ちてくるがそれは全てフロア端から下に落ちていく。
だが、
「まだ………まだだ!」
気合いで持ち直そうとするフェニックスに追撃を入れる。
「これで落ちてっす!」
作戦通りにニーナが矢を放ってくれた。
「これで止めなんです!」
その先にはアナが微弱だが雷魔法を付与させていた。
「ぐぁぁぁぁあ!!!!!」
そして完全に落ちきったフェニックス。
俺は奴に近付いて剣の先を突きつけた。
「チェックメイト、だな」
「………」
「神は撃ち落とされた」
「ふっ………完敗だ。まさに僕は撃ち落とされた………体が痺れて動かない」
小さく笑うフェニックス。
いや、ウィンドゥの姿に戻ったダンジョンマスター。
「しょせんは無様な風使いか………」
膝を着いて頭を垂れるウィンドゥに話しかける。
「このダンジョンの宝はどこにある?」
「あっちだよ」
そう言って玉座の向こうを指さすウィンドゥ。
「【風王の証】それがこのダンジョンの宝さ。僕は………君に負けた。神は人間に敗北した。もう体が痺れて動かない」
「そうだろう?俺はわざわざ電気が通りやすいように海水を持ってきたのだから」
「海水?」
「普通の水より塩分濃度の高い海水の方が電気を通しやすい」
「ふっ………そういうことか、ただでさえ水の重みで飛べなくなったところに弱くても電撃を貰った………高度は維持できなかったよ。流石僕の認めた人間だよ」
ウィンドゥが情けない目で俺を見てきた。
「さ、僕を殺して先に行きなよ。敗者に次はない………」
「いや、お宝を貰うだけにしておこう」
「え?」
目をまん丸にするウィンドゥ。
「別に俺はお前のこと嫌いじゃないしな」
そう言って俺はアナ達に声をかけて奥に進むことにした。
思い扉を開けたその先には言われた通りのものがあった。
「これが風王の証、か」
貰うことにした。
小さな宝石のようだったがそこにはすごい力がこもっている事が手に取るように分かる。
「さ、戻ろう」
意外とすぐに取れたな。
戻るとそこにはさっきと同じポーズではなく立ち上がったウィンドゥがいた。
「僕は………無力だ」
「まだ言ってんのか?」
「証は君を主だと認めた。今の僕には風王としての力はない。殺してくれ」
「物騒だな」
「敗者に次はな………」
「うるせぇな。黙ってろ」
「え?」
「うるせぇから黙ってろって言ったんだよ。敗者に次はない?何だそれは、俺は負けに負けて今ここにいるがこうして明日もあるし次もあるんだよ」
だから、そう言って続ける。
「気にすんなよ」
「カイム………」
※
自分で倒したシュライを引きずらせて俺はウィンドゥを連れて街に戻った。
最上階に繋がる階段は消失した。
「カイム様お疲れ様ですー。無事に成功したみたいですね!」
飛び込んできた奴隷達。
「みんなのおかげだよ」
「いやー1時はどうなるかと思ったっすけどねー。みんなのおかげみたいっすよー」
そう言ってニーナは少女達を抱きしめていた。
正直結末としては大分いいとこの段階では思えていたのだが。
「カイム・ブランフォード」
突然聞き覚えのない声が聞こえた。
そちらに目を向けると。
「話がある」
黒髪の壮年の貴族風の男が立っていた。
「貴族のあんたが俺に何の用だ?」
「風の螺旋の話についてな」
あれを攻略した以上はいずれ話さなくてはならないとは思っていたが随分早いな。
「分かった。案内してくれ」




